このサイトはJavaScriptがオンになっていないと正常に表示されません

SLANG 7th album Devastation In The Void 2014.08.06 In Stores!!

SLANG 7th album Devastation In The Void JKT画像

SLANG 7th album “Devastation In The Void” 2014.08.06 In Stores!! Code: PZCA-66 / Price: 2,190yen (without tax)

  • google
  • tumblr

Track // 01. Scum / 02. Apocalypse Now / 03. Forever And Ever / 04. 亡骸の丘 / 05. Dystopia / 06. Death Of Democracy / 07. Reason Of Brutality / 08. Vicious'Nuclear Fuel'Cycle / 09. The End Of The Nuclear Era / 10. Cursed Dawn / 11. 162 Graves

  • Tower Records
  • HMV
  • amazon
  • disk union

SLANG 'Devastation in the void Tour'

08/09(土) 札幌 KLUB COUNTER ACTION*

w/ YUKIGUNI / BAGNAG

Open 19:00 / Start 19:30
Adv. 1,500yen / Door. 2,000yen(D別)
Ticket:7/5(sat) on Sale at KLUB COUNTER ACTION(メール予約&店頭)
Info: 011-222-1413 [KLUB COUNTER ACTION (17:00~24:00)]

08/31(日) 茨城・取手 Dandelion Cafe

"ワンマン"

Open 18:00 / Start 18:30
Adv. 3,000yen (定員50)
Info:0297-73-7950(Dandelion Cafe)

  • 11/09(日) 札幌 KLUB COUNTER ACTION
  • 11/13(木) 大阪 Pangea*
  • 11/14(金) 名古屋 Red Dragon*
  • 11/16(日) 新宿 ANTI KNOCK*
  • 11/18(火) 仙台 BIRDLAND*
  • 11/30(日) 那覇市 OUT PUT
  • 12/01(月) 那覇市 OUT PUT

(*)YUKIGUNI Galaxy in a cell -独房の惑星- ダブルレコ発GIG

「SLANG / Devastation in the void」CD発売記念!
dues新宿/渋谷パンク・ヘヴィメタル館ライブイベント開催決定!!

  • 08/27(水) dues新宿
    OPEN 20:30 START 21:00
  • 08/29(金) 渋谷パンク・ヘヴィメタル館
    START 21:30予定
■入場方法
  • 新宿パンクマーケットにて対象商品をお買上げの方に先着でdues新宿イベント参加券を差し上げます。
  • 渋谷パンク・ヘヴィメタル館にて対象商品をお買上げの方に先着で渋谷パンク・ヘヴィメタル館イベント参加券を差し上げます。
  • オンラインショップにて対象商品をお買い上げの方に先着でイベント参加券を差し上げます。購入時にご希望の開催場所のチケットをお選びください。

※参加券記載の開催場所でのイベントにのみご参加いただけます。
※定員に達し次第、イベント参加券の配布を締め切らせていただきますので、ご了承ください。

■対象商品
8/6発売「SLANG / Devastation in the void」(PZCA-66) 2,365yen(税込)
※対象商品が品切れの場合、ご希望の商品をご購入いただけない場合があります。
■対象店舗
diskunion新宿パンクマーケット
diskunion渋谷パンク・へヴィメタル館
diskunionオンラインショップ
■ご注意
※会場はいずれも禁煙となります。
※許可された場合以外は、会場内に録音・録画・複写に使用する機材及び酒類・危険物の持ちこみは固くお断りします。
※危険行為は禁止になります。万一の怪我などの責任は負いかねますので予めご了承下さい。
※ロッカーなどは御座いません。貴重品の管理は自己責任にてお願い申し上げます。
※会場内で係員の指示及び注意事項に従わずに生じた事故については、主催者は一切責任を負いません。

SLANG [Devastation In The Void] Release Interview

Vol.03 期待はしない、押し付けない、だから覚悟して見ろ

矛盾があることもわかっていて、あえて極論を投げつけた

-- 素朴な疑問なんですけど、まずは曲があって、それを聴いてから歌詞を決めるわけですよね。

「うん。聴きながら書く。あとは歌詞のストックの中から、なんとなくのリズムで合わせて、それを足したり削ったりすることもあるし。あと、最初の一行目をポンと思いつくこともあるし。まずはとにかく聴くんですよね。完全に暗記するまで聴くところから始める」

-- たとえば3曲目は、ロックンロールやハードロックがベースにあるし、オケだけ聴けばけっこうポップとも言えますよね。たぶんノリノリの歌詞が乗っても成り立つ曲で。

「そうですね」

-- そこでイスラエルの話、ガザ地区の紛争が自然とテーマに出てくるのは、KOさんにとって自然なんですか。

「うん……そういうことしか考えてないんじゃないですか(笑)? 普段もそうだもんね。友達のバーとかに飲みに行って、ムキになって『ISIS(イラクとシリアのイスラム国)がさぁ、サウジアラビアがさぁ!』とか言っても、みんな『うん……うん』ぐらいで、マスターのほうが困ってるみたいな(笑)。まぁそうだよね、来ていきなりテロリストの話をしだすんだから(笑)」

-- もういいや、って思うことは一回もないですか。俺には関係ねぇし、みたいな気分になること。

「いや、それがない。たぶんその切り替えができないから、けっこう参ってくるの。もちろん丸くはなったと思うけどね。ちゃんと話すようになったもん。とりあえず、その人の意見はちゃんと聞く。相手がちゃんと話せるぶんにはね」

-- ネットだと、ちゃんと話せない、話にもならないことがありますよね。たとえば放射能の被害について訴えると「放射脳だ、出ました陰謀論!」とか揶揄する人たちが絶対に出てくる。それについては?

