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Ken Yokoyama 3rd EP [I Won’t Turn Off My Radio]

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明確なものがあるなら、ロックンロールの存在----

--閉じないですよね、健さんは。どこでも楽しそうに出ていく。

「うん。拗ねるとか閉じこもるって意外と簡単なの。オープンになるほうがすごくエネルギーを使う。ことパンクスの場合はね。パンクスっていうのはもともと思考が逆でしょう。誰とも共有できないし、仮に共有してたとしても、それを信じられないから一人で閉じこもってしまう。だから自分から『こっちに来いよ!』って広げていく作業は、もともと10代の時に感じてたこととは真逆……真逆とは言わなくても、すごく異質なことで。ほんとにエネルギーが要るのね。でも震災以降の俺はそれを受け入れなきゃいけなかったし、今は受け入れたいんだってことにも気がついた。今もそれが自分のアティテュードの一部に組み込まれてるんだと思う。俺はその役目をしたい、だったら閉じちゃダメでしょう、っていう気持ちはあるかな」

--『Four』の頃のアンチ精神を180度変えることで、『Best Wishes』ではユナイトや愛を提示できた。でも今は、どちらも自分の中に組み込まれている。自分の人生や音楽観の中でどちらもひとつの線になっている、みたいな感覚でしょうか。

「うん……うまく言えないけど、言葉にするとそうなんだと思う。今はきっと」

--これまでのKen Yokoyama作品って、何かの出来事に対して自分の立場を表明するところから始まったものだと思うんです。ひとつの事象に対して、どう主張をするかが重要だった。ただ、今回は違いますよね。

「俺も思う。そういう明確なものが……確かに今回はないなぁ。やっぱりファースト・アルバムは、最初のソロキャリアをおっかなびっくり始めたことが最大のテーマになっていて。セカンドは、それをバンドに昇華させたっていうところ。で、サードは意外とコンセプトは何もないの」

--しいて言うなら、日常の喜怒哀楽でしたね。

「そう。だからあんましいいアルバムじゃなくて」

--そうですか? なんてことを(笑)。

「ははは。曲はいいかもしれないけど、アルバムのパッケージとして俺はあんまし好きじゃなくて。で、4枚目はやっぱり『ロックはこんなもんじゃねぇ』っていうのを強く言いたかったし、評判はあんまり良くないかもしれないけど、今もすごく好きなパッケージなの。で、もちろん5枚目は震災を受けてどうするかがあった。でね、今回は……明確なものがあるとしたら、ひとつはロックンロールの存在ってことかな」

--おお。大きいテーマ。

「これミュージシャン的な話なんだけど、この2年半の間に使用機材が変わったの。箱モノのギターを弾くようになって」

--箱モノって、グレッチとかが有名だけど、中が空洞のやつですよね。構造としてはアコギに近い。

「そう。エレキとアコギの中間、エレキ的奏法ができるアコギっていうか。で、俺は家でアンプ鳴らしたりしないからレスポール弾いててもそんなに面白くないの。でもこれを家で弾いてたら思考が変わってきて。今まで聴き流してたものが俄然輝いて見えるし。それこそエルヴィスとかチャック・ベリー、オールディーズとか、もっと古いジャズであったり。なんとなく好きだったものがもっと好きになっちゃって」

--つまり純粋な音楽的探究心ですね。何かに対する主張から出てきたものではなく、ただこのギターが楽しいっていう。

「そう。だからロックンロール!(笑)」