連続インタビューの第3回目は今回のPHOTO BOOKの写真を撮った写真家、山川哲矢を迎え、メンバーと一緒に今回のPHOTO BOOKにまつわるあれこれを語ってもらった。多くの日本人バンドを撮っている新進気鋭の写真家と唯一無二のバンドの座談会――と銘打つには、ややざっくばらんな内容からは、両者の飾らない関係が窺える。

かわいい坊やが来たなって思ってたら、けっこうがめつい男で(笑)(CHUN2)

――CBMDと山川さんの出会いは?

山川 いろいろなところで、ちょくちょく顔を合わせていて。Niw! Recordsのバンドをよく撮らせてもらってたんですけど、CBMDがけっこう対バンで出ることがあったんです。野音(日比谷野外大音楽堂)でやったKAKUBARHYTHMのイベントとか、FRONTIER BACKYARDと地方に行った時とかもCBMDが対バンで、その時は挨拶しただけだったんですけど、高本さんがビールをこぼしたんですよ(笑)。それは今でも覚えてますね。CBMDのライヴを初めて撮ったのは、恵比寿のLIQUIDROOMでRIDDIM SAUNTERとTHE BAWDIESと一緒にやった時。それからちょくちょくライヴを撮らせてもらってます。

――最初はバンドからのオファーだったんですか?

山川 いや、自分から撮らせてくださいってお願いしました。ずっと撮りたいと思ってたんですけど、近寄りがたい存在だった(笑)。怖い先輩って感じだったんです。それまで接点もなかったから、ほとんど喋ったこともなかったので。喋らないと、やっぱりちょっと怖い雰囲気があるじゃないですか。

CHUN2 怖くはないでしょ。

――CBMDを初めて撮ったのが…。

山川 2、3年前。

高本 3年前ですね。僕、はっきりと覚えてるんですけど、初めて彼とちゃんと喋ったとき、お酒が飲めないって言うから、「カメラマンなのにお酒が飲めないってどういうことなの?!」って言ったら、ちょっと怒ったのか何も言わずに、ものすごい勢いでお酒を飲みはじめて、それからあっという間に陽気になって寝るところまで行っちゃったんですよ。それで、えらいおもしろい子がやって来たなって(笑)。

CHUN2 俺もかわいい坊やが来たなって思って。でも、そう思ってたら、けっこうがめつい男で(笑)。

(全員 爆笑)

CHUN2 そのアンバランスさがよかったんですよ。

――がめついっていうのは、写真を撮ることに対して熱心とか貪欲とかってことですよね?

CHUN2 そう。気がついたらバンドのホームページのトップに写真が上がってて、あ、これいいなって思ったら、ヤマテツの写真だったんです。

山川 それが初めて撮った時の写真で。

中津川 LIQUIDROOMのね。

――最初、撮らせてくださいってオファーした時は、どういうシチュエーションだったんですか? 直接、面と向かってお願いしたんですか?

山川 そうですね、高本さんに。吾郎さんもいましたっけ?

中津川 ヤマテツが元々撮ってたバンドと僕らが一緒にやるとき、「CBMDも一緒に撮らせてもらってもいいですか?」って。僕らも基本的にそういうのはウェルカムなんで、じゃあ、お願いしますって。その後の僕の印象としては、その2日後ぐらいに写真が届いたんですよ。彼からメールで。すごく早いな。しっかりしてる子だなってそういう第一印象がありました。それで、来られる時は、ぜひ撮りにきてほしいと逆に僕らからもお願いして。それまで僕ら、誰か専属で写真を撮ってもらったことってほとんどなかったんですけど、彼の場合、人柄もよかったので、ぜひと思ったんです。

――人柄っていうのは熱心さってこと?

中津川 それもあるし、ほんわかした中にも断固とした信念が感じられたんですよ。

高本 僕らみたいなバンドって、そういう人じゃないとうまくやれないんじゃないかな。たぶん、すごく言うことを聞いてくれたり、すごく機敏に動いてくれたりしたとしても、その人が持ってるCBMDのイメージを表現してくれる人じゃないと一緒にできないと思うんですよ。あとまぁ、そういう人と一緒にいたいというのもあって。その人が無名でも有名でも関係なくて、そういう人達と一緒に音楽にまつわる何かをずっとやっていくっていうのが僕達らしいし、それが楽しいなと思ってて。彼はまさにそういうタイプだったんですね。ただ、そういうタイプだったんですけど、まぁ、初めはそれを出さない出さない(笑)。長い物に巻かれた感をすごく出してましたね。