「……バカなんじゃないかなぁって。それぐらいしか思わない(笑)。だって、そういうタイプって完全ブーメラン野郎だもん。チェルノブイリのデータなんかたくさんあるわけで、そこで医療従事した人も支援者も日本には多いから。WHOのデータとか、もちろんどれを見てもバラつきはあるんだけど、あそこまで大きな事故だと正確な数字なんて出せるわけがないじゃない。被曝してなくても、黙ってても病気になる人はいるんだし。ただ、そういうことを見もしないで頭から否定してる奴らには、何言っても無駄……っていうかブッ飛ばすくらいしか方法ねぇんじゃないかと思ってる(笑)。だいたいグダグダ言ってる奴らって、一発どつけば『あぁ、すいません』だから(笑)」

-- はははは。KOさんらしい。

「で、そうじゃない奴だったら、ちゃんと議論もできると思うの」

-- KOさんは、発言と表現を分けていますよね。たとえば「原発の是非ついてもいろんな考え方があるよね」っていう議論をここですることはできる。でも歌にするなら「即時廃炉!」と叫ぶ。そこは意識的にやっているんですか。

「一時期はわざとそうやってた。その極論を言った先に矛盾があることもわかったうえで、あえて極論を投げかける。そうやってたけど、今は、まぁ話してもいいよ、とは思ってるかな。ただ、話してもいいけど、話になんないからね。霞ヶ関政策総研の奴ですら逃げたもん。国防とか安全対策で言うなら、こんな手だってあんな手だってあるわけで、なんでその試算を出さないのか。その先を言ってみろって言うと誰も答えられない。じゃあ俺は『この足りねぇ頭で言わせてもらうけど、即時廃炉でいいじゃん?』って言うわけ。お前らが金儲けすることをちょっと我慢すればいいじゃん、と」

議論もするし、本当なら納得する。でも嘘じゃん。だから怒る

「でね、俺が言ってるのは、即時廃炉じゃなくて、即時廃炉決定をしろってことかな。今すぐ転換しろって言うんじゃなくて、今ここで決定して、日本はこういうふうに向かって行くっていうプランを出そうと。そういう意味で俺は即時廃炉支持なんだけど、でも日本がウランをどれだけ抱えてるのかは非公開だし、ほんとのことは国民にはわかんないでしょ。本当に必要だったら仕方ないっていう意見もわかる。2011年はさ、一斉停電とかやってて、本当に足りませんって言ってたじゃん。あれが嘘だったから俺は怒るんだけど、もしあれが事実だったら、それはしょうがないと思う。実際ここに燃料があるんだから、使えるものは使おうっていう……池田信夫論も理解できるのね。あの人は、原発の新設はありえないけど今あるものは使っていかないと無駄になるっていう、ただのもったいないオヤジだから」

-- ふふふ。もったいないオヤジ(笑)。

「そこまで詰めた話になってくると、俺は池田信夫のもったいない論もよくわかる。もちろん原発なんて何かあったら絶対嫌だから、っていうのが根っこにはあるけど、本当に電気がなくてどうしようもないんだったら納得できる。でも『納得できる数字出してよ』って言っても誰も出してくれない。マスコミは赤字赤字って印象操作する。政府は政府で都合のいい数字しか出さないし、それは結局嘘でしょ? 北海道でも嘘はたくさんあるからね。石狩のGTCCっていう……ガスタービンコンバインドサイクルの火力発電所、着工準備とかずっとしてんの。泊原発の三号機ぶん動かすくらいの電力が作れるらしくて。でもそれは全然テレビで報道されない。北電は北海道の未来の電力不安ばっかり煽ってんの」

-- そうなんですね。

「俺は石狩のGTCCは北海道新幹線のこと考えて作ると思ってんだけどね。一方でオール電化推進CMばんばん打っておいて、一方では 節電をお願いしますってCMも北電はずっとやってきた。原発は24時間フル稼働だから消費の下がる夜間電力をいかに道民に使ってもらうかってアイデアなのはわかるよ。けどさ、北海道新幹線なんかも、もう何十年も計画して来た事だから止めれない部分もあるのはわかるけど、あんな原発事故起こしといてお前らまったくやり方改めるつもりないの?って。北海道の電力消費量とかずっとチェックしてたからほんと思っちゃう。道民はね、節電はすごい進んでると思うんだけど。あと、節電要請CM に便乗した企業の節電営業ね。まぁ、新幹線は見た目カッコいいんだけどなぁ(笑)。新幹線計画を生かすなら他の対策も何とかしろよって思っちゃう。北海道は単純に石狩の他にGTCCもう1カ所作りゃ単純に電力なんか有り余るんだけどね。泊原発なくても石狩だけで充分な試算も出てる。北海道新幹線の使用電力量も石狩に新設されるその新型火力もそう。そういうの隠して電力不足とか言われてもさ、お前ちょっと待てよって話じゃんね。バカにするのもいい加減にしろって思う。だから怒る(笑)」

-- そういうことを徹底的に調べていく作業って、いちミュージシャンとして絶対に必要かと言われれば、そうでもないと思うんですよ。でもKOさんにはそんなふうに分けられない?

