写真集のサントラという異色作になった『BACK IN THE SUMMER』についてメンバーが語る連続インタビュー。
その第2回目は、バンドのアルバムというある意味、決まった形から解放され、いつも以上に自由な発想で挑むことができたという制作の舞台裏について聞いてみた。
まずは、ひとり1曲ずつ持ち寄った曲の話から。

「インストが1曲あると休めるぜ」って言われて、
じゃあ、半分ぐらいインストで行きますかって(笑)(高本)

――今回は高本さん以外も曲を作っているんですよね?

高本 そうです。全員が1アイディアずつ持ってきてます。

――全員?! あ、そうなんだ。

高本 だからよけいに、これまでと違う感じに聴こえるのかもしれないですね。

戸川 今回、フォーマットがアルバムぐらいのボリュームじゃなくなるって聞いた時に、これはいつもと違うことになりそうだなと思ったんで、「だったらみんなで1曲ずつ作ろうよ」って試しに言ってみたら、「いいね」ってことになったんで、「じゃあ、みんながんばろうか。やれるところまでやって、あとはみんなで揉んでいこう」って。

――えっと、フルアルバムにはならないってことは、割と早い段階で決まっていたんですか?

高本 自分達のことは自分達でわかるので(笑)。この時間じゃフルアルバムにはならないっていうのはわかってました。でも、ベストを尽くしたかったので、フォーマットは(何でも)いいかって。ただ、ひとり1曲ずつ持ってきて、みんなで作ろうっていうのは、コンセプトとしてありました。

――これまで、そういう話にはならなかったんですか? 全員ではないにしても、誰か高本さん以外のメンバーが持ってきた曲をやろうという話には。

高本 僕、曲を作るのが好きなんで(笑)。それに僕が曲を持ってきてたと言っても、僕が持ってきたアイディアに、みんながいろいろ加えて、曲にしてるので。それに僕もみんなのことを当てにしてるんで、みんなで作っているようなものですよね。「こういうギターをお願いします」だったり、「ベースはノー・プランです。よろしくお願いします」だったりそういう感じでいつもやってるんで、今回、全員が曲を作ってると言っても、元々のアイディアを誰が持ってきたかってそれだけの違いでしかないんですよ。

――ああ、なるほど。それで、えっとメンバー5人で6曲っていうのは……。

CHUN2 高本が2曲作ってるんです。

高本 今回が初めてじゃないですか。デモを相当がっつり作って持っていったのは。メンバーそれぞれに曲を持ち寄るってことで、今回は今までよりも自分の曲ってことを意識して、デモもかなりがっつり作ったんですよ。

――高本さんは「WEEKEND」と「SHINING」ですか?

高本 僕は「SHINING」と最後の「EARLY MORNING」ですね。

――あ、そうなんだ。じゃあ、戸川さんは「CRUSIN’」と「URBAN COYOTE」?

戸川 いや、「URBAN COYOTE」だけです。

――あ、そうか。ひとり1曲か。

戸川 「CRUSIN’」は裕亮です。

小坂 俺です。

――へぇ、そうなんだ!

(全員 爆笑)

小坂 なんですか? なんですか?

CHUN2 ちゃらいでしょ? 無口だけど(笑)。

小坂 そんなことないですよ。

戸川 で、「WEEKEND」は吾郎ちゃんで、「STEP BROTHERS」がCHUN2。

――ああ、なるほど。らしいところもありつつ、意外なところもあって。でも、一番意外だったのは「CRUSIN’」かな。

小坂 マジすか?!

――ひとり1曲ずつ作ろうっていう話になったとき、そのアイディアには全員乗り気だったんですか?

CHUN2 もちろんもちろん。

中津川 たぶん、こういうタイミングでしか取り組めなかったんじゃないかな。いきなりアルバムでそういうことをやると、とっちらかっちゃうと言うか、今回は写真集のサントラというコンセプトがあったので、やりやすかったですよね。

戸川 そうね。「サントラだから、いろいろな曲が入っててもいいよね」って話になったよね。アルバムの時のビッとした感じよりは、間口が広い気がして、だったら自由な発想で、みんなで写真に曲を当ててみようぜって、そんな雰囲気もあったような気がしますね。今思えば。

――これまでやってみたかったけど、CBMDってバンドにはちょっとそぐわないからやらなかったようなことも今回はやってみた?

高本 うーん、そこまではないんですけどね。でも、踏ん切りにはなりますよね。インストを作ったことってなかったですから。インストを作ることについては、たっくんが「休んだらいいんじゃない?」ってことをさらっと言ってくれたので(笑)。

戸川 ムフフ。

高本 「インストが1曲あると休めるぜ」って言われて、あ、そうか。じゃあ、半分ぐらいインストで行きますかって(笑)。

――歌ものとインストを作る時って、神経の使いどころって違うんですか?