CHUN2 怖かったんだよな。

高本 「僕なんて…」とか「誰々のアシスタントで、ペーペーで」とかみたいな感じで、最初入ってくるから、なんだよ、つまらないなって思ってたら、写真が全然そうじゃないっていう(笑)。

CHUN2 自分を持ってるんですよね。

高本 主張のしかたって言うか、意地の張り方が僕らに近いって言うか。

――ああ。

高本 そういうところがよかったですね。「いや」とか「でも」とかってけっこう言うんですよ、会話の端々で。「そうですね」で会話が終わらない。「いや、俺はこっちのほうが」みたいなことをサラリと言ってくる。そういうところが好きですね。

――そういう部分がつきあいの中で徐々に出てきたわけですね。

高本 DVD(『KEEP THE FLAME』)を作った時と一緒で、それを100でやってみないか? 僕らも気にしないからって。ヤマテツも気にせずに好きなようにやれたら、僕らが思ってたのとはまた違うCBMDが表現できるんじゃないのかなって思ったんで、今回はそれをやりたかったんですよ。

COMEBACK MY DAUGHTERSのツアーだとは言っても、
僕らにだけカメラを向けているわけではない。それがよかった(高本)

――山川さんはそもそも、なぜCBMDの写真を撮りたいと思ったんですか?

山川 バンドとして単純に好きだったんですよ。でも、やっぱりメンバーの人柄が大きいと思うんですけど、最初は近寄りがたいと言うか、先輩っぽい雰囲気だったので、こっちもちょっと遠慮してたし、あまり馴れ馴れしくできない雰囲気もあって。でも、ライヴの打ち上げで話す機会があって、喋ってみたらすごくおもしろい人達だなって。その時は高本さんとCHUN2さんと喋ったんですけど、高本さんに「おまえ俺のこと嫌いだろ」って言われて(笑)。

(全員 爆笑)

高本 そんなこと言ったっけ?(笑)

山川 そんなことないですって(笑)。

CHUN2 恥ずかしいよ、おまえ。

高本 それからはもう1月に2回ぐらい赤ワインを飲む仲になって(笑)

――赤ワインを(笑)。

山川 気がついたら信頼関係って言うか、そういうのができてる気がして、遠慮しなくていいんだな。ちゃんと自分を出して、そこで写真を撮っても大丈夫なんだなって思いました。実は、そういう人達ってそんなに多くなくて。仕事としてではなくて、一緒にいたいと思ったことがCBMDを撮りたいと思ったきっかけでしたね。

――じゃあ、去年、『OUTTA HERE』のリリース後、ツアーに一緒に行こうと誘われた時も即OKだった?

山川 そうですね。と言うか、自分から言ったんですよ。去年の5月、6月に仙台と盛岡に一緒に行ったんですけど、それぐらいの時期に……『OUTTA HERE』が出る前だったんですけど、RIDDIM SAUNTERの機材車の中で、みんなで聴きながら、新作すごくいいなと思って。で、ライヴを見たら、あ、これは本当にすごい。何かが変わるって言うか、何かが起きるような気がして、今度のCBMDのツアーは写真で残したほうがいいんじゃないかって思ったんです。

高本 おまえ、ぼそぼそぼそぼそちゃんとしたこと言うな(笑)。

CHUN2 ホントだよ。

山川 それができるならやってみたいと思って、それで仙台と盛岡に行ったタイミングで吾郎さんに「行きたいんですけど」って相談して。

中津川 ぜひぜひって(笑)。

CHUN2 それでツアーに連れていったんですけど、こいつツアー中、車の中では寝てばかりで(笑)。それ以外はずっと写真を撮ってるし、全然うちらと遊んでくれなかったんですよ。でも、夜すごくおもしろいんですよ。

――おもしろい? えっと、それはどんなふうに?(笑)

CHUN2 夜ってやっぱりちょっと危ないじゃないですか?

――危ない?

戸川 ノー・プランじゃない?(笑)

高本 いや、大体ノー・プランだから。

CHUN2 危ない奴が出てくるじゃないですか。そいつらを検挙する警察を作ったんです。僕らで。

戸川 何て言う警察?