「だって、リアルじゃないとハードコアじゃない、っていうのがあるけど、ミュージシャン云々以前に人間だからね。勉強なんか全然好きじゃないんだけど、腹立つから。ほんとに。嘘ついてる奴らも腹立つし、ただ揶揄してくる奴らも嫌い。日本人って根本的に騒ぎが好きじゃないんだよね。ワーワー言うのが嫌い。それがどれだけ神聖なお祭りであろうが、他人がワーッとなってるのを見ると一歩引いて『どいつもこいつもうるせぇな』みたいな。そういう奴って今多いじゃん。反原発を非難してる連中もほとんどそうだと思う。『それを冷静に見ている俺、クール』みたいな。本当は一番バカなんだけどね。何も考えてないわけじゃん。自分の国土が放射能で汚染されてるんだよ? それすら考えてないの? 『お前らみたいな奴らがギャーギャー騒いでも原発なんかなくならない、もっと冷静に、俺みたいに客観的になれよ』とか言ってくる奴は……死ね、って思う」

-- たぶんKOさんにはすごい量の声が届くんでしょう(笑)。

「ほんっとバカじゃねぇのって思う。もう言い飽きたから原発のこととかツイッターで言わなくなったけど、何か言うと「サヨクが!」「反日が!」って言い出す奴ら。反日はてめえだろって思う。我が国の土地があれだけ汚染されて、実際に人が住めなくなってるんだから。あそこに住めるって堂々と言ってんのは田母神俊雄と、田母神に入れ知恵してる変な札幌の大学教授くらいだって」

ただ『ダメじゃん!』なの。俺は、それを書く人

-- 福島第一原発の問題と、ウクライナの過去と、あとはシリアやガザの話。もちろん同じではないですけど、同じようにフラットに見つめて歌詞にできるっていうのは、単純に不思議でもありますね。

「震災前に出したアルバムに入ってる「チェルノブイリの首飾り」って曲なんかもそうだけど……なんだろうね。でも結局そこに向かって行ってる、っていう危機感はあるかもしれない。羊の群れの中には一、そうやって危機を察知する一匹がいるらしいんだけど、俺、そういう勘は昔からいいんだと思う。もちろんね、まさか日本で再び戦争が、っていうのは俺も思うよ? でも、日本は絶対に関係ないっていつまでも言ってるわけにはいかないのね。日本はアメリカに支配されたままだし、そのアメリカの状況はどんどん悪化していくし。そうなった以上、どんなカタチであれ、日本は必ず巻き込まれていくだろうし。そんなニュースって、調べればいくらでもわかるじゃない。ネットつなげばいくらでもアクセスできる。俺が今まで書いてきたもの、言ってきたもの、情報発信してきたものでもいいし。で、今日もどっかでものすごい不条理な出来事はたくさん起こっていて。もちろん、そういう世界のニュースをできる限り調べていくと、ものすごく虚しくなってくるけど」

-- 虚しさっていうのは、今回のタイトルにも表れていますね。ただ怒ってもどうしようもないことを知っている。喚き散らせば世界が変わるなんて全然思っていないんだなって、改めて思わされました。

「あぁ、タイトルね。これは、いつ頃からかある感覚。その、誰かに期待する感覚? それはいつからか捨てちゃったんだよ。自分の中で。たぶん『IMMORTAL〜』に至るまでの何年間かだったと思うんだけど……ナンボそういうことを訴えても、何をしても、もう伝わらねぇもんは伝わらねぇんだなって諦めちゃった。で、じゃあやーめた、じゃなくて、じゃあもういいや、好き勝手に書こう、と思うようになった。別にいいよ、聴くな見るな、みたいな感じ。押し付けることは自分からはしないんだけど、でも開けてみたら『ほら』って言える。だから覚悟して見ろよ、みたいな。そういう感覚になってるんだろうね」

-- その感覚をタイトルにすると「空虚の中の荒廃」になる?

「うん。不条理に対しての無関心っていうか……。さっきの、変化の話、進化と無常の話もそう。黙っていては現状維持もできない。俺は今、日本はすごい激動期だと思っているの。震災以降、自民党政権に戻った時にも思ったけど、実際に憲法改正の話も出てきて。こないだの閣議決定、これ、このままだと本当に通っていくでしょ? まさに激動だよね。集団的自衛権については、みんな『日本がそんなことになるなんて嫌だ!』『戦争巻き込まれたくない!』つって騒いでんのかもしれないけど、それ以前に人として、まず救う人がいることを知らなきゃいけないんじゃないの? と。増税からの社会保障削減とか大嘘も含め、それは国内外いたるところにあるわけで。そういうのだって、これから俺たちみんなが辿る道なのにね。あと、やっぱ政府があの調子だからしょうがないのかもしれないけど、国防に関すること、個別/集団的自衛権のことはロクに調べようともしない人があまりに多い。どこまで日本はアメリカの言いなりにならなきゃならないんだ? 何故この国の大部分はそこにすら気付かないんだ?って、虚しくなっちゃう」

