バンドの成熟と新たな始まりを印象づけた前作『OUTTA HERE』からわずか1年2ヶ月という早いペースでCOMEBACK MY DAUGHTERSが新作『BACK IN THE SUMMER』をリリースする。その新作は前作発表後、彼らが行った“Edacious cheers Tour”に同行した写真家、山川哲矢がツアー中のメンバー達の姿を撮影した写真の数々からインスピレーションを受け、彼らが書き下ろしたインストを含む全6曲を収録した異色作(PHOTO BOOK+CDの完全限定生産盤とCDのみの通常盤の2種類がリリースされる)。連続インタビューの第1回目は『BACK IN THE SUMMER』が写真集とそのサウンドトラックと言える作品になったいきさつを、“Edacious cheers Tour”を振り返ってもらいながら聞いてみた。

『OUTTA HERE』では燃え尽きなかった。
作ったあともやりたいことがまだまだ溢れていた(高本)

――『BACK IN THE SUMMER』。予想もしていなかったと言うか、これまでの作品とかなり趣の違う作品になっていて、びっくりしました。

高本和英(Vo&G) そうですよね(笑)。

――どうしてそういう作品になったのか、そのへんは追々聞かせてもらうとして、前作の『OUTTA HERE』からわずか1年2ヶ月って、『EXPerience』と『OUTTA HERE』の間が3年ちょっと空いていたことを考えると、かなり早いですよね?

高本 早いですね、我々にしては。でも、『OUTTA HERE』の時のインタビューで言ったと思うんですけど、「次はやりますよ」って。

戸川琢磨(B&Vo) 覚えてないよ(笑)。

高本 言った気がするんですよね。「次の作品、もう作ろうかな」って。

――そうでしたっけ?(笑)

高本 作品を作ったあとは、割とわーっとなっちゃうんですけど、『OUTTA HERE』の時は、作ったあともやりたいことがまだまだ溢れていたんですよね。実際には、そんなにすぐには作りはじめることはできなくて、ここまでかかっちゃいましたけど、作品を作りたいって意欲は残ってて。

――『EXPerience』の時は、アルバムを作ってその後のツアーで燃え尽きたって。

高本 そうですね。あんまりやる気にはならなかったですね(笑)。

(全員 爆笑)

――それが『OUTTA HERE』では燃え尽きはしなかった、と。

高本 燃え尽きなかったですね。その後のツアー(“Edacious cheers Tour”)も良かったっていうのもあるんですけど、やっぱりやりたいことに溢れてたっていうのが大きいのかな。

――やりたいことが溢れていたっていうのは、こんなことがやりたい、あんなこともやりたいっていう具体的なアイディアが溢れていたってことですか?

高本 そうですね。アルバムって全体的なバランスも考えるし、その時のモードを閉じこめるんですね、僕らは。でも、アルバムには合わないけど、こういうこともやりたいとか、ああいうこともやりたいとかっていうアイディアもけっこうあったんですよ。そういうアルバムには入らないアイディアを、これまでは時間がなかったり、実力がなかったりという理由で形にすることができなかったんですけど、いつかちゃんと時間をかけて、形にしたいと思っていて、そういう思いが今回の作品を作るきっかけになったとは思います。結局、最初やりたいと思ってたような作品にはならなかったんですけど、そういうことをやってみようというきっかけにはなりました。

――やりたいと思っていた作品とはちょっと違うものになった?

高本 ええ、その時やりたいと思ってたものとは。

――その時は、どんなことをやりたいと思っていたんですか?

高本 『OUTTA HERE』ではアコースティック・ギターをけっこう使ってたじゃないですか。でも、それはやっぱりバンドのグルーヴありきでのアコースティック・ギターだったので、もっとアコースティック・ギターにスポットを当てた曲をやってみたいって。爪弾きの曲もそうですし、もっとおとなしい曲もやってみたいと思ってました。

ヤマテツには写真集を出したいという意欲があって、
うちらには音源を作りたいという意欲があった(CHUN2)

――でも、今回の作品は、そういう発想の延長にあるんじゃないですか。もちろん、CBMDらしい作品ではあるし、今までと全然違うというわけではないんですけど、それでもこれまでとは趣がずいぶん違うのは、やはり写真集のサウンドトラックということが大きい?

