-- 今回は全パート別録りで、過去の作品と比べても驚くほど音が良くなりましたね。
「うん、本当はもっと良くしたかったんだけど、今回、ミックスにはとにかく時間かけた。とにかく分離良くしようって。極端な話、ほんとアイドルの音ぐらいの分離でも良かった。『バラッバラにしてくれ、一体感は一切出さないでくれ』って何度も言って。それより立体感を出したかった。とにかく広げて、なるべく良い音で聞かせたいなって」
-- 一発録りのライヴ感を求める意識とは対極ですよね。
「うん。海外のバンド、ナパーム・デスとかナザム、モーターヘッドとかブラック・サバスの新しいやつもそうだけど、みんなすごく音いいでしょ? なんで俺たち26年もやってんのにこういう作品を作れないんだと。それは曲がどうこうじゃなくてね。モーターヘッドとスラングを並べて聴いても、音色を比べれば全然遜色がない、って言われるようなものに俺はしたかったの」
-- では、一曲ずつ解説してもらいましょうか。まず「SCUM」。
「これ俺が作ったんですけど、完全に『カオスU.K.で行こうぜ』って言ってた(笑)。当初、一曲目は「Apocalypse Now」の予定だったんだけど、既にシングルで切った曲だし、これじゃパンチねぇだろって。それで一番最後のほうに「SCUM」ができた。ライヴの一発目でどれだけやれるかっていうのと一緒で、どうやってアルバム始まったら格好いいか、それはいつも考えるんだけど。歌詞も含めて、一曲目って何もかもが強烈じゃなきゃダメだ、みたいなイメージが俺にはあるから」
-- ずっとKOさんが言ってきたことが凝縮されているし、あとは北海道の今も詰まってますよね。“道知事のドブスが引きこもる/道庁前で戸沢がアジる/俺たちは子どもに真実を伝える”。
「うん、俺、ここの“ドブス”に黒線は入れたほうがいいと思って。やっぱ、いかにドブスといえどもレディだしさぁ(笑)。それみんなに言ったら『いや、まったく関係ないと思います!』だって(笑)。でもここは面白いですよね。戸沢(注:戸沢淳/北海道反原発連合)の名前も入ってるし。今はあいつ、道庁前のデモの主役みたいな感じだから。“デストロイ ニュークリア バビロン”っていうのも北海道反原連のスローガンで、そこも含めて歌詞に書いた。まぁでも友達の名前を出すのは新しいな、と」
-- 2曲目が「Apocalypse Now」。これは5月に出たワンコイン・シングルに入っていましたね。
「うん。完全に録り直したから、シングルと比べても音は違うんだけどね」
-- シングルの時点で、英語のタイトルに戻ったなと思ったんですよ。前作の『Glory Outshines Doom』は歌詞もすべて日本語だった。
「そう。でもこれはサビが、コーラスが英語だしね。たぶん前作の日本語って……詩として見るぶんには自分でもいいんだけど、ライヴでやってると、やりすぎたかな、みたいな感覚になることがある。そこはまだ、悩んでると言えば悩んでるんだけど」
-- みんなで叫べないっていうのは事実でしたね。特に震災に特化した歌詞だとワーッと盛り上がれない。昔の曲との差があって。
「そうっすね。前作の、タイトル曲になった「G.O.D」とか特に。あれこそ本当に重いし、自分対自分で書くような歌詞だったから。けっこう書くのもしんどい部類なんですね。たぶん、そういうのを自分でも感じたのかな。なんか上手くできない。この今のコーラスみたいな感じを日本語で出すのは難しいっすね。で、無理やり日本語でやるなら、英語でもいいんじゃないかなって。そっちのほうが、もともとのスラングらしいノリになるかもしれないし」
-- 世界の紛争に目を向けているのは、続く「亡骸の丘」も同じですね。
「これは、一番の歌詞に全部集約されてる感じ。イスラエルとガザのことなんだけど、この“イスラエル・イズ・ア・ウォー・クリミナル”っていうのは、フェイスブックベージ。けっこういつもチェックして、パレスチナ関係のベージもツイッターでフォローしてたりするし。前までだと『デイズ・ジャパン』でしか知ることができなかったことが、今はリアルタイムで飛んでくるからね。今日、今さっき空爆があった、みたいなこともバンバン上がってくるの。そういうのを見て書いた歌詞。これは歌詞が最初にガチッと決まっちゃった」