-- 世界だけでなく、日本も荒廃寸前であると。

「実際にガザ地区とかシリアとか、あれこそ物質的な荒廃だよね。破壊されて。デトロイトの町とかも産業的な部分でけっこう荒廃してるのか、FORDのでかいビルが廃墟になって、硝子バンバン割れてたりした。今日もどっかで同じことが起こってる。そこに本来は目を向けて、日本政府として支援したりODAあげたりしていくべきだと思うんだけどね。善人面したことばっか言ってらんないけどさ。ODAが原発輸出国の立地地区のインフラ整備費用に化けるとか、やり方はあるはずで。なのに、誰かと誰かが繋がって、また誰かが儲けてる。もう国民をバカにするにも程があるじゃない? 『全額社会保障に使います』とか3秒でバレる大嘘並べといて、増税はします、社会保障はどんどん削ります、大企業は減税します、日本は借金だらけなので国民はカネよこせ……ってね。そういう投げかけを俺はずっとしてきたつもりなの。真意はあんまり伝わってないと思うんだけど」

-- 伝わってないですか。

「なんか『そういうポリティカルな思いを持って、そういうことをずっと歌ってきてる人……みたいだねぇ』ぐらいで。でも俺が本来歌ってるのはそこ。『世の中を変えろ!』でもないし『みんなでやろう!』とも言ってない。ただ『ダメじゃん!』っていうだけ。『いいのかよ?』ってね」

-- あぁ。現状打破とか世界平和とか、ユニティというスローガンもいらない。とにかく「ダメじゃん!」を知らせたい、という。

「うん。たぶん毎回これ言ってるけど、そこから先に俺、あんまり期待はしてなくて。いかに書くか、っていうことだけ。現実があって、俺なりに見てるドラマがあって、それを描写する。それだけを続けてる、そういうことを書く人なんだなって自分では思ってるかな」

Interview by 石井恵梨子

Vol.02『Debastation In The Void』全曲解説!

一体感より立体感。なるべく良い音で聴かせたかった

-- 今回は全パート別録りで、過去の作品と比べても驚くほど音が良くなりましたね。

「うん、本当はもっと良くしたかったんだけど、今回、ミックスにはとにかく時間かけた。とにかく分離良くしようって。極端な話、ほんとアイドルの音ぐらいの分離でも良かった。『バラッバラにしてくれ、一体感は一切出さないでくれ』って何度も言って。それより立体感を出したかった。とにかく広げて、なるべく良い音で聞かせたいなって」

-- 一発録りのライヴ感を求める意識とは対極ですよね。

「うん。海外のバンド、ナパーム・デスとかナザム、モーターヘッドとかブラック・サバスの新しいやつもそうだけど、みんなすごく音いいでしょ? なんで俺たち26年もやってんのにこういう作品を作れないんだと。それは曲がどうこうじゃなくてね。モーターヘッドとスラングを並べて聴いても、音色を比べれば全然遜色がない、って言われるようなものに俺はしたかったの」

-- では、一曲ずつ解説してもらいましょうか。まず「SCUM」。

「これ俺が作ったんですけど、完全に『カオスU.K.で行こうぜ』って言ってた(笑)。当初、一曲目は「Apocalypse Now」の予定だったんだけど、既にシングルで切った曲だし、これじゃパンチねぇだろって。それで一番最後のほうに「SCUM」ができた。ライヴの一発目でどれだけやれるかっていうのと一緒で、どうやってアルバム始まったら格好いいか、それはいつも考えるんだけど。歌詞も含めて、一曲目って何もかもが強烈じゃなきゃダメだ、みたいなイメージが俺にはあるから」

-- ずっとKOさんが言ってきたことが凝縮されているし、あとは北海道の今も詰まってますよね。“道知事のドブスが引きこもる/道庁前で戸沢がアジる/俺たちは子どもに真実を伝える”。

「うん、俺、ここの“ドブス”に黒線は入れたほうがいいと思って。やっぱ、いかにドブスといえどもレディだしさぁ(笑)。それみんなに言ったら『いや、まったく関係ないと思います!』だって(笑)。でもここは面白いですよね。戸沢(注:戸沢淳/北海道反原発連合)の名前も入ってるし。今はあいつ、道庁前のデモの主役みたいな感じだから。“デストロイ ニュークリア バビロン”っていうのも北海道反原連のスローガンで、そこも含めて歌詞に書いた。まぁでも友達の名前を出すのは新しいな、と」

-- 2曲目が「Apocalypse Now」。これは5月に出たワンコイン・シングルに入っていましたね。

「うん。完全に録り直したから、シングルと比べても音は違うんだけどね」

-- シングルの時点で、英語のタイトルに戻ったなと思ったんですよ。前作の『Glory Outshines Doom』は歌詞もすべて日本語だった。

「そう。でもこれはサビが、コーラスが英語だしね。たぶん前作の日本語って……詩として見るぶんには自分でもいいんだけど、ライヴでやってると、やりすぎたかな、みたいな感覚になることがある。そこはまだ、悩んでると言えば悩んでるんだけど」

-- みんなで叫べないっていうのは事実でしたね。特に震災に特化した歌詞だとワーッと盛り上がれない。昔の曲との差があって。

「そうっすね。前作の、タイトル曲になった「G.O.D」とか特に。あれこそ本当に重いし、自分対自分で書くような歌詞だったから。けっこう書くのもしんどい部類なんですね。たぶん、そういうのを自分でも感じたのかな。なんか上手くできない。この今のコーラスみたいな感じを日本語で出すのは難しいっすね。で、無理やり日本語でやるなら、英語でもいいんじゃないかなって。そっちのほうが、もともとのスラングらしいノリになるかもしれないし」

