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SLANG New album Devastation In The Void 2014.08.06 In Stores!! / Pizza of Death Records

Vol.03 期待はしない、押し付けない、だから覚悟して見ろ

ただ『ダメじゃん!』なの。俺は、それを書く人

-- 福島第一原発の問題と、ウクライナの過去と、あとはシリアやガザの話。もちろん同じではないですけど、同じようにフラットに見つめて歌詞にできるっていうのは、単純に不思議でもありますね。

「震災前に出したアルバムに入ってる「チェルノブイリの首飾り」って曲なんかもそうだけど……なんだろうね。でも結局そこに向かって行ってる、っていう危機感はあるかもしれない。羊の群れの中には一、そうやって危機を察知する一匹がいるらしいんだけど、俺、そういう勘は昔からいいんだと思う。もちろんね、まさか日本で再び戦争が、っていうのは俺も思うよ? でも、日本は絶対に関係ないっていつまでも言ってるわけにはいかないのね。日本はアメリカに支配されたままだし、そのアメリカの状況はどんどん悪化していくし。そうなった以上、どんなカタチであれ、日本は必ず巻き込まれていくだろうし。そんなニュースって、調べればいくらでもわかるじゃない。ネットつなげばいくらでもアクセスできる。俺が今まで書いてきたもの、言ってきたもの、情報発信してきたものでもいいし。で、今日もどっかでものすごい不条理な出来事はたくさん起こっていて。もちろん、そういう世界のニュースをできる限り調べていくと、ものすごく虚しくなってくるけど」

-- 虚しさっていうのは、今回のタイトルにも表れていますね。ただ怒ってもどうしようもないことを知っている。喚き散らせば世界が変わるなんて全然思っていないんだなって、改めて思わされました。

「あぁ、タイトルね。これは、いつ頃からかある感覚。その、誰かに期待する感覚? それはいつからか捨てちゃったんだよ。自分の中で。たぶん『IMMORTAL〜』に至るまでの何年間かだったと思うんだけど……ナンボそういうことを訴えても、何をしても、もう伝わらねぇもんは伝わらねぇんだなって諦めちゃった。で、じゃあやーめた、じゃなくて、じゃあもういいや、好き勝手に書こう、と思うようになった。別にいいよ、聴くな見るな、みたいな感じ。押し付けることは自分からはしないんだけど、でも開けてみたら『ほら』って言える。だから覚悟して見ろよ、みたいな。そういう感覚になってるんだろうね」

-- その感覚をタイトルにすると「空虚の中の荒廃」になる?

「うん。不条理に対しての無関心っていうか……。さっきの、変化の話、進化と無常の話もそう。黙っていては現状維持もできない。俺は今、日本はすごい激動期だと思っているの。震災以降、自民党政権に戻った時にも思ったけど、実際に憲法改正の話も出てきて。こないだの閣議決定、これ、このままだと本当に通っていくでしょ? まさに激動だよね。集団的自衛権については、みんな『日本がそんなことになるなんて嫌だ!』『戦争巻き込まれたくない!』つって騒いでんのかもしれないけど、それ以前に人として、まず救う人がいることを知らなきゃいけないんじゃないの? と。増税からの社会保障削減とか大嘘も含め、それは国内外いたるところにあるわけで。そういうのだって、これから俺たちみんなが辿る道なのにね。あと、やっぱ政府があの調子だからしょうがないのかもしれないけど、国防に関すること、個別/集団的自衛権のことはロクに調べようともしない人があまりに多い。どこまで日本はアメリカの言いなりにならなきゃならないんだ? 何故この国の大部分はそこにすら気付かないんだ?って、虚しくなっちゃう」

-- 世界だけでなく、日本も荒廃寸前であると。

「実際にガザ地区とかシリアとか、あれこそ物質的な荒廃だよね。破壊されて。デトロイトの町とかも産業的な部分でけっこう荒廃してるのか、FORDのでかいビルが廃墟になって、硝子バンバン割れてたりした。今日もどっかで同じことが起こってる。そこに本来は目を向けて、日本政府として支援したりODAあげたりしていくべきだと思うんだけどね。善人面したことばっか言ってらんないけどさ。ODAが原発輸出国の立地地区のインフラ整備費用に化けるとか、やり方はあるはずで。なのに、誰かと誰かが繋がって、また誰かが儲けてる。もう国民をバカにするにも程があるじゃない? 『全額社会保障に使います』とか3秒でバレる大嘘並べといて、増税はします、社会保障はどんどん削ります、大企業は減税します、日本は借金だらけなので国民はカネよこせ……ってね。そういう投げかけを俺はずっとしてきたつもりなの。真意はあんまり伝わってないと思うんだけど」

-- 伝わってないですか。

「なんか『そういうポリティカルな思いを持って、そういうことをずっと歌ってきてる人……みたいだねぇ』ぐらいで。でも俺が本来歌ってるのはそこ。『世の中を変えろ!』でもないし『みんなでやろう!』とも言ってない。ただ『ダメじゃん!』っていうだけ。『いいのかよ?』ってね」

-- あぁ。現状打破とか世界平和とか、ユニティというスローガンもいらない。とにかく「ダメじゃん!」を知らせたい、という。

「うん。たぶん毎回これ言ってるけど、そこから先に俺、あんまり期待はしてなくて。いかに書くか、っていうことだけ。現実があって、俺なりに見てるドラマがあって、それを描写する。それだけを続けてる、そういうことを書く人なんだなって自分では思ってるかな」

Interview by 石井恵梨子