CHUN2 アカン警察って言うんですけど(笑)。

(全員 爆笑)

CHUN2 それの山川刑事(デカ)の取調べがハンパないんですよ(笑)。若いだけあって血の気が多いから。でも、そのバイオレントな部分が俺好きで(笑)。あと、ヒゲの濃さが好きで(笑)。

(全員 爆笑)

戸川 そこ?!

CHUN2 ホント、一緒に回れてよかったです。

戸川 出会った時はつるっとしてたんですよ。かわいらしい顔だったんですけど、それがいつの間にかヒゲなんかはやして、悪くなりはじめのラテン・ギャングみたいになっちゃった(笑)。

CHUN2 『カラーズ』って映画みたいになっちゃって、意外に貫禄出てきちゃったんですよ(笑)。

(全員 爆笑)

CHUN2 いい感じに育ってきてるなって(笑)。でも、ツアーは本当におもしろかったですね。部屋飲み事件とかね。言えないことばかりで、ホント、取り締まっていかなきゃいけないんですよ(笑)。

高本 一緒に、わーわー騒げると言うか、CHUN2が言ってるのは、夜の打ち上げのことなんですけど(笑)、打ち上げで羽目外したらそうやって検挙もして、一緒に遊んだりもできるし、そうかと思えば、一人で迷子になって、何やってるのかと思ったら、写真を撮ってたりするんですね。迷子になった状況をポジティヴに考えてる。ホントにナチュラルでよかったですね。たまに思いましたもん、こいつ何しに来てんだっけって(笑)。でも、写真を撮ることがすごい好きだから、僕らが見えないところでもずっと撮ってたみたいで、写真を渡されたとき、けっこうびっくりしました。「これどこ?!」「酔っ払って、トイレがどこかわからなかったとき、いいなと思って撮ったんですよ」って、そういう写真がけっこうあって。CBMDのツアーだとは言っても、僕らにだけカメラを向けているわけではなくて、ツアーに参加している一人のメンバーとしての視点の写真も撮っているところがよかったです。(『KEEP THE FLAME』を撮った)MINORxUもそうだったけど、そういう人って僕らが思ってもいないような何かをプラスしてくれるから、そういう人と一緒にいるのは楽しいですよね。

――ツアーに行く前にこんな写真が撮りたい、こんな姿を撮りたいっていう撮影プランはあったんですか?

山川 特に考えてはなかったです。最初、1、2ヶ所ぐらい撮ったとき、撮った写真を見てみたんですけど、その時、計画を立ててやるとおもしろくなくなっちゃう。想像できないことが起きなくなっちゃうだろうって思って、だったら毎回、思うとおりに撮ってみて、最後の段階で、組み立てる方法がいいだろうって考えたんですよ。

COMEBACK MY DAUGHTERSは記録に残したいバンド。
だから撮りつづけたい(山川)

――メンバーが5人いて、撮りやすい人と、どちらかと言うと、撮りづらいっていう人っているんですか?

山川 撮りやすいのは、高本さん。

――どんなところが?

山川 何考えているかわかりやすい。

(全員 爆笑)

高本 最高だね(苦笑)。

山川 逆に撮りづらいのは、祐亮さん。

小坂 俺か(笑)。

――それは…。

山川 何考えてるかわからない(笑)。

(全員 爆笑)

小坂 まぁ、そうなんでしょうね。でも、気づいたら撮られてて、それはすげえよかったです。

CHUN2 こいつ撮られるの好きなんですよ。

小坂 それはそうですね。

中津川 なおかつ写真栄えもいいんです。

――カメラマンがついてきているって感じはあまりなかったんじゃないですか?

高本 そうですね。それは一番重要なことだと思います。仲のいい、気の合う友達をもう一人一緒に連れていったって感じでしたね。

――メンバー的には無防備な姿も撮られているのでは?

高本 撮られてるんでしょうね。でも、使わせないですけどね(笑)。 

山川 でも、メンバーが無防備な時は僕も無防備なんで。

高本 そうだね。

山川 撮れてない(笑)。

CHUN2 そういう意味でも、ヤマテツは本当に図太いですよ(笑)。

――写真集にまとめた写真の数々を改めて見たとき、どんなことを感じましたか?

