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フリーライター石井恵梨子の
酒と泪と育児とロック

Vol.16

さぁ、いよいよ! 今月16日にわたくし初の著書『東北ライブハウス大作戦〜繋ぐ〜』が発売されます! 出版社はA-Works。全国書店またはレコードショップ、一部ライブハウスや飲食店でも購入できますよ。(詳しくはコチラ→http://www.livehouse-daisakusen.com/BOOK.html

宣伝かよって言われそうですが、ええ、宣伝です。しますよそりゃ。ほんとに時間かけたし、自信作だし、初めて立派な書籍になったんだもの。なんなら登場してくれたバンドマン全員に声かけて大規模イベントでも開催したい気分。自分でもびっくりするけど、浮かれるものですね。こんなに欲が剥き出しになるとは思わなかった。人に知ってもらいたい! 祝ってもらいたい! ぶっちゃけイイって言われたい! 作品をリリースするたび、レコ発だ、リリパだ、と騒ぐバンドマンの気分が初めてわかった気がします。

ちなみに、今リリパって言葉を初めて使ったんだけど、これやっぱり恥ずかしいな。子供が言う「まほうのじゅもん」みたいで。

アラフォーの私は今もレコ発と言いますが、あの空気、特に若手にありがちなカラ騒ぎのムードって何だろうと思います。いつもツルんでる友達ばかり4〜5バンドも集めて、どのバンドも何のヒネリもなく「◯◯さんレコ発おめでとうございまーす、呼んでくれてありがとうございまーす」とMC。そりゃ楽屋は楽しいだろうが、フロアでずっと立ってるこちらはだんだん醒めちゃって、キミらのめでたさ全然どーでもいいんですけど、って言いたくなる感じ。……あぁ! 私、今、それやろうとしてた! ハタと気づいたので大規模イベントはナシ。小規模に地味にやります。詳細はまた後日報告しますね。

あと、初めてわかったことと言えば、アレです。頑張って作ったものに対して評論家からズバズバ言われる気分! 完成ホヤホヤの本は、まず私の師匠である小野島大さんに読んでもらったのですが「いい本だと思うよ」の後に続く「ここはもっとこうできたのではないか」「ここが残念だ」みたいな意見がいちいち的確で! なんというか、すごくありがたいけど同時にすごくムッとくる。それは図星だからこそ、なんですね。

人によるかもしれないですが、評論って、トンチンカンで的を射てないものはどうでもいい。こちらは傷つかないし「わかってねぇな」と無視すればいいだけで、そのまま忘れることができる。そしてまた、「良かった。面白かった」という具体性のない褒め言葉も、そのままなんとなく忘れてしまうものなんですね。ものすごく的確に痛いところを突いてくる、あるいは作り手が決して思いつかなかった指摘をしてみせる視線こそ、本当に価値あるレビューってことなんでしょう。その強さと必要性を改めて実感できたことも大きな収穫。みなさんも、本の感想、忌憚なきご意見、どんどん書いてください。

で、いろいろ指摘が来る前に、先に謝っておきたいことが……。

すさまじい誤植があるんです。一番やっちゃいけないタイプのやつ。

誤植にはいくつかの種類があります。程度が軽いのは、いわゆる「て・に・を・は」の話。次にマズいのはタイピングのミス、漢字の誤変換などですが、これはみんなよくやることで、たまにはミラクルのような笑いにも転化する。だから、ここまではまぁ許せるタイプです。

ただし、書き手として許されないのは事実誤認。「活動休止後」と書くべきところを「解散後」と書いてしまう、などのミスに始まり(けっこうよくある)、カバー曲をオリジナルと言い切る(逆もしかり。最近も強烈なのがありました)。さらには歴史的な出来事の認識が明らかに間違っているなど、笑えないどころか、書き手の信用が一気に落ちるケースもあります。私も過去に何度かやってきましたが、これはちゃんと調べれば当然わかること。「当時のことは知らない世代だから」と若さを言い訳にしたり、「人間だもの」とみつをに逃げてはいけないんですね。

で、さらに最悪なのが、個人名やバンド名といった固有名詞のミス。真剣に話をしてくれた相手の名前を認識しないというのは、どんな仕事でもあっちゃいけないこと。自分の名前が間違って呼ばれたら、誰だっていい気はしないですよね。かつて、ブラフマンの全員インタビューにおいて、ベース・MAKOTOくんの発言がすべて「MOKOTO」表記になっていた過去が蘇ってきます。あぁ、やっちゃいけないことなのに! なんで気付かなかったんだろう!

そう。最悪なミスであるのに、固有名詞って、なぜだか誤植が発覚しにくい。有名な名詞やタイトルなどは特に、脳みそが「ここは間違うはずがない」と思い込んでしまうそうです。細かい注釈はものすごく念入りに読み返すのに、大文字のタイトルが堂々と間違っている、みたいなケースは意外と出版業界によくあること。ほんとは一番やっちゃいけないことなのに!

閑話休題。人間、「やってはいけない」と言われたことほど、何故かうっかりやってしまう。あれはどういうメカニズムなんでしょうね。思い出すのはもう何年も前の話。泥酔したダンナがしでかした事件です。

子供が生まれる前だから、私も彼も夜はライヴに出かけ、そのまま深夜まで泥酔して帰るのが当たり前という生活でした。たぶんその日もそんな感じ。深夜に帰宅して先に寝ていた私は、明け方、フラフラと帰ってきたダンナが目の前に立っているのに気づいてギョッとしたんです。生気のない顔でパンツ降ろしてる。え、なに? 何やってんの?

後で聞いた話によると、その晩ダンナは行きつけのバーにいて、友達とバカ話に興じていたそう。テーマは「酔っ払って粗相した一番ヒドい例」。ある人は酔って帰ってトイレのドアに小便をしてしまった、なぜドアを開けてもう一歩を踏み出さなかったのかと大爆笑。またもう一人は、記憶もないままリビングのテレビに小便をかけてしまい、翌日嫁さんに大目玉を食らったと失笑。男子たるもの話を聞けばそれぞれ逸話を持っているらしく、「いくら酔ってても、トイレ以外では絶対やっちゃいけません」という結論に至ったと。

で、帰宅した泥酔ダンナ。ヘロヘロの脳みそで、トイレ以外でやっちゃいけません、やっちゃいけません、とか思ってたんですかね。寝ている私の枕元に立ち、そのままパンツ下ろして……二秒後、じょおおおぉ。

以下、修羅場なので略。私、それなりに顔が濃いので沖縄とかフィリピンとか南方系に間違えられることはよくあるんですが、便器と間違えられたのは初めての経験でした。

えーとね、こうやって他人のふんどしで笑いを取ってから、「そんな失態に比べたら、このミスは大したことじゃない」と思ってもらいたいな、という打算が現在働いております。身内の恥を晒したあとで、自分の恥を告白します。

『東北ライブハウス大作戦〜繋ぐ〜』。もちろん自信作ですけども、一箇所だけ、バンド名が間違っています。あのハスキング・ビーが、なぜだか「ハイキング・ビー」になっている! ぎゃあああぁぁぁ。

いっそん、ドンドン、本当にごめんなさい。

こんな本ですけど、でも、読んでくださいね。よろしくお願いします。

2015.07.15

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