アンダーグラウンドの匂いに噎せ返るパブリックイメージ、ブルータルな音の壁と、憎悪の塊のような歌詞世界。SANDの表現はすべてが「暴力的」の一言に収斂していく。正直、怖い、と敬遠する人もいるのだろう。だが、今回はじめてインタビューする機会を得て、認識はまったく変わってきた。彼らの姿勢は、チンピラがシロウト相手に虚勢を張るのとはまったく逆なのだ。自分の表現に対する覚悟と責任感が違う。どこまでも真剣に、とことん真面目にやっているのだ。だからこそ15年も続いてきた。国内ではジャンルを問わずSANDを支持する表現者が増え、海外での評価も高いまま、近年はNYやデトロイト近郊でSANDに影響を受けたと公言するバンドも出てきだしたという。ニュー・アルバム『DEATH TO SHEEPLE』のリリースに寄せて、バンドの現状と、変わらぬ怒りの感情、そしてその核にあるものを探るインタビューをお届けする。
-- 前作(『Spit on authority』)以降、海外も含めたツアー三昧の日々だったと思いますが、どういうことを感じましたか。
Ishi(G) ……バタバタで、あんま覚えてないんですけど(笑)。まぁ前作出してヨーロッパ・ツアーにすぐ行きまして、帰ってきてジャパン・ツアーを毎週末やってたんですね。
Makoto(Vo) うん、初めてピザに呼んでもらって、ああいうふうにちゃんとしたスケジュールでリリースやライブをやらしてもらって。それをずっとこなしてた感じですね。消化試合にならないように、一本一本を一生懸命。まぁでも初めて(土日に)毎週毎週やることで、いいライヴ感みたいなもの? ステージでの持っていき方、みたいなのはわかってきたのかな。そういう感覚はありましたね。
-- 海外はもう何度目にもなるし、SANDを見に来る現地の方もいるでしょうし。そうなると、責任という意識は出てきますか。あと、日本と海外のライブの違いは?
Makoto すげぇありますね。日本からハードコア・バンドってそこまで行ってないと思うんで。勝手に、自分的にだけど、海外ライブ行くときは日本代表みたいな感覚で行くから。日本のハードコア・パンクのみんなに迷惑かけられないし、舐められるようなライブはできない。プレッシャーありますよ。いいプレッシャー。だから一回一回「全員ぶっ殺してやる」ぐらいの勢いでやってますね。
Ishi うん。いろんな地方周らしてもらって、もちろんライブ来てくれる人も、長いことサポートしてくれる人もいて。みんな良くしてくれるんで、そこはやっぱり勝手に背負ってる部分ありますね。日本と海外の違いは、単純に言うと、外人のほうがド派手に騒いでくれるっていうのはあるかな。
Makoto 特にアメリカはね、今日はパーティーだろ! っていう感じある。別に知らなくても、見て「あっ、ヤベエ!」って思ったら、そこからのレスポンスは凄い。でも外国は全部そうなのかっていうわけじゃなくて、たとえばヨーロッパだったら……あれ、どこだったっけ? 最後のエリア。
Ishi ベルギー?
Makoto そう、ベルギーのどっか変なとこでは、なんか「ふーん」みたいな斜に構えたスカした感じで。場所によっても違いはあるんかな。自分もその日は客がそんなだったから、変な方向にスイッチ入っていって、どんどん腹が立ってきて。一生懸命やってんのになんだこいつら、みたいな。それでMCで文句を言い過ぎて、ものっすごい引かれて。「オメーら寝てんのか、このカマ野郎が!」とか言いまくってたら、5人、10人とどんどん出ていくんですよ(笑)。で、そのまま終わった……クソが、みたいなね。あんときは終わった瞬間ムカつきすぎて楽屋で暴れてたなー(笑)。
Ishi うん(笑)。あの日はNASTYもほとんど盛り上がりなかったし、今考えるとそういう土地柄? なのかもね。
Makoto でも、大枠で見ると海外はいい意味で馬鹿っぽく盛り上がってくれて。純粋に楽しいですよ。
-- すごくSANDらしいエピソードだと思います。今回のアルバムの一曲目にも“Asian hardcore tyrant”っていう言葉があるじゃないですか。
Makoto あ、これ言われたことがあって。ライヴした後「SAND、Asian hardcore tyrant!!!」って。「あぁ、そんな感じなんだ……それ渋いな」と思って。それで使いました。
-- 褒め言葉になりますか? 訳せば“暴君”ですよね。ただの“キング”とはニュアンスが違う。
Makoto そうっすね。まぁ褒めてんじゃないですかね? “BADASS”みたいな、同じようなニュアンスじゃないですかね。「イケてんな、お前ら」みたいな。
-- SANDの音やスタイルは、キングではなく、暴君の残虐さだと。実際に暴力性や攻撃性は凄まじいものがありますね。改めて訊くと、これはどういうところから生まれてきたものなんでしょうか。
Makoto ……ねぇ? ほんと思いますよね(笑)。