山川 寂しくなりました。記録的なものにしたいと考えて、写真に感情が入り過ぎて、写真を見る人がそれにひきずられないようにしようとは思ってたんですけど、でも、やっぱり地が出ると言うか、バンドと一緒にツアーしている時の移動中の風景を見ていると、同じ時間を過ごしてたことを思い出して、寂しい気持ちになるんですよ。

――中津川さんも山川さんの写真はすごく叙情的だと言ってましたね。

山川 思い返してみると、ツアーが始まってすごく楽しい反面、いつか終わるんだなって、ふとした瞬間に思うと、寂しかったですね。

――今回、写真を元にメンバーが作った曲は聴きました?

山川 もちろん。こういう曲になるんだってびっくりしました。こういうふうに写真を見てくれたんだって思うと、すごくうれしかったです。こういう作品を一緒に作れたことはもちろん、同じ時間を共有できたことがうれしかったです。

――メンバーそれぞれにお気に入りの写真なんてあるんですか?

高本 けっこうありますよ。基本的にライヴの風景の切りとり方が好きで、被写体がどこなのかぼかしてると言うか、ヤマテツの写真って写真全体を見て、その写真をジャッジするようなものが多いんですよ。ヤマテツがそう思っているかどうかわからないけど、そういうところが音楽を作ることと似てるなって。ここを目立たせたいみたいな感じで、誰しもやろうとすると思うんですけど、やっぱり全体だと思うんですよ。全体の世界観がどうあるかが一番重要だって物作りするとき、僕は思うんですけど、同じことをヤマテツの写真からはすごく感じますね。

CHUN2 フィルムで撮っているからっていうのもあるんですけど、ざらついた感じが俺達の音楽と近いのかな。今回の音源もそんな感じで、アナログ感って言うか、その感じが好きですね。

――あ、デジタルじゃないんですね。

山川 ええ、モノクロのフィルムで撮りました。

CHUN2 その雰囲気はすごく独特でいいですよ。

――モノクロのフィルムを使ったのはどんな狙いで?

山川 元々、フィルムで作品を作ることが多くて、ライヴも仕事以外で撮る時はできるだけフィルムを使ってるんですけど、今回は特にカラーで撮ると、時代が写っちゃうような気がしたんです。

――ああ、時代が写る。

山川 残したいという気持ちが強かったんです。10年後でも見られる作品にしたかったので、それにはモノクロのフィルムで撮るほうがいい。CDの雰囲気にも合うんじゃないかって考えました。

――全体で何枚ぐらい撮ったんですか?

山川 36枚撮りで1回の土日のライヴで20本ぐらい。だから、全体で100本ぐらい。でも、デジカメで撮ることを考えると、枚数はそんなに多くないと思います。

――そこから…。

山川 128枚選びました。

――選ぶのは大変だったんじゃないですか?

山川 それが意外に大変ではなくて。普段からそんなに悩まないんですよ。撮りながら、この日はこれだって思ったことをけっこう覚えてるんですよね。

――ああ、撮りながらね。

山川 撮っているとき、楽しい瞬間って覚えてるんで、案外悩まないですね。たまに思わぬ写真が出てきて、意外にこれいいなって。そういのってたいてい一人でさまよっているとき、撮った写真で(笑)。今回、CDのジャケットに使われている写真も、かねよ食堂のライヴで、酔っ払いすぎてトイレに行こうと思って迷った時に撮った夜の海の写真なんですよ(笑)。

――またこういう機会があったら、CBMDと一緒にやってみたいってことってありますか?

山川 何かやりたいと言うよりは、撮りつづけたいですね。CBMDがどうなっていくのかやっぱり気になるので。今回は写真集を作ることになりましたけど、そういう結果のために撮ってるわけではなくて、ただ一緒にいたいと言うか、一緒にごはん食べたりお酒飲んだりしたいから撮ってるようなところもあるんで。あ、写真展はやりたいですけど。

――なんで一緒にいたいんでしょう?

高本 太字にしようとしてるでしょ?

山川 あ、決めっぽいことを言ったほうがいいですか?

高本 なんでおまえが気にするんだよ、そこ(笑)。

――単純に楽しいのか、落ち着けるのか、それとも刺激的なのか理由はいろいろあると思うんですけど。

山川 もちろん、写真を撮ることでもらってるものも当然あるんですけど、写真に残したいと言うか、記録に残したいバンドだからかな。おこがましいかもしれないですけど、残すのであれば、他の誰かではなく、自分がやるべきバンドなんじゃないかなって。割と最近からのつきあいなので、昔の話はわからないですけど、今のCBMDは自分の感覚に近いバンドなんですよね。

インタビュー@山口 智男

Vol4.へ続く

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