高本 うん、それはあると思います。

――ツアーにカメラマンさんを連れていこうっていうのは、どんなところからの発想だったんですか?

高本 彼の写真がすごくいいっていうのがまずあるんですけど、『EXPerience』の時は映像ができるMINORxUって奴を連れていって、彼が撮った映像を作品(DVD『KEEP THE FLAME / EXPerience TOUR FINAL』)にしたんですけど、何かそういうのが好きなんですよ。海外のアーティストってそうじゃないですか。映像を撮る人だったり、写真を撮る人だったりを、音楽からそんなに遠くに置かないと言うか、バンドはバンド、写真家は写真家、映像作家は映像作家と別々に考えるのではなく、もうちょっとビートルズ的な、チームで何かを作ることにとても興味があって。人の才能に興味があるんです。そういうのがきっかけだったと思います。

CHUN2(G) 言いだしっぺは吾郎ちゃんだったんじゃない? 今度のツアーはカメラマンを連れていって、そこで撮ってもらった写真をツアーのドキュメンタリー的な写真集にしたいって話が、ツアーが始まる前にたぶん吾郎ちゃんから出てきたんだよね。

中津川吾郎(Dr) 厳密に言うと、ツアー中なんですけど、ヤマテツ(山川哲矢)にはずっと僕らのライヴの写真を撮ってもらっていて、僕らも彼の写真が好きなので、何か作品に残したいと思ったんですね。『OUTTA HERE』のツアーでも撮ってもらってたんですけど、撮ってもらった写真を、ツアーの初日から何回かライヴをやっている間に見せてもらう中で、彼の写真集を作らないかって僕が提案したら、みんなから「おもしろいね。でも、写真集を出すなら音源もあったほうがいいんじゃないか」ってアイディアが出てきて……。

CHUN2 前々からサントラを作ってみたいっていうのがあったんですよ。

中津川 やっぱり僕ら、90年代の音楽に影響を受けてるので。あの時代のバンドも本が出てるじゃないですか、フガジとかウィルコとか。それで“BOOK”というフォーマットで何かリリースしたいというのはずっとあったんですけど、それに彼の写真がすごくフィットしたんですよ。ただ、今までの僕らだったら音源が間に合わないんじゃないかってことになってたかもしれないけど、ちょうどツアーも終わってすごくコンディションも良かったので、そのまま曲を作りはじめて。写真集をリリースするタイミングに音を間に合わせたこともあって、リリースのペースが早かったというのもあると思います。

CHUN2 ヤマテツすごくやる気があるんですよ。ガッツ系の男なので(笑)。彼には写真集を出したいという意欲があって、うちらには音源を作りたいという意欲があった。お互いのやりたいことが一致してこういう形になりました。

高本 みんな、やる気に満ちてましたね。ただ、さっきアーティストっぽいことを言いましたけど、実際、ヤマテツからこういう写真集にしたいというラフの写真が送られてくるまで、俺、全く何も浮かばなかったです、曲が(笑)。やることは決まってたけど、写真をもらうまでは何も浮かばなかった(笑)。でも、まぁ、それぐらい写真に合わせた曲を作りたいなとは思ってたんですけどね。写真のラフを……ホチキスで止めてきたラフをもらった時に、ああ、ライヴの写真集というよりは旅の本だなって。そういうイメージがあって、主にこれ移動だなって思ったんですよね(笑)。

――移動ですか?

高本 ええ。僕はそんな感じがしたんです。ライヴの写真なんですけど、被写体が僕らなのか、お客さんなのか、そのライヴの会場の空気なのか、いい意味でわからないような写真を撮るんで、写真を見たとき、曲のイメージはしやすかった。実際、自分らのライヴの写真を見ながら曲を作るなんてこと、普通はできないと思うんですけど、彼の写真はそれができたんですよね。

『OUTTA HERE』のツアーは1本1本、
ロールプレイングゲームでレベル上げしていってるみたいでした(戸川)

――話の順序が逆になっちゃいましたけど、『OUTTA HERE』のツアー(“Edacious cheers Tour”)のことを振り返ってもらってもいいですか?

