Vol.02「FIRE CRACKERの制作について。今後の展望」

――『FIRE CRACKER』を作るにあたって、初期段階にイメージしていた全体像は、どんなものでしたか?

中途「僕と健太が一緒かどうかはわからないですけど、こういうふうにしたいっていうのはあったと思います」

健太「僕はちなみに、6、7曲できるまでは、全然見えてなかったです。最初は……そんなこと、『FIGURE』の時には考えなかったんですけど、真ん中にくる曲ができるまでは、正直どういうアルバムになるか不安でしたし、どういうふうにしたいっていうのも、明確にはなかったです。ただ、一曲一曲いいと思うものを作っていて。それで、真ん中にくる曲ができた時に、全体像が見えました。それが『Story』なんですけど」

――おぉ、キラーチューンですね。

健太「そうですね(笑)。僕らにとっては全部が可愛い曲たちなんですけど、『FIGURE』の時になかった感覚があったんですよね。何やろな……みんなを『うん』って言わせたいっていう。『Story』ができたことによって、この曲はこういう奴に好かれればいいやっていう開き直りができたっていうか、それぞれの曲のキャラ立ちを上手くさせられるようになったかな。それまでは、一曲に全部いいとこ出したい、みたいな感じだったから。曲を作ってる時も、リーダー(中途)が、ここはこういう方がいいんじゃないかって注文をしてくるんですけど、僕としてはまだ真ん中にくる曲ができていないから、全部そこを目指して作っていたんですよね。だから、リーダーの提示してくることに対して、どうかな?って思っちゃっていました」

中途「今回はそうですね。『FIGURE』の時は、途中段階の打ち合わせで、この曲はこうしたい、この曲ではこうしたいって言って、変えてきてもらっていたんですけど、今回は、健太に打ち合わせで首を傾げられる回数は多かったです。健太は、6、7曲できるまで全体像が見えてなかったって言ってましたけど、僕はライヴの光景を重視したんで、最初から前作とは違う考え方ができたんですよね。だから、意見が当たる、ってまではいかないですけど、じゃあこうしようっていう結論がスムーズに出なかったところはあります」

健太「かなり首を捻ったもんね、スタジオで。でも『Story』ができてからは、みんなの、この方がいいんじゃないかっていう声に、僕が素直に試す姿勢を持てるようになりましたね。余裕ができたというか」

中途「『Story』も元々、サビが全然違って。で、サビの部分に対して、僕が見たい景色を提示してできあがったのが今の形なんですよね」

――じゃあ、リリースまでに時間が掛かった理由には、曲作りに時間が掛かったところもあるということ?

中途「あったと思います」

健太「明らかに前よりも、スタジオでいろいろ試していて。最初に僕がデモで持っていったものを、スタジオでみんなで合わせるんですけど、終わってほんまに誰も喋らへんくて……全員、これどうなんやろ?って思っている時間が、ほんま多かったよね」

中途「『FIGURE』のツアーが終わってから、次にどうしていきたいかっていう5人の気持ちが、揃っていなかったんだと思います、正直。今振り返ると」

――じゃあ、『FIRE CRACKER』を制作しながら足並みを揃えていった、というか。

中途「そうやし、トータルで半々くらいで歩み寄っているバランスやと思う。プラス、今回は途中でピザ・オブ・デスに投げて、素直に感想をもらったりしました。ここのフレーズはこうしろとか、細かく求められるのは僕らは苦手っていうのもわかってくれているし、ピザのスタンスも、楽曲は自由にするべきっていうものだと思うんですけど、僕らはチームとして、この曲は自信あるんやけど、どう?って聴いてもらって、一曲一曲についてや、全体の流れも、こういうテンションの曲があればどうかなとか意見をもらって。確かに、その方が作品として面白いなって思えて、反映したところもたくさんありますし。なんで、今までの中でも一番レーベルとバンドが近い距離で、作品ができたと思います」

――枚数を重ねるにつれて、いい距離感でできるようになっていますか?