高本 違いましたね。それは自分でも新鮮でした。これまではメロディーに対して、展開を考えることがクセになっちゃってたんで。今回、僕は歌ものとインストを1曲ずつ作ってますけど、インストを作る時は、いかに自分の歌を無視するか、逆に歌ものを作る時は、どれだけ自分らしい歌にするかっていう正反対のことを考えてました。メロディーを弾きすぎると言うか、メロディーが展開しすぎるようなインストにはしたくなかったんです。でも、その反面、インストとは言え、自分の色は出したかった。結果、すげえ適当に作りました(笑)。ちゃちゃちゃって。あまり考えすぎるとドツボにハマると思ったんで、ま、いいかってくらいの気軽な気持ちで。

写真のテイストもあると思う。叙情的な写真を撮るんで、
そこに引き寄せられたところは少なからずある(中津川)

――曲は「せーの」で、みんなで持ち寄ったんですか? それともできた人から順々に発表していったんですか?

戸川 えっと、ライヴのスケジュールも入ってたんで、いついつまでに作らなきゃいけないよね。じゃあ、デモはこれぐらいまでに上げようって事務的なところからスタートして、その流れで、できた人からバンドで1回合わせてみようかって、そんな進み方でした。

――みんなが持ち寄ったデモを聴いて、「らしいなぁ」という曲もあれば、「お、意外」という曲もあったんじゃないですか?

高本 それがデモを聴いただけではわからなかった(笑)。デモの作り方もそれぞれなんで、デモを聴いて、曲がぱっと見えるものもあれば、正直、これどうしたらいいんだろうってものもあって、5人が曲を持ち寄るってことは、こうことになるんだっていうのが最初の印象でした(笑)。

――じゃあ、そこから曲として形にしていくのはけっこう大変だった?

戸川 つるっとスムーズに行ったやつと、そこそこアレンジしたやつ、それと大幅に変えちゃったやつがありましたけど……高本のデモは今回、かちっと最終的な曲の構成までやってあったんですけど、その他のデモはリズムとコードだけとか、曲を作る要素はすべて揃ってるんだけど、それ以外をはしょってすごくミニマムな形になってるとかいろいろだったんで、結局、1曲1曲揉みながら形にしていったって感じですね。

CHUN2 でも、トータルでそんなに時間はかからなかったですよ。俺の印象では、何これ?ってデモは一つもなくて、どれも作ってきた人間のバックグラウンドが見えるようなものだったんでけっこうすんなりと……。

高本 いや、あったよ(笑)。

CHUN2 あった?

(全員 爆笑)

CHUN2 ああ、一人ね。一人いたんですけど。

高本 でも、それも含めて楽しい作業でしたね。

戸川 そうだな、俺の印象だと、コード進行(をつけること)とかアレンジとかに関しては、高本がけっこうサクサクとやってくれたんでね、ある程度できあがったところで、バンドでバンッと合わせたら、「お、もうできちゃいそう」ってことが多かったんじゃないかな。「みんなの曲を作ろう」って意識が『OUTTA HERE』を作った時に培ったことやその後のツアーを経て、以前とはまた変わってたと言うか、そのへんの潔さもあって、スムーズにいったところが意外にあったと思います。

高本 そうですね。そこはだから初めての試みがうまくできたっていうのは、僕が今まで曲の原案を持っていってたけど、いつもみんなに投げてるんで、逆に考えれば、みんなが持ってきたアイディアを、自分が持ってきたものと考えて、いつもと同じようにディレクションだけすれば、あとはみんな勝手にやるだろうって最初からなんとなくわかってたんですよ。だから、なるべくその役目をやるべきなのかなって作ってる時は意識してました。君の曲だから君が全部やってくださいではなく、それが自分の曲だったらどうするか考えて、「こうしたほうがいいかもしれないね」って。で、「じゃあ、こういうのは?」ってなったら、「いいんじゃない。いいんじゃない」ってあとは任せてしまう。そうやってみんながガッと乗ってきたら、みんなの世界観がギュッと入る。そういうところは、これまでと一緒ですよ。

――新作を聴かせてもらって思ったのは、『OUTTA HERE』の後のツアーの写真に対する曲にもかかわらず、ほとんどの曲が切ないと言うか、物寂しい雰囲気というところがおもしろいですね。『BACK IN THE SUMMER』というタイトルからも過ぎ去った夏を惜しむような気持ちが窺えますよね?

