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Review.01 阿刀“DA”大志

RAZORS EDGEというバンドはスラッシュ・ハードコアシーンにおいて、非常に稀有な存在である。サウンド同様に短命なバンドが多い中、彼らはコンスタントに活動を続け、なんと来年結成20周年を迎える。世界中のどのスラッシュバンドも恐らく到達していないであろう、未知の領域に彼らは突入しているのだ。

ここまで息の長い活動を続けられている大きな要因のひとつは、ほぼ全曲の作詞作曲とサウンドプロデュースを手掛けるヴォーカルKENJI RAZORSの存在。ハードコアに限らず、様々な音楽から影響を受けている彼のクリエイターとしての手腕は過去の作品(オルタナティヴ色の強い「MAGICAL JET LIGHT」(05年)等)でも明らか。そして、元々メンバーの出入りが激しいバンドだったが、ここ10年はメンバーが固定していることも大きい。

今作『RAW CARD』は、オリジナルアルバムとしては実に5年7ヶ月ぶりのリリース。この間、この4人組は復興支援や主催フェスの開催などで全国を駆けまわっていた。例えば、東日本大震災の復興支援のための無料野外フェス“YOUR FESTIVAL”の主催、KENJI RAZORSの地元・広島で起こった土砂災害の復興支援にまつわる様々な活動、さらにバンド主催のサーキットフェス“STORMY DUDES FESTA”を2013年に立ち上げ、ソールドアウトを記録するまでのイベントへと成長させた。この約5年半の間に4人が見て、考え、行動に移してきた全てを集約し、20周年を目前に控えた今、「RAZORS EDGEとは一体何なのか」という問いに対して改めて答えを出したのがこの作品なのである。

これまで様々なサウンドを柔軟に採り入れてきたバンドだが、最終的に彼らが今作で提示したサウンドはファストでポップでキャッチーで、なおかつヘヴィ。オルタナティヴでトリッキーなサウンドも得意とする彼らだが、今作では「これぞレイザーズ!」と胸を張れる一撃必殺の技のみをグッと詰め込んだ。

1曲目「A.P.T.N.」から怒涛のスラッシュサウンドで鋭く切り込み、間髪入れずに超高速の表題曲へと雪崩れ込む展開は最早レイザーズのお家芸。ただ速いだけでなく、曲中にグッとテンポを落とすことでヘヴィなグルーヴを生み出すテクニックは、長年のライヴ活動で得たものに他ならない。そう、どの曲もライヴでプレイすることをこれまで以上に意識したものになっているのだ。スクリームを多用した力強いヴォーカルもその現れと言える。

サウンドだけでなく、これまでで最もメッセージ色の強い歌詞にも注目。震災以降に感じた様々な思いが強烈なメッセージとなり、作品の中核を担っている。「FUCK OFF NUKES ! 汚すな!」(「CREATE ONE」より)、「オマエの 無関心 ファック!」(「BLURRED ZEAL」より)といったストレートな怒りを表現した言葉が並ぶ。それと同時に、団結をテーマにした曲もある。Oi! Punkの要素が強い「WE UNITE」は、広島土砂災害の復興支援ライヴ用に用意した曲がモチーフになっているという。どの曲にも強いメッセージが込められており、これが今作をより力強いものにしている。

結成20周年に向けた第一歩として、これ以上ない強力な作品がここに誕生した。

Review By 阿刀 “DA” 大志