Vol.01「前作FIGUREから今作FIRE CRACKERまでを振り返るへの流れ」
――1stフルアルバム『FIGURE』から、このたびリリースされる2ndアルバム『FIRE CRACKER』まで、約3年半ありましたが、バンドにとってはどんな期間でしたか?
中途 年によっていろいろでした。2年前くらいは、めちゃめちゃライヴしていて、その間に新曲もはじめていこうって思っていたんですけど、ライヴと曲作りの同時進行が難しくて、去年や今年はライヴを抑えめにして。曲作りとライヴはメリハリをつけてやった方がいいんだなって……勉強にはなりました(苦笑)。曲の元を作るのは健太なんですけど、ライヴが多いとざっくりとしか進んでいかなくて。元ネタはあるんですけど、まとめる時間がなかなか
健太 そやね。細かいところまで詰めて、曲にするぞ!ってギアになかなか……ライヴをバンバンやってると入っていかないっていうのは……学びましたね(苦笑)
中途 僕がライヴの予定を組むんですけど、僕は曲を作らないんで、先のことを考えずにガツガツいれちゃうんですよね(苦笑)。ライヴを凄く入れた年は、意図として自分ら的にもいろんな場所で自分らの音楽をやって、経験を積みたいと思って、取り敢えず本数を多くやってみたんですけど、その時の感覚だと作曲と両立は難しかったんですよね
健太 でも俺は、『FIGURE』がどういうアルバムなのかが、リリースしてからある程度は時間が経たないと見えてこなかったから、ライヴをバンバンやったことによって、こういうアルバムやってんなっていうのが見えてきて、そっから次はどういうことをしようかとか、どういう作品を作るかっていうふうに考えられたところはありました
――必用な時間だった、っていうことですね。
健太 だったと思います
中途 確かに、無駄になったものはないと思います
健太 あの時間がなかったら、『FIRE CRACKER』もこうなってなかったと思う
――ライヴが多い時は、どれくらいの本数をやっていたんですか?
健太 多分、三日に一本くらいは。ライヴだけじゃなくレコーディングとか、バンドに使う日程ですけど。まぁ、ほぼライヴですけどね。一回計算したら、130本前後でした
健太 先輩に、今年ちょっと多くてこんくらいやってます、って言ったら、そんぐらいのペースが一番ええでーって言われて。僕は、無理やなって思いましたけど(苦笑)
中途 作曲に時間を割けませんからね
――さっきの話に出てきましたけど、『FIGURE』は、振り返ってみて、どういうアルバムだと思いますか?
健太 作ってるもんとしては、一曲一曲が12曲並びました、としか最初は捉えられないんですよ。この曲はこうで、この曲はこう、みたいに、曲単位でしか考えられなくて。でも、時間が経って、一曲一曲の繋がりや、アルバムのカラーとかがわかってきて
中途 元々フルアルバムを作るのが初めてだったので、経験値がない中で、流れとかも全く気にせずに、一曲一曲を集めたものが『FIGURE』だったと思うんです。その中で、ピザ・オブ・デスのチームと一緒に流れを作っていって。今回は、それに比べると、作っている時から、全体像を考えていました。一曲一曲に力を入れるところは変わらないんですけど、バランス的には、そのへんは差があると思っています
――今やピザ・オブ・デスはチームですけど、最初はプレッシャーがあったりしたんじゃないですか?
中途 プレッシャーは、正直あんま感じなかったんです。それよりも必死で、プレッシャーを感じる余裕すらなくて、取り敢えずやるしかなかったから。プレッシャーを感じた中で、考えて形にできれば、理想的なんやと思うんですけど、取り敢えずは見えへんことばっかりだし、単独作品を出したこともないし、それよりも取り敢えずは自分らのやれることをやるしかなかったんですよね、その時は。そう考えると、今は、余裕を持って考えられるようにはなってきましたね。ピザとの打ち合わせもスムーズにできるようになって、キャパシティが上がったというか(笑)
――悩むより、手と足を動かすというか。
中途 うん、考えてもやれることって限られてるんで、取り敢えずやるしかないって方向性にしかならなかったんですよね。多分、やっと『FIGURE』でプレッシャーを感じるくらいになったのかな。1stのミニ(『FILL IN THE BLANKS』) の時とかオムニバス(『The Very Best of PIZZA OF DEATH』)の時は、何も考えられなくて(笑)
健太 訳わかってなかったもんな(笑)
中途 やれることをやるしかないっていう開き直りで(笑)
――名前と音が急速に広まったことに関しては?
