--朝までとことん話していたこともあったようで。
ヤマケン: そうですね。俺らが付きあったこともありますけど(笑)。
--言いますね~(笑)。あと、それぞれに対する細かいアドバイスもあったようですね。コラムにはドラムのやり取りが記されていましたけど。
トノ: やっぱドラマーだからこうでしょっていう考えをひっくり返されたっていうか。鳴るもんだから思いっきりやろうよっていう意識は俺の中になかったので。8ビートを16ビートにしてみてとか、直感でKenさんは言ってくれるので。そういうふうに細かいところまで見てもらいましたね。
--それなりにバンドも歴史を重ねてきて、ドラマーはこうあるべき、メロディックパンクはこうあるべき、っていう固定概念もあったんじゃないですか?
トノ: そうですね。やってきたことで慣れちゃってる感覚もあるので、そうじゃないところを引き出されたっていう。これでいいんだ!って思ったことがたくさんありました。カッコよければいいんだって。
--それで、楽になったところもあるんじゃないですか?
トノ: そうですね。正直楽になりました。追い詰められる、っていうよりも。思いっきり出来ましたね。そこも人間性を見られてるんだなって、パッション的なところというか。
--トップに立っている人から、技術的なことや哲学的なことだけじゃなく、パッション的なアドバイスを受けるって、何だか大切なことに気付かされる気がしますね。歌詞に関しても、いろいろとアドバイスを受けたんじゃないですか?。
キクオ: そうですね。
ヤマケン: 歌詞は大変だったね。。
キクオ: 正直、今のメロディックで在り来たりな歌詞……前向きなことをひたすら並べるとか、そういう方向に寄り気味だったので。それをKenさんに投げたら、「ほんとにそう思ってんの?」って。僕たちの目線でみんな絶対出来るよ!って言われても、Kenさんみたいに立ち位置がある人から言われれば説得力があるけど、僕らが言ったところで微妙なところもあるんじゃない? ほんとに思ってることを書けばって言われてから、全部書き直したんです。それで、僕、根暗というか……よく明るいって言われるんですけど、グロいところもあるんだなっていうのは、歌詞を書いているうちに直面して。
--歌詞を書いていて、自分の隠された面に気付いたというか。。
キクオ: そうです。結構性格悪いなって。一曲、凄く暗くなっちゃったんですけど、でも、それをKenさんに見せたら、これでいいんじゃない?って。
--それってどの曲ですか?。
キクオ: 『Sign』です。ヤマケンから暗過ぎるって言われて、書き直したものも送ったんですけど、Kenさんからは「暗い方がいいんじゃない? その方が説得力があるから」って。それからは、ムカついてることとかも全部書いちゃえ!って。でも、そうやって書いてみてほんと良かったなって。Kenさんも、歌詞を深夜に書いていて興奮して汗かきながら書くこととかあるみたいなんですけど、そのニュアンスが僕もわかったし。書き直すことになって、期間も短くなったんですけど、等身大の自分に出会ってからは、書くスピードも上がりましたね。
--歌詞も、どっか縛られてたんですかね?。
キクオ: なんか、どうでもいい物差しが僕の中にあったんだと思います。明るい曲だから、こういう歌詞を書かなきゃダメだとか、メロディが切ないから切ない歌詞とか。それが壊せなかったんだろうなって。それをKenさんに指摘されて、壊せたんですよね。
--これまでは、その物差しが正しいと思って書いていたわけでしょう?。
キクオ: そうですね。手を抜いて書いているわけでもなかったし、在り来たりな歌詞も好きなんですよ。ただ、やっぱ英語で書いている以上、もっと捻って書いていい立ち位置にいるっていうのも気付いたんで、だったらどんどん自分の捻くれているところを出そうって。それが楽しくなって、新しいスタイルが出来ましたね。
--歌詞を書く人に話を聞くと、どんなに暗い歌詞でも最後だけは明るく着地したいって言う場合が多いんですけど、キクオさんの場合《こんなにも嫌いな奴もお前くらいだよ》(『Day After Day』和訳)で締め括られるっていう(笑)。。
キクオ: あははは!そうですね。
--でも、それがいいと思うんです。さっき言っていた『Sign』の歌詞が一番響きましたもん。。
キクオ: ああー。DRADNATSの歌詞に前向きさを求めている人もいるかもしれないですけど、それって逆に残酷だなって。
--確かにね。。
キクオ: 映画やドラマやいろんな媒体があるんで、明るい言葉はそこで噛み締めてもらって、僕の歌詞は現実的でいいのかなって。あんま嘘をつかないようにしようと。ここまで書いていいのかな?っていう戸惑いもあったんですけど、書き切ったっていう感じですね。
--コラムに載っていた写真も裸だけど、心も体も真っ裸にされちゃった感じですね(笑)。。
キクオ: そうですね!(笑)。
--制作は修業だったとしても、写真を見る限り、レコーディングは和やかだったんじゃないですか?
ヤマケン: 楽しかったですよ。
--やっとレコーディングに入れる!っていう喜びもあっただろうし。
ヤマケン: そうですね。日程が決まった時は、良し!っていう。そこに向けて、やれることを全部やろうと。
--1年半も準備期間なかなかな長いし、DRADNATSとKenさんとピザの三つ巴の気合いを感じますよね。実際に聴いても大傑作で。
ヤマケン: Kenさんのプロデュースが入ることによって、今まで以上のモノが出来たんで、現段階の自分のキャパを越えている作品なんですよ。あんま自分たちが作った感覚もないんですよね。
--いやいやいや、正真正銘のDRADNATSの作品ですよ!
ヤマケン: そうなんですけど……普段、自分の作品って聴かないんですけど、今回はよく聴いてますね。よくこんなの作ったなあっていうよりは、良いアルバムだなあって。
--手放しで傑作だと。
トノ: 言えますね。
--自分たちの作品云々置いておいても、メロディックパンクの傑作というか。
ヤマケン: そうですね。
--1曲目の『Bright Star』は、語りからはじまるし、決して勢いだけの曲じゃないですよね。これで幕を開けるところにも本気度を感じました。
ヤマケン: 実は、曲順には殆どメンバーは関わっていないんです。
--そうなんですね!
ヤマケン: その曲だけ、元々あったんです、唯一。4年くらい前に作ったんですけど。語りは、MEANINGのHAYATOがやってくれたんですけど。
キクオ: メンバーでも曲順は考えていたんですけど、これを誰も一曲目にはしなかったんですよね。
--そうなんだ。メンバーじゃない声ではじまるけど、だからこそ掴まれますよ。じゃあ、曲順はKenさんやピザの意見で?
ヤマケン: そうですね。曲作りの段階で、アルバムの中でこういう流れでって考えている人もいると思うんですけど、今回はひたすら作ったので。そもそも曲順に拘りが俺はなかったんです。録ってみたら浮かぶかな?とも思ったんですけど、それもなかったので、唯一最後の曲(『This Song Is For You And For Me』)くらいでしたね、ここがいいって思ったのは。
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