中途「そうですね。単純に僕らに経験がなかったから、『FIGURE』の時とかはゼロにひとしいくらい何も求められていなかったと思うんですよね。ほんとにざっくりした打ち合わせはあったけど。それはそれでよかったのかもしれないですけど。」

健太「俺は、この曲がいいと思うんや、って言って出してもらう感覚で二枚リリースさせてもらいましたけど、今回は、これどうやねん!ってピザに思って出して欲しかったんですよね。だから、わりと細かいところまで思ったことは言って欲しかったし。でも、アホほど細かい意見は返ってこないですけど。僕らがどういうバンドかわかってくれているから。ただ、僕の姿勢としては、そういうスタイルをとりましたね。意見を聞きたい!っていう。それをどうするかは僕ら次第だし」

中途「ここってどうなんかなって掴めへんところを訊けたりとか、そういうのは……助かってます(笑)。やればやるほど正解が見えなくなってきたところが、今回はあって。『FIGURE』の時は見えないのが当たり前で、取り敢えずやってみて、これが一番の形やっていう自信に自然に繋げていったんですけど、今回はその上で、まだ見えへん部分をどう形にしようかっていうところに目線がいったから」

健太「迷ったよね」

中途「うん、結局正解は一生わからないと思うんですけど、その判断基準として、一意見がもらえることが、面白いと思いましたね」

――話を戻すと、『Story』ができた時に見えた全体像って、どういうものだったんですか?

健太「思いっきりメロディックハードコアをやったろうっていう感覚になったんです。いろんなことがしたいなっていう気持ちがないと言えば嘘になるんですけど、ただ、今回は思いっきりメロコアのアルバムを作ったれっていう焦点の絞り方になりましたね」

中途「単純に、僕らがこの5人の体制になって、やり始めた時にこういうのがしたいなってテンポが多いんじゃないかな。聴き手側がどう受け取るかはわからないけど、そういったところでは原点回帰なところはあると思います。10年やってきて、戻ってきた部分というか。いろんなバンドとやれるようになって、こういうのもしたいな、ああいうのもしたいなってやってきて、一周して戻ってきたっていうか。元々のメロディックハードコアをやりたいなって」

健太「次にどうなるかはわからないですけど、ほんまにいち曲を書く者として、いろんなことをやって、今までと違うことをしようとしたとして、自分が好きなメロコアって『FIGURE』までのもんだったんか!?って感覚が出てきて。別のことをやるにしても、もう一枚思いっきりメロコアやっとかんと、俺は後で後悔するんやろうなって。だから、途中からは、極端に綺麗なことをしたりするより、図太いメロコア……メロディックハードコアをやろうと。もちろん自分らで10年やってきた方法でって思ってはいるんですけど」

――いろんなバンドを見たり、音楽シーンを見たりして、立ち位置を考えて、これをやるべきだと思ったところもあるんですか?

健太「どうなんやろうね?」

中途「僕は全くないですね。自分らの立ち位置とかは気にしたことないです。単純に、自分らがやりたいように素直にやるだけかな。今んとこ、立ち位置っていうのを定めたり、自分らで考えると、やることが狭くなっちゃう気がするんです。というか、立ち位置とかあるほどやれているわけでもないし、単純に音楽って素直に、やりたいように、好きなようにやってくもんかなって、ここ最近で余計に思うようにはなりましたね」

――例えば、F.I.Bって、古き良きメロコアを踏襲している、シーンの中でも希少なバンドだと思うんです。そういう位置付けも、周りに言われて気付くようなところもあるんですか?

中途「そうですね。『FIGURE』の時も、何回かインタヴューで話したんですけど、一つの作品を聴いて、10人おったら10個の考えがあって当然というか。やし、自分らでこういうことをしたいなっていうのがあっても、聴く方は自由に受け取ってもらって……否定的な意見があっても、それはそれで、自分らで受け止められるような感覚はありますね。トータル面で好きじゃないけど、この曲だけ好きっていう意見があってもいいと思うし、打たれ強くはなっていると思います(笑)。自分の中で自然に受け止められるというか。だから、狙っていたことと違うふうに思われてるな、ってムカついたりはしないですね。それは10年間変わってないかな」