高本 まぁ、(ツアーが)終わってから作ったから(笑)。

(全員 爆笑)

高本 ツアー中に作ってたら、もっとオラオラオラって曲になってたかもしれないけど、やっぱり終わってから作ったからだと思います。

戸川 振り返った感じだね。

高本 それが理由じゃないですか。

中津川 それと、彼の写真のテイストもあると思うんですよ。叙情的な写真を撮るんで、そこに引き寄せられたところは少なからずあると思います。

――完成した6曲を改めて聴いてみて、どうですか?

高本 おもしろいですよ。さらっと全曲聴けるし。聴いてくれる人は、なんかまたわからない状態になってると思うかもしれないけど、僕らの中では辻褄が合ってるんで、それほど、これまでと違うことをやってる感じはしない。そこが厄介ですよね。でも、僕らのことを好きな人達は、そういうところも楽しんでくれるんじゃないかなってちょっと思ってて。写真集ってフォーマットも含めてね。みんなの思い出の品みたいなものになったらいいですね。

――ツアーの写真が元にはなっているんですけど、曲のタイトルからはまた別の一つのストーリーがあるようにも感じられますね。

CHUN2 鋭いな。

――「WEEKEND」で始まるじゃないですか。で、最後の「EARLY MORNING」は週末を、義理の兄弟に会ったり、クルージングしたりしながら海で過ごしたあと、日常の生活に戻る月曜日の朝の寂しさを表しているんじゃないのかなって。

CHUN2 深読みしすぎですよ!(笑) あ、でも、そういうつながりもあるのか。

戸川 そこまでは打ち出してないと思いますけど。

中津川 偶然そうなっただけで。

戸川 でも、そういうふうに想像してもらえると、うれしいですけどね。そういう楽しみ方もいいのかなって。

――じゃあ、何か一つのストーリーがあるわけではない?

高本 ないです(笑)。歌詞は僕が書いているんで、それぞれの曲の歌詞にはストーリーはありますけどね。ただ、タイトルは曲を作った人が決めたので、それぞれの中でのツアーのストーリーがそんなふうに要約されたんでしょうね。まぁ、「STEP BROTHERS」のどこがツアーと関係あるのかはわからないですけど(笑)。でも、そうなんだと思います。

CBMDに入る前からCBMDの曲を聴いていたファン的な視点から、
今までにない曲を作りたかった(戸川)

――今回、『OUTTA HERE』のアコースティック・ギターの音色を押し出した温もりのあるバンド・サウンドとはまた違うサウンドになっていると思うんですけど、レコーディングではどんなことを意識したんですか?

高本 これは僕個人かもしれないですけど、今回一緒にやったのが、かなり信頼しているエンジニアさんだったんですね。『OUTTA HERE』を作るためにニューヨークに行く前に一緒に作品を作ってた人で、彼が「アメリカに行け」って言ったんですよ。「行ったらいいんだよ。君らみたいなバンドは」って。で、アメリカに行って、自分達なりにわかったこともありつつ戻ってきてからのやり取りだったので、けっこうムチャなことも言ったと思うんですけど、汲みとってくれて。個人的なことを言えば、決まりきったレコーディングのやり方を一度打破してみたかったと言うか、それは機材がどうのこうのということではなくて、僕、毎度言ってますけど、シンガー・ソングライターとかプリミティヴな音楽とか好きなので、そういう雰囲気もこのバンドに混ぜたくて、それにはどうしたらいいかなって考えて、今までだったら、「弾きます!」みたいな感じで、構えてギターを弾いてましたけど、今回はできるかぎり家にいる時みたいな姿勢で弾きましたし、歌も座ってレコーディングしました。そのほうがいいって、エンジニアさんに相談したら言われたんですよ。曲の元になった景色を思い浮かべると言うか、もちろんうまく歌おうとは思うんですけど、写真集につける曲なんだから景色が見えないのはどうなんだろうって話にもなって、そこが一番大事なんじゃないかって。僕が座って歌ってるとき、エンジニアはずっと外を見ているって、かなり変わったレコーディングでした。「ああ、今のいいね」って全然こっちを見てない(笑)。いい感じに小さな畑が見えるんですよ、スタジオから。そこばっか見てましたね。そういう意味で、レコーディングにはこだわりました。

――ああ、だからなのかな。ヴォーカルの感じがこれまでとはちょっと違いますよね。

高本 あ、そうですか。

――今回は、全体的にこういうサウンドでみたいなものはなかったんですか?