-- 世界の紛争に目を向けているのは、続く「亡骸の丘」も同じですね。

「これは、一番の歌詞に全部集約されてる感じ。イスラエルとガザのことなんだけど、この“イスラエル・イズ・ア・ウォー・クリミナル”っていうのは、フェイスブックベージ。けっこういつもチェックして、パレスチナ関係のベージもツイッターでフォローしてたりするし。前までだと『デイズ・ジャパン』でしか知ることができなかったことが、今はリアルタイムで飛んでくるからね。今日、今さっき空爆があった、みたいなこともバンバン上がってくるの。そういうのを見て書いた歌詞。これは歌詞が最初にガチッと決まっちゃった」

あんたの名前をタイトルにした。「Yoshimura Hideki」は俺にしかできない

-- では4曲目。衝撃の「Yoshimura Hideki」ですが。発売直前まで「Forever And Ever」という仮タイトルにしていたのはなぜですか。

「インフォメーションとかに書かれたくなかったの。しかも今のレコ屋って、全部そのインフォをコピペするでしょ。したら絶対この「Yoshimura〜」の話ばっかりになっちゃうと思ったから」

-- あぁ。「なんと吉村秀樹をずばりタイトルにした曲がある、要注目!」みたいなニュースとして扱われてしまう。

「そうそう。そういう意味でブッチャーズ・ファンに注目されたくないし、もちろん聽いて欲しいとは思うけど、吉村さんをネタにするようなことは嫌だった。まず吉村さんだったら『お前、何やってんだよ!』って言うと思うし(笑)。もちろん、ちゃんと出た時にレコ屋のバイヤーがきちんと聴いて、うわ、「Yoshimura〜」って曲があるぞ、っていうふうに書いてくれるぶんには全然構わないんだけど。逆に、そうしてくれたら嬉しいしね」

-- なるほど。それにしてもタイトルが人名って大胆ですね。

「吉村さんも「JACK NICHOLSON」とか書いてたよね。あの人は昔から映画好きだから、映画のタイトルの曲とか多いの。「Birdy」もそうでしょ。そうやって映画とか人名を曲タイトルにするバンドは海外でもたまにいるんだけど、でも、吉村秀樹って曲名にする奴はたぶん永遠に出てこない(笑)。絶対に出てくるわけがねぇと思ったし、これはもう俺にしかできない。で、吉村さんがそういうのをけっこう好んでやってたから、俺があんたの名前をタイトルにしてやる、っていうところかな。で、この歌詞は室生犀星なんだよね。この“我が死にし後も詩よ生きてあれ”っていうのは、そのまんま室生犀星の『行ふべきもの』っていう詩の一節」

-- 室生犀星も報われず苦しみながら書いた人ですよね。同時代を生きた石川啄木ほどの評価は得られなかった。

「吉村さん、まるっきりそれだよね。俺にはいつも言ってた。まぁ俺は売れてないから愚痴を聞かされたり、生意気言って殴られたこともあるけど。もっと売れてる人、たとえば(横山)健ちゃんには『お前、オレをもっとフックアップしろよ!』とか言って、すげぇ困らせてたよね(笑)。でも俺は何回も愚痴を聞かされてたし、その無念さ……みたいなもの? あの人の持っていた世界とか、置かれてた環境っていうもの。そういうのを曲にしたというか。最後の終わり方とかも含めてね」

-- わかりました。次は「Dystopia」。ずっしり重い曲です。

「うん、元ネタはKIYOさんで。これは、けっこうアルバムの軸っていうか、今俺が言いたいこと全部入ってるかな。俺が思う、不条理みたいなことを、全部書いていった」

-- だから、曲の展開がどうこうじゃなくて言葉で聴かせる曲ですよね。言葉をより効果的に伝えるためにどう歌うか、が重要だったのかなと。

「あぁ、そこはけっこう考えたかな。この曲と、8曲目の二つは考えた」

-- 前回が朗読のようだとしたら、これは演説に近い。

「そうですね。ちょっとアジ(テーション)っぽく。それは考えた。特に8曲目の「Visious“Nuclear Fuel”Cycle」は、最初っからアジっぽいのを意識して歌詞を書いていった。単調で長い曲で、言葉もどんどん長くなっていって。普通そういうの、みんなが『もっと短くしていいんじゃない?』って言い出すんだけど、これは俺が削ろうとしたらみんなに戻されたくらいで」

-- それだけ、言葉の強さが際立つ曲なんですよ。逆に、6曲目の「Death Of Democracy」と7曲目の「Reason Of Brutality」は、言葉よりもまず音が先に出ていく感じ。

「その2曲はそうだと思う。完全に楽曲をガチッと決めちゃったタイプのハードコアで。6曲目は俺の曲だけど、中盤、ガラッと変わったような感じに思わせといて実は変わってねぇっていう。あと7曲目はドラムのKOHEYが初めて作った曲ですね。二つとも、歌詞もそんなに長くないし」

-- サビは英語のコーラスだし、歌詞はわりと俳句のようで。

「あぁ、うん。抽象的っていうか、何かを具体的に掘り下げるんじゃなくて、もっとまんべんなく乗せた感じかな。けっこう前の俺みたいな書き方。『SKILLED RHYTHM KILLS』(2001年/3rd)の頃とか、こんな感じで書いてたと思う。今より抽象的っていうか。ただ、日本語のところだけ見るとちょっと詩的な感じだけど、タイトルと、あとサビのコーラスを聴けば、どこらへんのどんな状況のことを言ってんのか、わかってもらえると思う」