――人は人、自分は自分っていう考えは、状況や時代が変われど揺らがないというか。

中途「そうですね。僕自身、好きなバンドはそういうイメージなんですよね。やることが全然変わっても、作品が好きやったら好きやし、前の方がよかったっていうこともよくあるじゃないですか(笑)。そんなもんだと思うんですよね。ただ、聴き手に合わせてバンドをどうしていこうっていう考えは、僕らにはないですね。ライヴのことは考えますよ。こういうところで、こういう景色を見たいとか」

健太「うん。だから、この曲でこういう手法を使うとかやり取りはありますけど。だけど、曲に対して、望まれてるからこうしようっていう考えは、一切ないですね」

中途「もし、変わるとしたら、ライヴで見たい光景が変わってきた時とか。今はあくまでバンド主体ですね」

健太「単純に、俺たちの音楽の趣味が変わるとかね」

――自分たち自身が変われば、音楽もやり方も変わるっていう。

中途「そうですね」

――10年目っていう節目が、今作を作らせたところも、あるんじゃないですか。

中途「意識してたつもりはないすけどね。ただ、次のアルバムのことまでもう話してるんですけど、やることガラって変わるかもしれないですし、そこは思うようにこれからもやっていきたいなって」

健太「次からもやりたいことをやれるように、この形にしたところはあります」

中途「一個のまとめかもしれないですね。10年やってきて」

――リリースツアーでは、久々に行く場所もあるんじゃないですか?

中途「ある……と思いますね。本数は『FIGURE』の時の方が全然多いと思うんですけど、新しく持っていくものがあるんで、どういう光景が見れるんやろって、楽しみですね」

――やっと新しいもの持っていける、っていう思いもありますか?

健太「僕はあります。一番あるのはリーダーやと思いますけど、前回のインタヴューで話した、メンバーの諸事情で動きにくくなった時期に、曲を書き進めようってなったんですけど、やっぱバンドの動きの舵をとってるのはリーダーなんで、早くリリースしたいっていうのはあったと思うんです。で、僕の得意のマイペースな作曲でそれを遅らせたかもしれないですけど(苦笑)」

中途「いやぁ、単純に新曲を早くライヴでやりたかったっていうだけです(笑)。音源を出す理由としても、ライヴでやりたいからだと思うんで、早く出したいなっていうのはもちろんありましたけど、できてみて、やっとか!っていう気持ちは、逆に薄れていってます。もうちょっとでツアーがはじまるな、ぐらいな。レコーディングする前とかが、早く出したいって凄く思っていて、でも今は見えたからやと思うんですけど。あと、作曲は急がせたくないんですよね」

健太「うん、そのプレッシャーは一切言葉には出さないですよね。メンバーは一貫してそうなんですけど、ただ、そういう意識を持ってくれているのはわかるんで、逆に申し訳なくなってくるっていうか。でも、九割方、一年くらい前には見えていて、その時から僕は、早く音になった状態で聴きたいなって思って、だからレコーディングの時に、一曲終わるごとに、やっと聴けるって思っていました」

――暫く出せていないことで、焦りはなかったですか?

中途「あー、さっきも言いましたけど、元々はもっと早くできてるものだったんですけど、今の時期に出せてよかったなって。その間にできたことがあるんで、一番ベストな時期が今だったとは思えるから」

――焦ってたら、こういう作品にはならなかった?

中途「今とは違うと思います。単純に曲数も増えましたし。打ち合わせをピザとした時に、トータルをどや、って聴かせたら、アルバムのヴォリュームや流れで、もう一曲増やせへんかって言われて、それでできた曲もあるんです。そういうこともあったし、自分ら的に良かったと思います」

健太「その曲は、そのやり取りがなかったら、恐らく一生出てきてないんです。」

――ライヴでやっている曲もあるんですか?

中途「まあまあやってるのは、2曲くらいですね。レコ発がはじまると、思っていた光景と違うものが見れて、楽しかったりするもんね」

健太「『FIGURE』の時、衝撃だったもん。この曲はガッツリくんねんやろなって思ってたら、静かに見られていて、え?って」

中途「初日でほんっとに驚くんです」

健太「で、逆も然りで、全然予想していないところを歌ってくれたり」

中途「ライヴ意識して作ったけど、光景が予想と全然違っていたら、俺ら何を見てたんやろって(笑)」

健太「しもたなあ、って(笑)。それも面白いですけどね」

photo by yuji honda

Vol.3.へ続く

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