——ニューアルバム、まずは皆さんの手応え、感想をそれぞれお願いします。
KIYO 今までとちょっと雰囲気変わったっちゅうかね、面白い感じ。いろんな要素が入ってるよね。
KO うん。変わったって言うなら俺は毎回変わったと思ってる。でも今回は確かに変わったとこ多いよね。チューニング違う曲が増えたり、SAKUMAの曲が増えたり、あと歌詞がサビも含め全部日本語になったとか。
KIYO そう。でも基本的なコアな部分は変わってなくて。
KOHEY 根は何も変わらないまま、楽曲がちょっと面白くなった。前とその前のアルバムは全部一発でやってたのが、今回はギターを重ねたりして。だからライヴ感もありつつ、作品っぽい感じにもなったアルバムだと思います。
SAKUMA うん。すごくいい作品になったと思います。曲も凝るところは凝ったりして、今までとはまたちょっと違う一面も見せたというか。いいアルバムになったと思いますね。
——はい。じゃあKOさん。
KO ……アルバムの感想でしょ? 俺、わっかんねぇんだよなぁ。
一同 (笑)。
KO や、俺だけギリギリまで作業やってて。プリプロから本チャンまで一ヶ月しかなかったんですけど、最後の最後までアレンジ練り直してて。ちょっと気に入らない曲が2曲くらいあって、後半は時間的に余裕なかったからカットすればよかったのに、なんか欲が出たんだよね。だから最後の最後、録りの前の日のスタジオまでずーっとアレンジやってて。そこで歌詞が微妙に変わったりするから、さらに個人練習ガーッとやって、すぐ録り、ミックス、マスタリング……って行っちゃった感じだから。
SAKUMA すーごいギリギリでしたよね。
KO うん。だから感想って言われるとよくわかんなくて(笑)。手応えって意味では、去年末にカタチが見えてきた時の「あ、これイケるかな、じゃあアルバムやろっか」っていう段階のほうが強く感じられたというか。次はけっこう違ったものができる、っていう予感があったかな。
——ではまず、次のアルバムを作ろうと思ったモチベーション、新たな制作に向かった流れを教えてもらえますか。
KO 俺らいつも、新譜出す出さない関係なく曲は作ってるんですよ。だいたい年明けから3月くらいはライヴやらないで、曲作り期間っていうのを設けてて。ギター 家で弾いたり、基本的には個人で曲作って、それを合わせに入るんだけど。そういう期間が去年もあって、1月2月とかチョコチョコやってたんですよ。だから 楽曲というかネタみたいなのはけっこうあって。まぁ俺的には今年じゃなくて来年だなと思ってたんだけど……なんだろうなぁ、震災あって忙しかったはずなのに、10月だっけ? ちょっと時間できてバラバラッとスタジオ入る時間があったり、その後また2週間くらい空いたから歌詞も詰めたりして。なんとなーく、イケるな、っていう形が見えたんですよね。
——ただ、この時期にまたニューアルバムって意外でしたね。去年2月にはライヴ盤も出てるし、3月以降はみんな知ってるとおり、KOさんめちゃくちゃ忙しかったわけですよね。
KO そうそうそう、俺もなんでできたのかわからん……。
SAKUMA 不思議なところですねぇ(笑)。
KO 絶対もっと長くなると思ってた。変に震災あったからバンドとして作品出さなきゃ、みたいな、そういうのは全然思ってない。なんなら震災があったから出した、みたいには一切思って欲しくないし。なんだけど……なぜかまとまったんだよなぁ。あ! インフルエンザになったのがデカいな。
一同 (笑)。
KO 1週間ぐらい家から出れなくて、もう朝から夜まで曲作るしかやることなくなって。
KIYO あん時不思議なメールがいっぱい飛んできたんだよね。「KIYOさん、あのバンド何年ぐらいからやってたんだっけ?」とか。ロックの歴史について(笑)。
KO 息抜きにイギリスのロックの歴史を勉強しながら作ってた。「ディープパープルは何年結成で~」とか書き留めながら。あまりにヒマで(笑)。
KOHEY アマゾンでCD買い漁ったんですよね、そん時。
KO 一週間で40枚くらい買った。半分ぐらいデスメタルだけど(爆)。
SAKUMA その前から俺とKOさん、メールで曲のやり取りしてたんですけど。あの時は10何曲ぐらいまとめて送られてきた。
KO 一週間で12~13曲、バーッと作って。「はい、今日の新曲です」みたいな。
KOHEY だからインフルエンザがけっこうキィですね、今回のアルバム。
KO うん、デカかったねぇ(笑)。
——ひとつの作品に向かう気持ちっていうのは、今までと違うんですか。それともいつも通り?