ギターでかくないとロックじゃないよね、って話してた

-- 次は「Vicious“Nuclear Fuel”Cycle」。先ほども話が出ましたけど、これは今伝えるべきことを演説しているような曲ですね。

「うん。今、っていう意味で大事だったのは、次の9曲目のほうなんだけど。でもこの曲はKIYOさんがすごい気に入ってて」

-- ここで出ててくる“レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン”って、あのバンドのことなんですか。

「っていうより、あのバンドの、バンド名の意味かな。歌詞はさっき言ったようにアジっぽいものを意識してるけど、このレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンが出てくる箇所、カギ括弧でくくってるところは詩になっている、というか。そういう曲ですね」

-- 9曲目「The End Of The Nuclear Era」も反原発つながりの一曲ですね。

「うん。こっちこそ、今の歌詞、今出すべきって思った歌詞かな。作ったのはだいぶ前で、去年の夏とか秋くらい。で、これを出すなら今かなと」

-- 中盤のギターソロ、凄いですよね。まぁソロは全曲そうなんだけど、今回は全体を通してギターの存在感がことさら強い。

「うん……ロックだしね。ロックの定義って考えたことあります?」

-- え? うーん……考えて、だいたい袋小路に入りますね。

「ね? 意味とか精神とかそういうこと考えだすとそうなんだけど。でも、ビートルズとかキンクス、ストーンズとか、あとジューダスも60年代に始まってるバンドだけど、そういう60年代のバンド聽いていけば思うんだよね。ロックってギターでかいよな、って(笑)。ガーン!っていう歪んだギターの音。結局ロックってこれだよなぁ、みたいな。そういう話はKIYOさんとよくしてるの。ロックの意味とか精神性を考えだすとうまく答えられないけど、ロックってとりあえずギターがでかい。『ギターでかくないとロックじゃないよね』ってKIYOさんも言ってて。俺もなんか、そう思うな」

-- では、10曲目「Cursed Dawn」に行きましょうか。

「これはKIYOさんの曲ですね。なんか速い曲ねぇかな、って言ったらKIYOさんがパッと持ってきてくれた」

-- “着々と進む戦争の準備”っていう歌詞は、怖いくらいタイムリーですね。

「これまさに今だね。“見ざる 聞かざる 言わざるのテレビ”とか。ここはディスチャージの『ヒア・ナッシング~』だと思われそうだけど、日光東照宮の猿のことでもあって。日光のほうはね、いろいろ諸説あるんだけど、あんまり人のことグダグダ言ってもいいことないですよ、余計なことに関心を向けず、自分のことをちゃんと見なさい、っていう意味があるらしくて。その意味で捉えてくれてもいいし、単純にこの言葉のまま捉えてくれてもいいし。まぁ今、意味的にマスコミがそれじゃマズイだろ、っていうのは特にありますよね」

-- そして最後は「162 Graves」。これもシングルに入っていましたね。

「うん。シングルで切ったからアルバムではカットでいいかなって思ってたんだけど、復活しちゃいましたね。なんか並べていくうちに、この流れがいいんじゃないかって。メンバー間でいろいろアイディアを練っているうちに、これはやっぱ外せないから、っていうことになって」

-- このタイトルの、162の墓っていうのは?

「これは、チェルノブイリの事故で住めなくなった町と村の数。それが162個あるんですよ。チェルノブイリの資料館みたいなのがあって、その、モニュメントみたいなのが置いてあるところに、住めなくなった町の名前を書いた墓標みたいなやつがズラッと並んでる細道があるんですね。それが、162個」

Vol.03 へ続く
Interview by 石井恵梨子

Vol.01「ハードコアって何?」って聞かれた時の、答えでありたい

自分=スラングじゃない。今の四人に支えられている

-- スラングの長い歴史を見ても、これだけメンバーが安定してコンスタントに作品が出るのは初めてですよね。

「初ですね。うん。『THE IMMORTAL SIN』(2008年/4th)の制作に入ったの2006年とかだから、8年間で4枚でしょ? あっという間だった。だから俺的には今年もっとインプット期間を作ろうと思ってたの。毎週末遠征でライヴしてると、集中的にスタジオ入ったりできないから。なんか、鍛錬ができないまま状態で毎週試合が続いてる感じ? メンバーがどう思ってたかどうかわかんないけど、そろそろメンテが必要だろって感じてた。ほんとは今年、出したくなかったくらい」

-- そうなんですか? やる気が出ないような状態?

「うん。いつもスラングは年明けに曲作り期間を設けるんだけど。でも今年はちょっと参ってたというか、落ちてて、俺。だから休もうって言ってんのに、リズム隊の二人、あいつらが10曲くらい新曲持ってきたのね。次から次と持ってきて『どうすか?』『もう歌詞イケそうですか?』みたいな。もうアッタマきたこいつら! と思って」

-- 頭にこなくても(笑)。それだけSAKUMAくんとKOHEYくんがやる気を見せていたのが大きかった。

「まぁ結果的に、あいつらにケツ叩かれたとこもあんのかなぁと思いつつ」

-- YouTubeにアップされたドキュメントによると「KOさん=スラングではなくなってきて、今の僕たちのカタチを見せられるようになった」っていうKOHEYさんの発言がありますよね。

「あ、言ってたね。まぁその感覚は、前からずっと俺の中にあるんだけど。前はもっとひとりで曲作りも内面的なことも全部やってた。でも今のメンバーになってから、演奏とか全部任せてる。曲も『こんな感じ』って言って渡して終わり。それ以上の細かいことはほんと言わなくなったから。そうなった時点で自分=スラングではなくなってるし。今は、あいつらに支えられてるっていうか、そう感じる部分も大きいし」