戸川 だとしたら、かねよ食堂からの流れかな。毎年夏に横須賀の走水海岸にあるカネヨ食堂でイベントをやってるんですけど、その時(2011年8月20日)、たぶんバンドとして初めてだったんじゃないかな。『OUTTA HERE』を1曲目から最後まで曲順通りに演奏したんですよ。そこから前回のツアーは基本、ワンマンで回ったんですけど、ふだんは対バンがいることがほとんどだから、ワンマンで回ることで発見や見つめなおすことも多かったし、自分達なりのルーティーンを組むこともできて、次のライヴ、次のライヴと1本1本改善していけたことは大きかったですね。例えが適切かどうかわからないですけど、ロールプレイングゲームでレベル上げしていってるみたいでした(笑)。

CHUN2 確かに自分達を見つめなおすいい機会になりましたね。

――じゃあツアー中はけっこう生真面目にやっていたんですか?

戸川 僕は真面目にやってました。

CHUN2 僕らはあまり変わらないですね(笑)。

小坂裕亮(K) そうですね(笑)。

戸川 僕はいつも真面目です(笑)。

高本 その時その時、自分達が好きなこととかやりたいこととかを出しているんですけど、正直、それがベストかどうかわからないんですよ。自分達は自信があって、作品も作ってますけど、それが世の中的にも、僕らを選んでくれてるリスナー的にもベストな形でできているかはわからない……と言うか、そんなに気にしたいことはないんですね。いつも自分達主体でやっちゃってるんで。それの辻褄が合わないツアーもありそうだなって、いつもちょっと思ってて。ひょっとしたら、こっちの興奮と向こうのテンションが合わないこともあるんじゃないか。「全然望まれてないじゃん、この形」っていうのがあるかもしれないって不安は、どこかにあるんですよ。いつも好きなことをやってるから。ただ、前回は……前回もですけど、みんなに温かく受け入れてもらって、お陰でいつも通りできたんですね。ただ、もしかしたらいつも通りにならない可能性もあったのかなって、今、振り返ってみると、そんな気もします。すげえ棒立ちで見られて、すげえへこむ可能性もあったなっていうのはありますね。

――あぁ。

高本 ただ、そう思いながらもいつも通り演奏するのがベストだろうなって、また思えたので、自分達にとって、すごく必要だと思えるアルバムを自分達は作ったんだし、その後のツアーも必要だったんだという気はしますね。そのお陰でバンド内の状況もよくなりましたしね。

――10月1日にキネマ倶楽部でやったツアー・ファイナルもいつも以上にハジけてましたよね?

高本 そういう形になっていくのがツアーなのかな。『OUTTA HERE』を作っている時は今までと比べて、ちょっとクールな温度だったよね、音楽的には。

CHUN2 うん。

高本 それでもやっぱりああいうライヴになっちゃうところがいいなって思いました(笑)。

CHUN2 今までだと、気持ちが入りすぎたり、力が入りすぎちゃったりしてたんですけど、前回のツアーはけっこう、どこも自然にできたと言うか、何か、いつもの5人の感じでした。『OUTTA HERE』の時のインタビューで、たっくん(戸川)が「5人の面が見えるようなアルバム」って言ってたんだけど、ライヴでもそれが、いつものみんなの感じが自然に出てて。それを出せるようになってきたと言うか、あまり力まずに、いつも通りに音楽に集中できたっていうのはけっこう大きかったです。

戸川 そう考えると、(『OUTTA HERE』の)レコーディングの合宿状態からの流れが割とツアーでも反映されていた感じはあるね。もちろん、ツアー中、寝泊りは同じ部屋じゃないけど、四六時中一緒にいるから、ニューヨークでレコーディングしていた頃と近い状態にもう一回戻ったよね。

CHUN2 そういうのあるんだね。

戸川 あるんだねぇ(としみじみ)。

インタビュー@山口 智男

Vol2.へ続く

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