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Ken Yokoyama 6th Album [SENTIMENTAL TRASH]



--ファンも当然そこにいますよね。書いたことのない感謝をテーマにしたのは、どういう背景があるんでしょうか。

「……考えてみれば、この時からもういろんなものを背負ってたし、Mステに繋がるいろんなストーリーがすでに始まっていたんだと思う。『パンクスだったら簡単にサンキューなんて言っちゃダメだろう』って拒絶するのはすごく簡単だけども。それを超えて、今の自分に素直になってみたい、ちゃんと届けていきたい、っていう感覚あったんだろうな」

--5曲目は「DA DA DA」です。めちゃくちゃ速いパンクナンバー。

「これはね、テーマが先にあって。ディスコ・ソングを、パンクアップしたものにしたいと思ってた」

--ディスコ? どのへんですか。

「70年代から80年代までの。ほんとにディスコ・クラシックみたいな。俺、パンクに会う前、中学生の時とか普通にディスコ・ソングが好きで。たぶんその風景なんだろうな。原点というか、自分の中の定番としてディスコ・ソングがある。で、前にKEN BANDで「Can’t Take My Eyes Off Of You」のカバーをしたけど、そういった発想をしたかったの。まず名曲と呼ばれるものがあります、それをカバーしてみました、みたいな曲に。だからサビはすごく簡単で、大サビなんて“ダ、ダ、ダ ウォウォウォー”だからね(笑)」

--これも初期段階にできた、新しい試みとしての曲なんですか。

「あ、これはでも、ずいぶん苦戦したかな。音像はメロディック・パンクに近いんだけど、ネタはさっき言ったようなものだから。だから、どうやったらディスコ・ソングのアゲアゲ感をパンクにできるかなと。こんな短い曲なのに1年くらいかかって作った」

--そして6曲目が「Roll The Dice」。タイトルにもびっくりしますけど、サウンドにも驚いて。これも箱モノへの愛が爆発した一曲ですか。

「はい。で、これが大変だったです(苦笑)。まず基本のリフ、最初にある♪ダッ、ダラダダッ、っていうのを持ってきた時点で、メンバーは目が点なの。『……これをどうしろと?』みたいな。しっかりメロディがないと、ただ同じリフの繰り返し。どこで次に行けばいいんだか、次をどう考えればいいのかわかんない。だからほんとにスタジオでジャム・セッションしながら、何度も話し合いながら作っていった曲かな」

--あと大きいのは、バリトンサックスの導入ですよね。

「そう。もともと最初のリフ、あのテーマはギターじゃなくてバリトンサックスでやってもらいたいっていうイメージがあって。で、去年の夏フェスでスカパラの谷中さんに会った時に、曲もまだ完成してないまま『あのー、バリトンサックスありきの曲作ってるんですけど、客演ってしてもらえるんですか?』って打診したところから始まっていて」

--あぁ、吹いてるの谷中さんなんですね。日本一格好いいバリトンプレイヤー。

「Mr.谷中! 凄いよ、あの人。たぶん谷中さんに曲の全体像をわかってもらえたのが、スタジオでオケを録って仮歌を乗せたものを送った時だと思うのね。それからレコーディングまで数日もないんだけど、あの人、ギターソロを全部採譜して、ギターとまったく同じフレーズをユニゾンで吹いてくれたの。で、『これは別に使わなくてもいいし、バリトン一本でもいいかもしれないし、面白いと思ったら両方ダブルで出せばいいよね』って言ってくれて。当然、面白いからダブルで出した! バリトンサックスとギターソロのユニゾン。他にないもんね。すっごい嬉しかった」

--ちなみに、バリトンサックスを入れたいという最初のアイディアはどんなところから?

「やっぱデトロイト・ソウルみたいなところから来てるんだろうな。マーサ&ザ・バンデラスとか好きで。で、本来バリトンサックスって、まぁスカだったら刻み(=裏打ちのリズム)か、あとはビッグバンドだったら白玉系(=全音符。一定の継続音)なんだけど。あの低い音とこのギターを一緒にやったらどうなるんだろうっていう興味。そこから始まったのかな」

--ここでの歌詞は、ロックンロールの世界観や美意識に寄り添ったものですよね。そこに自分の人生をいかに摺り合わせるかっていうのは、今回苦労したところじゃないかと。

「そう! 簡単そうに見えてすごく大変だったの。でも、せっかく音像がこうなったんだから、変にオリジナリティがある言葉を使っちゃダメかなぁと思って。だからギャンブルになぞらえて書いた。ただ、二番の歌詞の話は星新一さんなの。子供の頃から大好きな話で。小学校の時に読んで、なんか『笑うせぇるすまん』的な怖さを感じたのはすごく覚えてる。意外とこういうのも俺の人格形成に関わってるんだろうなぁ。だから歌詞も含めて、今回はチャレンジが多いんだよね」

INTERVIEW BY 石井恵梨子
Vol.03 へ続く