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Ken Yokoyama 6th Album [SENTIMENTAL TRASH]



--あぁ、もうフックアップって言葉じゃないんですね。いかに長持ちさせるのか。継続すら難しい。

「そう、継続すら難しい。もちろんどのバンドも、メンバー全員がひとつのバイオリズムに合わせられるわけじゃないよ? 苦労なんて昔からあったことで。でも実際、家庭とか経済の事情でいいバンドがどんどん潰れていっちゃうのが寂しくて。たとえばモガ(・ザ・ファイヴエン)が潰れた時はやっぱショックだった。痛いとも言えない、鈍痛みたいなものがあって。それはピザのバンドじゃなくても同じ。だから、そこは何とかしたいな。俺がなまじいい思いをしてるがために。なまじ人より気合いが入ってるがために(笑)」

--いい思いをした、だけでなく、ハイスタの功罪ということも考えますか。

「すごく考える。そこはコラムで唯一触れられなかったことで。ハイスタはね、それ以降のバンドに、テレビ出るのが格好悪いっていうイメージを付けちゃったと思う。だったら、それを払拭できるのは俺かナンちゃん以外いないと思ってた」

--あとは、ハイスタがパンクをカジュアルにしたことですよね。メディア露出を否定する普段着のパンクが増える一方で、どんどん軽薄になっていくバンドも増えた。ハイスタ休止から数年後はやたら青春パンクがテレビに出てきて。あれは私から見てもほんとダサかった。

「ははははははは!」

--でもそれは結果であって、健さんは「そんなの知らないよ、俺、関係ねぇじゃん」って突き放してもいい立場にいるんです。なんでそこまで若手のケツを拭こうとするのか。そこは不思議でもありますね。

「あぁ……まぁ正直言って、そこでテレビ出てたバンドまで背負う気はないよ(笑)。だけど現状がこうなってる以上、やっぱり今頑張ってるバンドと、あとはこれから出てくるバンドたち。今なんとか一生懸命夢を見ようとしてるバンドと、何に夢を持ったらいいかなと思ってる若いバンド。あとはこれから楽器を持とうとする子供たち。そこを背負いたいのかな」

--わかりました。そういう気持ちはアルバム制作の段階からあったと思います。ただ、シングルの取材でも言ったように、今回は箱モノギターへの興味が先だった。そこから生まれたサウンドと、今話したようなメンタリティは、どれくらい密接なものなんでしょう。

「そうだなぁ……でも繋がってると思う。箱モノのギターを持つことは、イコール、昔のロックンロールの風景に想いを馳せることで。自分が育ってきたこと、目にしてきたこと、耳にしてきたミュージシャンたちを、あらためて見つめ直す作業で。センチメンタルとかノスタルジーって本来パンクにとって御法度でしょ。でも自分がそうなってるのは認めざるを得ないし、その御法度も突破したいと思った。自分のルーツを見つめながら、今バンドたちが置かれている現状を見つめて、なんとか風穴開けたいって思ってる……。そういう一連の思考って、なんか一直線上にある気がするな」

--個人の話とシーンの話が分かれてないんですよね。音楽の歴史を見つめることが、未来の子供たちへの視点と繋がっている。ロックの未来を何とかしたいと動くことと、メロディック・パンクにこだわらなくなったことが、矛盾なくひとつの線になっている、というか。

「そうそうそう。それは今回のアルバムの……もしかしたら自分でもまだわかってない、大きなテーマかもしれない。最初はもっと単純なはずだったの。箱モノギターを弾くようになって、ちょっと古いもの、メロディック・パンクにこだわらないものをやりたくなっちゃったな、っていうだけの話だと自分でも思っていたけども」

--ただ、「メロディック・パンクのスタイルから離れるとこまで離れる」っていう発言は、去年夏にすでにあるんですよね。けっこうな強気発言。言ったら自分がずっと大事にしてきた一番の勝負服じゃないですか。

「ねぇ? なんであの時期あんな強気だったんだろうなぁ(爆笑)。わかんないんだけど。でも離れるっていうのも、本当は音楽的な意味ではなくて、精神的な、挑戦的な意味だったと思う。日本でメロディック・パンクを作ったのはアンタじゃないか、っていうところに対して……どうでもいいじゃねぇか!と(笑)。身も蓋もないけど、ほんとにそう言いたかった」