戸川 最初はあったんだよね。もうちょっとかねよ食堂で演奏できるような曲を増やそうかって高本が言ったんだけど、蓋を開けてみたら、そうはならなかった。

CHUN2 かねよ食堂で、去年、メチャメチャ怒られたんですよ(苦笑)。近所の家から10軒ぐらい、「音がデカい」「やめさせろ」って言われて。でも、まだかねよ食堂でやりたいんで、本当は、そういうロケーションでできる音楽を作りたかったんですよ。

――ああ、かねよ食堂でできるような曲っていうのは、そういう意味で。

高本 結果、そうはならなかったんですけどね(笑)。

CHUN2 うん、まあね(苦笑)。

高本 たっくんなんて(自分の曲で)ファズ使ってますから(笑)。

CHUN2 バカファズ(笑)。

戸川 ツアーが終わったあともライヴがいくつかあったから、その間の出来事とかハプニングとか、今回の曲は基本、写真ありきではあるんですけど、そこにプラス、僕の場合はそういう記憶に新しいことからの影響も入ってるんで。

高本 そういうところはホント、たっくんって自分の世界観が相当あるんですよ。今回も自分の曲に関しては、彼なりにかなりディレクションしてて、僕は僕で他のみんなの曲と同じように、「こうしたほうがいいんじゃない?」って提案してみるんですけど、頑なにノーって(笑)。もちろん、それはいいねって受け入れてくれるところもあるんですけどね。たっくんが持ってきた原曲を聴いたとき、強烈な世界観を感じて、とてもおもしろいと思ったんですよ。それで、これはやりたいと思ったんですけど、ヴォーカルのキーが低かった(笑)。デモだから、仮のキーなのかなと思ったら仮じゃないんですよ。「一番低いEで始めてくれ」ってオファーだったんです。

戸川 CBMDに入る前からCBMDの曲をしょっちゅう聴いていたというファン的な視点から、今までにない曲を作りたかったんですよ。それで、曲はロック調なんだけど、そんなにシャウトしない感じでと考えて、敢えてキーを低めにして、これまでとは違う声の出し方をしてほしいというオファーをしたんですよ。

高本 歌は丸投げします。ただしキーは決まってますっていう(笑)。すげえ難しいオファーをしてきたなって。

戸川 高本もいつも俺にベース・ライン投げるな。じゃあ、デモには歌を一応入れたけど、投げるわって。

高本 僕がもうちょっとボブ・ドロウ(※50年代~活躍しているジャズ・シンガー/ピアニスト)みたいなジャジーな雰囲気を入れたいと思ってるんだよねって言ったら、あっさりノーって。

高本 「もっとロックです」って。もっとロックかぁ。「でも、なんかさ」っていろいろ言い方を変えて、相談してみたんですけど、ノー、ノーって。

CHUN2 ノーははっきり言う(笑)。でも、どこまで考えてノーって言ってるのか疑問でしたけどね。答えがないのにダメ出しだけしてるんじゃないかって俺は疑ってましたよ(笑)。

高本 ノーって言われて1日ぐらいテンパりましたよ。でも、それも楽しかったですけどね。

――今回のレコーディングを通して、バンドとして、プレイヤーとして表現の幅が広がったんじゃないですか?

CHUN2 うん、それは。

高本 楽しいですよね。みんなのアイディアが入ってたほうが。自分が思いつかないこともやってくれるし。だから、今回は写真集のサントラというコンセプトがあったので、特別なフォーマットになってますけど、これをアルバムに向けて、足並みと世界観を揃えて、みんなで作っていったらもっとおもしろいだろうなと思うんですよ。

――それは作り方に関してであって、今回の曲調や音がCBMDの新しいスタンダードになるわけじゃないですよね?

高本 なるわけじゃないと思います。たぶん、これがきっかけで……うーんと、リリース前に言うことじゃないかもしれないけど、バンドにとって何かのきっかけになる作品ってあると思うんですけど、今回の作品を作ったからこそ、新たにできるってこともあると思うし、単純にアルバムはもっとバンド・サウンドで行きたいし、歌も歌いたいし。ただ、今回、やったことって一人ではなくバンドでやりたかったことだから、それができてよかった。今回、全員が曲を持ち寄ったことで、みんなの感じはわかったんで、作品としてみんなの世界観をもうちょっと1枚のものに向けるって作業を今度はしてみたい。曲は全曲、違う人が作ってるけど、統一感のある作品を作って、そこに、どれだけみんなが寄れるかってことをやってみたいです。

――いや、ホントに『BACK IN THE SUMMER』がまだリリースされてもいないうちから、こんなことを言うのはどうかと思うんですけど、でも、次のアルバムも割と早いペースでできちゃうんじゃないですか? 

高本 作りたいですね。僕らまだ、燃え尽きてはないです(笑)。

インタビュー@山口 智男

Vol3.へ続く

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