--え、じゃあインタールード的なインスト『#Summer Days』の成り立ちは?
ヤマケン: それは、「インストを作ってきて」って言われて。作ったこともないし、飛び抜けて楽器が上手いわけじゃないので、どうしよう……と思って。カントリー調にしようと思ったんですけど、ギターが難し過ぎて弾けなくて。じゃあウクレレにしちゃおうかなって、ちょっと夏っぽくなったんです。これが、出来る精いっぱいのインストです!
--なるほど(笑)。
ヤマケン: そうですね。インストがあれば流れが見えた、みたいにKenさんに言われて。三部構成ぐらいを描いていたっぽくて。確か、これが最後に作った曲じゃなかったかな。
--アコギもインストも、やったことないことをガンガン振られたんですね!
ヤマケン: そうですね(笑)。
--でも、2曲目『Footsteps』の、この思いがあったからこそここまで来たっていうような歌詞は、アルバムの頭の方にくるに相応しいと思いましたよ。
キクオ: 確かに。歌詞に込めた思いは、やってこれたことと、未来に向かって頑張るよっていうものなんですけど、最後に、未だ足跡は残せていないとは書きたかったんです。ハイスタだったら、足跡を作っていったって歌えるところに対して、俺らはほんとこれからなんで、こういう歌詞で終わらせたかったんです。
--なるほどね。《鋲ジャン、鋲ベルトは着ないが心の中で装着済みだ》も、いいフレーズですよね!
キクオ: これは、Kenさんとスタジオで、パンクって何だ?って話になって。
ヤマケン: あったねえー!
キクオ: それってKenさんの発言で。外見をイカツイ感じにはしないけど、誰よりもパンクな自信はあるし、心の中にはしっかり持ってるよ、外見では関係ない、要はどう考えて動いているかがパンクだよって言っていて、その言葉が俺は頭から離れなくて。パンクの定義なんて壮大じゃないですか。いろんな価値観があって。そこで、俺の中では、カッコいいって120%思って行動したり発言することが、その人にとってのパンクになるって思ったので、その台詞を自分らしく解釈して入れたかったんです。
--また、良い話ですね。
キクオ: Kenさんから吸収したことは、歌詞の中には入っていますね。意識したわけじゃないですけど。
--そして、4曲目の『Good Morning And Good Night』はリードチューンですけど、温かいメロディや疾走感、さらにシンプルで刺さる言葉にDRADNATSらしさが出ているし、メロディックパンクの輝きも詰まっているなって思いました。これは、出来た時に手応えあったんじゃないですか?
ヤマケン: ありました(即答)。この曲は絶対に通ると思いました。
--ソングライターとして、ヤマケンさんが何かを突破した瞬間だったのかもしれないですね。
ヤマケン: そうかもしれないですね。これが出来たのは、制作の後半だったと思うので。ここまで、ずば抜けてると思える曲が自分の中でなかったので、ちょっと楽になりましたね。
--不意に出来たんですか?
ヤマケン: はい。全部不意にですね。
--走りながら作っていても不意にこういうダイヤモンドが出てくるっていうのは、発見だったんじゃないですか?
ヤマケン: はい。録りが終わった日も、Kenさんに、お前またすぐに曲を書けって言われましたね。全部絞り出しているから、そこからさらに絞り出せば、また凄いのが出来るかもしれないからって。俺、その言葉を聞いて思ったのは、自分で可能性を潰すなっていう。やり切ったで終わりじゃなくって、そっからさらに絞り出せば、作ったものを踏まえて新しいものが出てくるから。
--それって、曲作りに限らず、何に対してでも当て嵌められる言葉ですね!
ヤマケン: だと思いますね。自分たちが限界だと思っていた時に扉を開いてくれたのは、誰でもなくKenさんなんで。次は自分自身で開けられるキッカケをくれたと思います。
--あと、さっき話題にも出てきた『Sign』って、歌詞だけじゃなく、歌も良いなって思って。この曲に限らずですけど、ヴォーカリストとしては今作に対して、どう向き合いました?
キクオ: レコーディング中にKenさんに、今まで声を伸ばしていたところも、リズムに合わせて切るとか、そういうテンション的なところをアドバイスしてもらって。僕としても、やりながら新しい歌い方に出会えた気がします。ここで伸ばさなかっただけで、こういう表情になるんだとか、引き出しが増えていって。今まで、比較的綺麗に綺麗に歌おうとしていたんですけど、若干声がドライヴしてもありだなって気付かされたのは『Sign』だったかな。狙いながら歌ったっていうよりは、ひたすら歌っているうちに気付いたっていう。
--また『Like Flower』のテンポチェンジを聴いていて思ったのは、DRADNATSって、こういう展開をナチュラルにやりますよね。そこも、いいなって、
ヤマケン: いやいや、引き出しがないだけだと思いますよ(笑)。
--(笑)。そして、最後にすると決めていた『This Song Is For You And For Me』。
ヤマケン: 遅いテンポから早くなるんですけど、ミックスが終わって聴いた時に、イントロから、この1年半のエンドロールが俺の中に出てきたんですよね。これはもう最後だな、って思って。
--歌詞も最後っぽいですよね。
キクオ: 結果そうですよね(笑)。
--この歌詞は前向きじゃないですか。さっき、歌詞が暗いって言っていましたけど、ここに至るまでに暗さや怒りがあるから、この前向きさの説得力が出るんだと思いますよ。
キクオ: ほんとそう思います。バランスを考えながら書いていたわけじゃないんですけど、流石に暗い歌詞ばっか書き続けていて、暗過ぎるなって思いつつ、でもあからさまに明るい歌詞は書きたくなかったので、そう思ってもらえるといいですね。
--最後にアルバムのタイトル『MY MIND IS MADE UP』は、腹を括った、っていう実に素直な意味合いで。
ヤマケン: タイトルもなかなか決まらなかったんですけど、Kenさんに、「結局お前らこのアルバムをどういう気持ちで作って、このアルバムでどうしたいの?」って言われて、ほんとに俺たちはPIZZA OF DEATHでKenさんのプロデュースってなった時に、命を掛けようって思ったので、それをそのまま。英語の語呂的にもしっくりきたし。
--確かに、リズム感がある言葉ですよね。あとはリスナーの反応が楽しみですね!
ヤマケン: 若い子の反応が凄く楽しみですね。同じ世代の人は、そうそう!って思ってくれそうな気がするんですけど、ハイスタやKenさんを知らない高校生とかが聴いたらどう思うのか、興味があります。
--これをキッカケに、シーンに風穴を開けたいとか、AIR JAMのように世代を確立していきたいとか、そういった目標は明確になってきていますか?
ヤマケン: ありますね。やっぱり、Kenさんにも言ったんですけど、メロディックパンク=DRADNATSにしなきゃいけないと思っています。
Interview by 高橋美穂
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