-- なるほど。

「だからKOHEYが言ってんのは、楽曲としても自分たちが出てきた、っていう意味じゃないかな。KOHEYの曲、初めてだからね。この5~6年くらいずっとボツにされてたし (笑)。持ってくる曲持ってくる曲、全部ボツだから、あいつもだんだん作らなくなってたり」

-- (苦笑)よくへこたれないですね。

「いや、ムッとしてますよ。どうせまたボツだろ俺の曲は、みたいな顔して。でも飲みに行って『つうかさ、俺が作ったこの曲と、お前の曲を並べて客観的に聴いてみろ。一曲しか出せねぇっつったらどっち出す? お前、俺に遠慮しなくて選べよ?』『いや、KOさん作ったこっちの曲です』『だろ? 誰が聴いてもそう言うと思うよ? だからお前の曲の作りは甘いんだよ。そこをちゃんと認識しろ!』『はいっ』『俺たちハードコアだろ? どっちかで言うとこっちはいらないかも、みたいな曲が俺たちに必要か?』『いらないっす!』『だろ? これしかねぇっていう曲しか入ってねぇアルバムを作るんだよ、俺たちはよ』つったら『押忍!』って(笑)」

変わらないでいるのは無理。そのために内面で成長しないと

-- KOさんらしい叱咤激励ですけど、でも今何気なく言った「俺たちはハードコアだろ」っていうスタイルの示し方は、本当に26年ずっと変わらない。

「うん。ただ、なんつうの? どうしたら良くなるんだろうって常に考えてる。毎回最高傑作を作りたいし、何回も聴ける最高傑作にしたい、っていうのは今回もあった。やっぱりアルバムも変化がないようで常に変わっていかないと。全然変わってないように見えるものって、実はものすごく内面的な進化と成長みたいなものがあるはずで。俺、そうじゃないと無理だと思ってるの。たとえば美容とかもそうでしょ。女の人の肌とかもさ、日々衰えるわけで」

-- そりゃもう大変ですよ(苦笑)。

「ねぇ。だけどハタチの時にすごく綺麗だったモデルさんが、40歳になっても50歳になっても綺麗とか。見た目は絶対的に老けるんだけど、でも、40歳になってもすごく素敵だったりする。あれって実は内面が凄いんだと思う。バンドもそう。バンドっていうか人間が絶対そうなの。変わらないっていうのは無理で、放っておけば衰えていくだけ。だから無常」

-- その無常を前に少しでも現状維持したいなら、内面で必死に成長したり進化していく必要があると。

「そう。それで結果的に変わらないように映るなら、バッチリだと思う。たぶん今のスラングはそこをすごく意識してる。初代ヴォーカルがいて、HAL(二代目Vo)がいて、『SUPER CHAOS』(95〜98年の作品をまとめた第二期スラングの音源集)出したぐらいまでは、俺、変わらなきゃいけないと思ってたの。変わるっていう言葉の表面的な意味しかわかってなくて。で、『SUPER CHAOS』を出した時に……俺たちフガジになりたいわけじゃねぇって思った。変わるって、そういうことじゃねぇだろって。それで作ったのが「何もしないお前に何がわかる 何もしないお前の何が変わる」のシングル。これでこそスラングだ、っつって」

-- なるほど。

「あの曲は後に編集したほうの『SUPER CHAOS』にも入ってるけど、順番は逆なの。「何もしない~」が後にできて、そのあとバンドはバラバラになっていくんだけど。俺、当時は新しいファッションを求めてたところがあるんだよな。新しいものを生み出したかった。パンクでも格好で◯◯系ってわかるじゃない。スイサイダル好きならバンダナ巻いてキャップ被ってスケボー持つとか。そうやって海外の真似するんじゃなくて、俺たちは札幌でやってるんだから、札幌ハードコア発信のものを作りたかった。ファッションから何から全部、これが札幌の俺たちのスタイルだって言えるものが欲しかった。『SKILL~』の頃まではその思いが強かったかな」

-- あの頃は、NYHCみたいな格好をしていた印象が。

「まずボウズだったし、行き着いたのはワーク系っつうの? ワークジャケットにGパン、下はスニーカーなりマーチンなり。シンプルに行くならこのへんが究極だよなって思うと同時に……なんか違う、と思った。変わるとか変わらねぇってこういうことじゃない。そうはっきり思うようになって。だから『SKILL〜』から『IMMORTAL〜』まで7年くらいあるんだけど、その間にけっこう……グルグルグルグル考えてたのかな」

-- その葛藤を経て今があるのはわかります。『IMMORTAL〜』以降のスラングって全然変わってないんですよ。作品ごとにどんどん深くなっているけど、でも「何なの?」って言われたら「ハードコアです」の一言でいい。

「まぁ先輩とかもいるから俺が言うのもおこがましいんだけど、誰かが『ハードコアって何?』って言った時に『ハードコアってこれだよ』って薦められるような、そういうアルバムを作りたい。まぁ俺が誰かに訊かれたら俺はディスチャージを出すけどね(笑)。しかもアナログを渡すけど」

-- ハードコアって、精神に宿っていれば良し、という考え方もあるじゃないですか。かつてハードコアだったけど、スタイルは変わっていく。でも「気持ちはまだハードコアだ」で言われれば納得できちゃうとか。