中途 そのへんは、単純に嬉しいとしか思わなかったですよ
――とは言え、浮かれるわけでもなく。
中途 浮かれる……余裕もなかったっす(笑)。目の前しか見えてない感じですね。ただ、求められるもんは、オムニバスの一曲(『Are you standing on?』)だけだった時は……ただ、その時に出している音源は一曲しかないですからね、ライヴでその曲ばっかり盛り上がるのは自然なんですけど、それが悔しくて。どの曲も同じくらい力を入れているし。ただ、今考えると戦う場所方向を間違えていたのかもしれない(笑)
健太 また、『Are you standing on?』は、それまでの僕らの曲とはちょっと違うんですよ。でも、それだけが一人歩きし始めて、そこには僕は物凄く戸惑いましたね。それまで明るい曲ばっか書いていて、いろんなバンドと対バンして、こういうのもカッコいいかも、と思って『Are you standing on?』を書いたら、急にいろんな人に認知されて、何処に行ってもあれだけが盛り上がるっていう……で、単独を出そうってなった時に、曲を作る上でどないしたらええねん!?と
――『Are you standing on?』=F.I.B節って思われているかもしれないけれど、違うっていう。
健太 そうです。僕が思っているF.I.B節はそうじゃなかったし、あくまでもカラーの一つで、当時の僕のF.I.Bのイメージの真ん中に来る曲ではなかったんですよね。だから、『FILL IN THE BLANKS』の曲を書いている時は、『Are you standing on?』が邪魔くさかったです(苦笑)。昔からの曲も入っていますけど。どうにかあれを越えるものを作らなきゃって思ってました
――その葛藤が収まったのは?
健太 『FIGURE』のカラーが自分の中で定まった時に、ちょっと納得できました、自分の中で
中途 ライヴでは、間もなくそういう感覚はなくなりましたね。自然にライヴを増やしていくうちに、自分らが別の曲をやるようになって、ライヴの光景としては、違う方向の楽しみも見えるようになっていったんで。今も、あの曲が一番好きやって言ってくれる人もいると思うんですけど
――また、そういう変化があっても、あくまで地元の京都を拠点に活動してきましたよね。
中途 そうですね。例えば、好きなバンドがツアーで京都に来るってなった時に、僕らの企画をやって欲しいって頼んでもらえると嬉しいし。応えられない時ももちろんあるんですけど、ライヴハウスに頼むんじゃなく、僕らに頼んできてくれるっていう……バンドの中では当たり前のことなんですけど、そういうところで、求められるものに対して、できることを広げていきたいとは思います。企画の内容だったり、そういう楽しい場所を作る上で。ただ、だからと言って、何ができているのかって言ったら、何もできていないですけど(苦笑)。自然にやってるだけっていう。でも、昔は、自然にやることもできていなかったと思うんです。目の前のことしかできなかったから。そう考えると、3年半の間でも、いろんなライヴに出て、こういうイベント面白いなって思ったら、自分らの企画に繋げたりできるようにはなってきましたね
――京都のバンドである自負って強いんですか?
中途 んー、そこまで深く、自分らは京都のバンドやねん!みたいには思ってないですね。京都が大好きで、ずっとやってきて、もっと楽しい街になったらいいなっていう考えはありますし、けど、僕ら自身、好きなバンドに、この土地のバンドだからこのバンドが好きっていう感覚がないのと一緒です。ただ、京都で自分らがずっと一緒にやってきた仲間の看板も背負ってる感覚はありますけどね
――そして、この3年半の間には、壁にぶつかった時もあると訊いていますが。
中途 あー、そうですね。ライヴのペースを下げなきゃいけない時期があったんですけど、諸事情で。でも、だからってどよーんってなるわけではなかったです
健太 あれやんな、4人で飲みに行ってんな。どないするよ?って
中途 そうですね。諸事情を抱えてるメンバーがいて、あとの4人で打ち合わせして、そいつの事情を含めて、どういうサポートをしていけるか、F.I.Bをどうしていこうかって話し合って、結局はやれることをやって、ライヴ本数が減るなら一本一本を太くしていこうってポジティヴな考えにまとまりました。バンドやっていれば、大なり小なりあると思うんですけど、それによってマイナスムードにはならないですね、うちは
――メンバーがみんな前向きなんですね。
中途 ……適当なんじゃないですか(笑)
――いい言い方したのに!(笑)。
健太 ほなどうしようか?ってなった時に、誰かが『ま、動けるようになるまで、ライヴが減るなら減るでええし』って言ったら、他の3人も『俺もそう思う』って言って
中途 さっきは適当ってざっくりいいましたけど、結局、誰が言うかですね。バンドのスタンスに対して、思ってることはみんな一緒なんで
健太 その後は、ほんまに前向きな話しかしてないですもん
中途 多分僕が一番楽観的にぽんぽん喋るタイプなんで(笑)。その時は、こういう形がベストじゃない?ってなって、それをあいつに伝えようってなって、そっからアホな話しかしなくなった(笑)。でも、そんなかでもF.I.Bは生活の中で大事っていうスタンスは前提やし、諦めムードとかには誰一人ならないんで、最悪ワンシーズンに一回のライヴでも、極論だったら年に一回のライヴでも、その一回がむちゃくちゃ凄い日になればそれでいいんじゃないかって
――止まるっていうことも考えない?
