-- なるほど。その暴力衝動が今は曲という形になっている?
Ishi 単純に、いかついほうが好き、っていうのは昔からあるんですね。ダラダラした歌詞や曲よりも「うわっ!」って思うものに衝撃を受けたし。あと、これは俺の勝手な意見ですけど、もちろん喜怒哀楽はあるんです。楽しいこともあるんですけど、Makotoが「楽しくやろうぜ」って歌っちゃうのは、なんか違うんですね。やっぱヴォーカルが一番怒ってなくちゃダメやと思うんですよ、その会場で。その歌を頂点として、来てるみんなが「うわっ、わかるわ!」って感じで暴れ出して、結果的に楽しくなれればいい。そういうイメージなんですかね。先にこっちが「楽しい~」って言ってもうたら、なんか違うと思う。
Makoto ……なんか難しいこと言うなぁ(笑)。石さん渋いスね(爆笑)。
-- 悪いものに憧れる感覚、大なり小なり若い頃はあると思うんです。でも今、その時代はとうに過ぎたし、ただ悪ければいいっていう価値観もないはずで。
Makoto 今でも精神年齢が一緒だったらそれこそバンドなんて続いてないですよ(笑)。そんなヤツはずっと刑務所か精神病院でしょ(爆笑)。だから、最近の変な事件を起こすような連中、ああいうのとは違う。ほんと一緒にされたくない。うん、真面目にやってます。
-- 今のSANDの基本になっている格好良さ、求めている姿を、“悪さ”という言葉に頼らず表現すると、どうなりますかね。
Makoto やっぱり……目で見るじゃないですか、いろんなものを。一方向からだけじゃなくて、いろんな方向から。で、もともと僕は人間不信なんで、勘繰っていろんな角度から見ようとする。「こいつほんとにそうなのか?」って考える。みんな表面だけで見てるような気がして。「ほんとは違うんじゃねぇのこいつ」ってとこ。それこそさっき言った歌謡曲の、歯が浮くような歌詞を歌ってるような連中を見ても「絶対思ってねぇだろ」って思う。でね、ビジネスだったら全然いいんですけど、それをビジネスだって言い切らないところがなんだか詐欺みたいで気持ち悪いなと思う。そういうところ、一番イライラする。宗教が「これはビジネスだ」って絶対言わないのと似てる。
-- そこをぶっ壊したい、という思いはありますか。
Makoto あります。あるけど、反面けっこう冷静で。俯瞰で見て、物理的にも難しいだろうっていうのはわかってます。音楽も、よりビジネスライクで、ちゃんと割り切ってやってる子が多い。腹の中ではね。で、レコード会社、大手レーベルは当然ショービズとしてやってる。それらのやり方が気持ち悪いからぶっ壊そうって言っても、僕の声がじゃあ何人に届くのか、って話になってくる。もし一瞬届いたとしても、そのみんなを何十年も唸らし続け、繋ぎ止めるだけの力があるのか。みんなを納得させる楽曲、存在感とか実売数とか、はたまた一人でも多くの人に届けるための聴きやすい楽曲なのか、とか。いろんなことを考えれば物理的に無理だなって思う。だから、そういう意味も含めて、今の俺たちのやり方じゃ別になんも変わんねーだろ、と思いながら書いてる部分もある。
-- わかっていて、これだけ書きますか。
Makoto これを言ったところで、どうにもなんねぇのもわかってる。これで世の中が変わるなんて全然思ってない。ただ、吐いてる感じ。
-- それでも、吐き出さずにいられない?
Makoto うーん。確かに……変わんないからやめる、ではないですね。変わんなくてもやってる。で、変わんないのはわかってるけど、でも根っこのところで、なんかぶっ壊してやりてぇな、とは思ってます。