「うん……言いたいことはわかる。それを否定したくないんだよな。ドレッドでレゲエやっててもハードコアだろうし、スニーカーでイアン・マッケイのコスプレみたいな格好しててもハードコアだろうし。ハードコアってもともと多様性あるからね。俺だってガチガチに決め付けてるわけじゃないし、ディスチャージ以外認めないとか、そんなこと全然思ってないから。そうだ。俺ね、今のスラングのメンバー探し始めた時のテーマが、ディスチャージとバッド・ブレインズとモーターヘッドの3つだったんだよね。この3つが好きな奴、みたいな感じでメンバー募集したから」

ディスチャージと、バッド・ブレインズと、モーターヘッド

-- モーターヘッドはわかるんですけど、バッド・ブレインズはどのあたりですか。

「レゲエが入ってる新しさも当時はあったけど、俺にとって大事なのはそこじゃなくて。もちろんレゲエも嫌いじゃないよ。ただ、バッド・ブレインズって、パンク・ロックの野蛮でチンピラな感じ? それがグワッと凶暴になったような歌詞とサウンドで。あの凶暴性とか瞬発力は俺にとってすごくハードコアなの。だから、どんどんポリティカルになっていけばいいとは思ってない。モーターヘッドもそうじゃない。『ロック、酒、女、イエー!』みたいな、あの悪さはけっこう好きだし。あとはバッド・ブレインズの野蛮さ。最初はピストルズみたいだったのに」

-- ピストルズの完コピみたいな初期音源がありますよね。それが、なぜだか勝手に狂気みたいなものが入ってきて……。

「そう。いきなり暴走し始めるんだよね。俺もハードコア聴くまでは初期パン聴いてたから、その、自分が加速していった感じっつうの、すごくよくわかる。 GAUZEとか速い曲聴くようになって『うぉー!』って勝手にスピード上がっていくような。あの初期衝動っつうか、野蛮さ、バカさ、チンピラ具合とかも含めて『知らねぇよそんなもん!』ってテーブルひっくり返すみたいな。そういう部分も自分の中では忘れたくないっていうか、けっこう大事だった」

-- あぁ、その3つがスラングの軸になっているって、意外と知られてないですね。でもすごく重要。

「うん。今はまた俺こういう格好になってるから、バッド・ブレインズの話をしてもピンと来ないのかもしれないけど。でも、あのバンドから頂いてるものは多い。ちょっとしたリズムの展開とかもね」

-- あと、スラングの強みのひとつは、ギターでしょうね。KIYOさんはハードコア畑の人間ではないし、ギターソロが全曲で凄まじい。

「俺、なんか知らんけど昔からなるべくギターソロ入れようとするからね。KIYOは、ルーツで言えばアイアン・メイデンとブラック・サバスじゃないかな」

-- ハードコア原理主義でいえば、ソロって不要ですよね。

「そうだけど、なんだろう? 全然意識してないんだけどスラングの最初からソロみたいな部分はあった。リップ・クリーム好きだったから、その影響だと思うんだよな。で、俺的には全然アリなの。ソロでもツーバスでも、聽いて良かったらそれでいい。意味がないならいらねぇっていうのはわかるんだけど、そうは思わないから」

-- 今回は特に音の分離がいいから、それぞれの技術がどれだけ凄いのかが如実にわかります。パンクとかハードコアも、本気でやっていけばシンプル・イズ・ベストだけでは持続できないんだなって思う。

「たぶん、そうだと思う。だから長続きしないバンドが多いんだと思うし」

-- あとは、怒りが続かないっていうのもありますよね。本気で怒れば怒るほど、本気で虚しくなる世の中だから。

「あぁ。そうかもね。俺いっつも腹立ててるけど(笑)」

-- 想像できないけど、明るいパーティー・チューンとか、ノリノリの歌を作ってみたいっていう気持ちはないですか。

「……どうだろう? 怒ってないロック、っていうのが想像できない。もちろん聴くぶんにはね、マーフィーズ・ロウとか、ガキの時からトイ・ドールズとかOiとか、ああいうポップなのも嫌いじゃなくて。だから楽しいのはわかるし否定もしないけど……性格じゃない? やっぱ、そうやってワーッと楽しいこと歌える人って、打ち上げみたいな場でもそういう人物だと思うのね。盛り上げ役みたいな。俺、自分がそういう人間であったことがないから、ある意味すごい憧れるんだけど。でも、俺が同じようなことやってもドン引きされて終わりだと思う(笑)」

-- サウンド・スタイルは努力と成長によってキープしていく。では、怒りという感情はどうでしょう。自分はハードコアをやっているんだから、という意思に基づいたものなんですか。

「いや……単純に負けず嫌いだから(笑)。ただの性格だと思うよ。ほんと俺、毎日腹立ってしょうがないから。なんでみんなこれに怒んないの? って思うことばっかりだもん。もちろん『みんな気づけよ! みんなで怒ろうぜ!』って騒ぐことはしないよ。時間の無駄だから。やんない奴にはもう何言っても届かないっていうのもわかってる。だから、気づきたい奴は気づけ、知りたい奴は知れ、勉強したい奴は勉強しろって思うだけかな」

-- そのためにスラングの作品がある、という言い方もできますか。

「うん。歌詞はもっと乱暴に完全に言い切ってるけどね。勉強とか情報共有の投げかけって意味でいえば、ツイッターやフェイスブックがそういう場所。で、歌詞は結論。俺の考える極論。それでいいと思ってる」

Vol.02 へ続く
Interview by 石井恵梨子