中途 それはよっぽどじゃないとないんじゃないですかね。うちはメンバーが変わるとか抜けるとかは、本人が言うしかないだろうし、今んところ、そういうのは全然考えられないですね(笑)
――あと、そういう話し合いの時に、「そんな能天気なこと言って!
って怒る人もいないっていうところが重要というか。中途 そうですね。それはこれまで、我武者羅に言い合って当たってきたから、今は意識統一ができているんだと思います
――目指す先を一つにできたというか。
中途 そうだと思います……そんな、カッコいいもんでもないですけどね(笑)。そういうふうに書いてもらえると嬉しいです(笑)。それですわ、僕が言いたかったのは
――ズルい(笑)。また、「頑張ってくぞ!」みたいに力む人もおらず。
中途 そういうのも全くないですね(笑)。やらなあかんことを、それぞれがわかってきてるんだと思います。なんで、最終的に大変なメンバーがいる時には、そいつをどういうふうにフォローしていけるかっていう話にしかならないですよね。そこを済ませばさらさらって進む話だし。まあ、うちはなんやかんや仲がいいですけど、意見が食い違う時期はありましたから
――10年経ったからこそ、今があるというか。
中途 そうですね
――活動歴が10年って、どうですか?
中途 んー……まあ、永遠の若手って言われてますからね(笑)
――実感がない?
中途 んー……単純に、自分が年とってきてるなって感じるくらいで(笑)、19、20歳の時とは感覚も違うし
健太 でも、10年やったぞ、どや!みたいな感覚もないです
中途 自然にやってきて今があるっていう
――話を訊いていると、マイペースですよね。
二人 ははははは!
中途 あぁ……バンドとしてマイペースって、初めて言われたんですけど、個人的にはよく言われますけど(笑)、そうやなって思っちゃったりするんで。でも、そういうことなんでしょうね
健太 うん、マイペースやと思う
――どうしたらいいんだろう?って流されないっていう意味でも、マイペースだと思うんですよ。
中途 どうしたらいいんだろうっていうのは、ちょこちょこ思ったりしていますよ。でも、やれてる場所が恵まれているっていうのは、10年ずっと思ってますね。ピザにはいい兄貴分がいるし、悩んだ時には京都の仲間がいるし、だから最終的にはマイペースでやってけるんだろうなとは思います
――でも、その縁を引き寄せるのは自分たちですよ。
中途 ずっとピザ入りたくてバンドをやってましたからね。そう考えると
――その希望を、叶えられないバンドが五万といますからね。
中途 有難いですねツイてましたね(笑)
健太 僕がピザに憧れたのって、ビジネスライクな部分が一切見えないからだったんです。そういうところがカッコいいなって思って。だから自分たちも、ビジネスライクなやり取りをしない、人と人との繋がりを大事に、みたいなところには、ピザに入る前から神経を使ってやってきたから。僕はあんま使えてないと思うんですけど(苦笑)、主にリーダーが。だから、悩んだ時に話を訊いてもらえたりする関係性を作れているのかな
――憧れるだけじゃなく、ピザやメロコアに学んできたんですね。
中途 あぁ、でもいい見本お手本となる人はいますね。カッコよく生きている人らを見れているのは大きいと思います
photo by yuji honda
Vol.2.へ続く