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Ken Yokoyama 6th Album [SENTIMENTAL TRASH]



--メロディック・パンクを最初に鳴らしたという事実は、いつの間にか、自分の足枷になっていたんでしょうか。

「うーん、今となってみれば、少し思う。ハイスタの時はそんなこと考えもしなかったけど、KEN BANDでアルバムを何枚も作っていくと、やっぱ求められてるものに自然と嵌まっていこうとしてる自分たちを感じることがあって。たとえば3コードのロックンロールが出てきたら『これKEN BANDでやってもねぇ。俺らが鳴らす必要ないでしょ』みたいな思考に、一時期はなってたと思うし。でも今回は思い切ってそこを乗り越えてみようと。でね……話は違うんだけど、パンクロック、ロック、ロックンロールって、みんなにとって違うものなのかな? 皆さんにとってそれぞれ違うのかな?」

--うーん。やっぱり呼び方が変わるのは精神性も関係あって。最初はビートルズやビーチ・ボーイズもロックンロールのバンドだったけど、60年代後半からはロールが取れていく。思索性や文学性が加わってくるし、彼ら自身も楽しいパーティー用のラブソングを作らなくなった。

「あぁ、確かに。哲学的なものが加わってきてロールが取れたのかな」

--それが当時の社会運動と一緒になったことも大きい要素だと言われますね。60年代後半の学生運動、ベトナム戦争反対という若者たちのムードの中で、たとえばドアーズは楽しくロールする必要もなかった。

「あ、なるほどなるほど。そうだよね、時代と結びつくことで、娯楽じゃない、カウンターカルチャーとしてのロックになったんだ」

--そのカウンター精神やメッセージをより尖らせたのが70年代のパンクとも言えるけど。同時に、以前のヒッピー文化を否定したのもパンクだから。精神世界はどうでもいいからシンプルな3コード鳴らせよ、っていう意味ではロックンロールへの回帰でもあると。

「そっかぁ……うーん。興味深いね。確かに。言葉によって人々への広まり方って違うもんね。受け取られ方も。日本だとさ、たとえばロックンロールっていうと、カタカナで書くロケンローっていうイメージになる」

--アレですね。リーゼントの名物おやじ、名物マスターみたいな(笑)。

「そうそう(笑)。そこじゃないんだよっていうのは、ひとつ言っておきたいところ。でね、俺にとってはパンク、ロック、ロックンロールって根底は一緒なの。今までだって、ハイ・スタンダードの時もKEN BANDの時もずっとロックンロールをやってるつもりだった。ロックンロールの中のメロディック・パンクをやってたつもりで。そこが今回、どうでも良くなっちゃった」

--それって「小さいこだわりを捨てた」というニュアンスですか。それとも「このスタイルの可能性を見切った」に近いのか。

「見切った、はないな。メロディック・パンクのマナーで一枚アルバム作れって言われたら、たぶん今もできるだろうし。それを捨てたわけでは全然なくて。実際、興奮しながらロックンロールの曲を作るんだけど、まず手元に揃った曲があまりにも異質なのは自覚してたの。で、こっから戻るんだ! ここからいい曲を、格好いいメロディック・パンクの曲を作ったら、それこそNOだったものもYESになるはずだ! って。そこは自分でも興奮してたし、すごくモチベーションも高くやれたかな」

--わかりました。そうやって作った作品は、今、自分にとってどういうアルバムになったと思いますか。

「そうだなぁ。音楽的なチャレンジも含めて、なんか、自分を新しいところに連れて行ってくれるような。そういう期待ができるアルバムかな」

INTERVIEW BY 石井恵梨子
Vol.02 へ続く