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SLANG New album Devastation In The Void 2014.08.06 In Stores!! / Pizza of Death Records

Vol.02『Debastation In The Void』全曲解説!

あんたの名前をタイトルにした。「Yoshimura Hideki」は俺にしかできない

-- では4曲目。衝撃の「Yoshimura Hideki」ですが。発売直前まで「Forever And Ever」という仮タイトルにしていたのはなぜですか。

「インフォメーションとかに書かれたくなかったの。しかも今のレコ屋って、全部そのインフォをコピペするでしょ。したら絶対この「Yoshimura〜」の話ばっかりになっちゃうと思ったから」

-- あぁ。「なんと吉村秀樹をずばりタイトルにした曲がある、要注目!」みたいなニュースとして扱われてしまう。

「そうそう。そういう意味でブッチャーズ・ファンに注目されたくないし、もちろん聽いて欲しいとは思うけど、吉村さんをネタにするようなことは嫌だった。まず吉村さんだったら『お前、何やってんだよ!』って言うと思うし(笑)。もちろん、ちゃんと出た時にレコ屋のバイヤーがきちんと聴いて、うわ、「Yoshimura〜」って曲があるぞ、っていうふうに書いてくれるぶんには全然構わないんだけど。逆に、そうしてくれたら嬉しいしね」

-- なるほど。それにしてもタイトルが人名って大胆ですね。

「吉村さんも「JACK NICHOLSON」とか書いてたよね。あの人は昔から映画好きだから、映画のタイトルの曲とか多いの。「Birdy」もそうでしょ。そうやって映画とか人名を曲タイトルにするバンドは海外でもたまにいるんだけど、でも、吉村秀樹って曲名にする奴はたぶん永遠に出てこない(笑)。絶対に出てくるわけがねぇと思ったし、これはもう俺にしかできない。で、吉村さんがそういうのをけっこう好んでやってたから、俺があんたの名前をタイトルにしてやる、っていうところかな。で、この歌詞は室生犀星なんだよね。この“我が死にし後も詩よ生きてあれ”っていうのは、そのまんま室生犀星の『行ふべきもの』っていう詩の一節」

-- 室生犀星も報われず苦しみながら書いた人ですよね。同時代を生きた石川啄木ほどの評価は得られなかった。

「吉村さん、まるっきりそれだよね。俺にはいつも言ってた。まぁ俺は売れてないから愚痴を聞かされたり、生意気言って殴られたこともあるけど。もっと売れてる人、たとえば(横山)健ちゃんには『お前、オレをもっとフックアップしろよ!』とか言って、すげぇ困らせてたよね(笑)。でも俺は何回も愚痴を聞かされてたし、その無念さ……みたいなもの? あの人の持っていた世界とか、置かれてた環境っていうもの。そういうのを曲にしたというか。最後の終わり方とかも含めてね」

-- わかりました。次は「Dystopia」。ずっしり重い曲です。

「うん、元ネタはKIYOさんで。これは、けっこうアルバムの軸っていうか、今俺が言いたいこと全部入ってるかな。俺が思う、不条理みたいなことを、全部書いていった」

-- だから、曲の展開がどうこうじゃなくて言葉で聴かせる曲ですよね。言葉をより効果的に伝えるためにどう歌うか、が重要だったのかなと。

「あぁ、そこはけっこう考えたかな。この曲と、8曲目の二つは考えた」

-- 前回が朗読のようだとしたら、これは演説に近い。

「そうですね。ちょっとアジ(テーション)っぽく。それは考えた。特に8曲目の「Visious“Nuclear Fuel”Cycle」は、最初っからアジっぽいのを意識して歌詞を書いていった。単調で長い曲で、言葉もどんどん長くなっていって。普通そういうの、みんなが『もっと短くしていいんじゃない?』って言い出すんだけど、これは俺が削ろうとしたらみんなに戻されたくらいで」

-- それだけ、言葉の強さが際立つ曲なんですよ。逆に、6曲目の「Death Of Democracy」と7曲目の「Reason Of Brutality」は、言葉よりもまず音が先に出ていく感じ。

「その2曲はそうだと思う。完全に楽曲をガチッと決めちゃったタイプのハードコアで。6曲目は俺の曲だけど、中盤、ガラッと変わったような感じに思わせといて実は変わってねぇっていう。あと7曲目はドラムのKOHEYが初めて作った曲ですね。二つとも、歌詞もそんなに長くないし」

-- サビは英語のコーラスだし、歌詞はわりと俳句のようで。

「あぁ、うん。抽象的っていうか、何かを具体的に掘り下げるんじゃなくて、もっとまんべんなく乗せた感じかな。けっこう前の俺みたいな書き方。『SKILLED RHYTHM KILLS』(2001年/3rd)の頃とか、こんな感じで書いてたと思う。今より抽象的っていうか。ただ、日本語のところだけ見るとちょっと詩的な感じだけど、タイトルと、あとサビのコーラスを聴けば、どこらへんのどんな状況のことを言ってんのか、わかってもらえると思う」