KO そこは変わんないよね。いつもと同じやり方。楽曲は前のアルバムに入れなかった曲とかも入ってるから。曲の作り方自体はここ5~6年ずっと変わってない。ずっと継続して、もう年中曲を作ろうっていう感じで。
——それは意識的に続けているんですね。
KO 俺ら別にバンドで食ってるわけじゃないし、プロになるのが目標じゃないんだけど。ただ、なんていうのかな、たとえば野球選手は毎日ピッチングの練習する し、格闘家とかボクサーも毎日練習するのが当然で。で、考えてみるとロックやってる連中って、偉そうなこと言ってるわりに毎日自分の練習してる人ってあま りにも少ないなぁって。
——そうかもしれない。
KO 俺はスポーツ選手とか格闘家の本読んだりするの好きだし、GYMとかも行ってたから、ボクサーとか毎日こんな走ったりするのか、たった1回リングに上がるためだけに毎日あんな練習してんのかってびっくりして。で、自分のこと考えたら、飲んで若いヤツとかに「お前らもっとちゃんとやれよ!」みたいなこと今まで散々言ってきて……俺なんにもやってないのに何でこんな発言ができたんだろう?って思ったりして。だからもう毎日、365日ずっと、何かしらヴォーカルに関わる練習を必ずやろうと思って。何もしないのも練習のうちって言えるぐらい。それは意識的に本読むとか映画観るとか、音楽聴くでもいいし、一言ぐらい書き留めるのでもいいし、ジム行くとか走るっていうのもそうなんだけど、何でもいいから、毎日必ず5分でもいいからそういう意識を持って時間を作る、必ずヴォーカルのための何かをしようと思って。もちろんギター持ったら曲作るし、作るっつったらリフ一個でも生み出すまでその日は絶対やめない。1フレーズでも録音する。「なーんか作れないんだよね、なかなかできなくて」みたいな言い訳はもう絶対ナシにしようと思って。それがここ5年くらい。『THE IMMORTAL SIN』の前だから、もう6年くらい続いてる。だいたい、最初の10数年が運任せすぎだったんだけど(笑)
——じゃあ、新作を出す準備は常にある、あとはタイミング次第という。
KO ううん。ネタだけ(笑)。準備があるって言うと出来過ぎな言い方だけど、曲を作る習慣ってのを身につけたかったのかな。まぁ、またそれが期間決められて絶対になっていくとやらされてる感が出てくるし、それは嫌だからこんななってんだけど(笑)。なるべく頭の中では、せいぜい3年に一枚くらいのスパンで出していけたらいいなぁってイメージでやってるんだけど。でもなんか、最近は2年、2年で来てる。2年に一枚って大変なんだけどね、ほんとに。充実してるっちゃしてるけど、精神的にちょっと大変。
KIYO まぁでも、できる時に作っといたほうがいいんじゃない?
KO そうだね。バーッとやってるけど気持ち的にはけっこうラクみたいな。そういう感じになっていければいいなぁとは思うんだけど。
——今回の作り方で、今までと違うところってありますか。
KO ……なんもないよね、多分。
SAKUMA うん。別に、いつもどおり。
KOHEY あ! メール! パソコンのメールで「新曲こんなん作ったんだけど」って送信されてくるんですよ。それを家で聴いて、個人で練習して、そのあとスタジオでやるっていう。
KO ああ、あれでけっこう進行早くなったのはあるかもね。それぞれが家で練ってると次の練習までにまた進んでるから。それデカかったかも。
SAKUMA でもお前メール使えるようになったの最近じゃなかった?
KOHEY 覚えたべ!
SAKUMA やっと(笑)。
——スタジオでバーッと作るんじゃなく、一人ひとりが自分のパートを確立する、それを持ち寄って完成させるというやり方なんですね。
KO 今はそうかな。けど、もともとスタジオで練り込んでくって作り方じゃないからな。ある程度完成形っていうか、ほぼ完成されたものを持ち寄って、いざ合わせてみて細かいアレンジを変えていくっていう。
——だからなのか、今回、4つの音がグシャーッと塊にならず、しっかり分離してるんですよね。ギターはギターとして、ベースはベースとしてちゃんと聴こえてくる。
KIYO そこは録り方の違いも大きいよね。
KO レコーディングのね。なんか昔のロックみたいな、言っちゃえば歌謡曲みたいなミックスにしたいって言ってて。一個一個は激しくて歪んでるんだけど、ちゃんと分離してる。昔のロックっていうか、そういう音のバランスにしたいっていうのは最初から考えてた。
——昔のロックというのは、たとえばどういう作品?
KO ブラック・サバスとか。初期モーターヘッドとか。初期モーターヘッドはちょっと行き過ぎかな(笑)。まぁでも、ここ何作かはずっと全部一発でやってたのを、ちゃんと今回は重ね録りして。
KIYO レコーディングも長かったよね。前はバックを4時間とかで録ってたんですよ。ほんと一発。今回は1日ぐらいかかったもんね。
KOHEY で、ギターの重ねでもう1日みたいな。
——すごい迫力ですよね、KIYOさんのギター。
KO バック全部でたった2日だけど....ちょー早い(笑)。まぁみんながやってることを俺らが今までやってなかったっていう話なんだけど(笑)。
——そういうふうに、ちゃんと作品然としたアルバムにしたいっていうのは、最初の段階からイメージしてたんですか。
KIYO KOちゃん最初から言ってたよね。今回は分離良く録りたいねって。
KO それはもうずっと言ってた。音の分離っていうか、広がりがあって、ダイナミックさもあって。それはエンジニアにも言ってて。今回、録りとミックスとマスタリングのエンジニア、3人別々でやったんですね。特にマスタリングがデカいかな。マスタリングはウエケンさん(ex.KENZI AND THE TRIPS, THE PILLOWS)とこ。あの人が札幌の実家に作ったマスタリング・スタジオを使わせてもらって。そこのエンジニアの植松さんって方が、もう15時間くらいやってた。昼から夜中まで。
KIYO ぶっ通しで。
KO 俺たちは出前食って、ストレッチとかしながら「はいオッケーです!」みたいな(笑)。昼寝したり(爆)
KO けど、ずっとエンジニアの方と音のイメージは話してたんですよ。プリプロの段階から音を送って「着地点はこれぐらいの感じ」って音色の確認をしながら RECに入ってった。で、最終的には「なるべく分離よく、かつ迫力のある音でお願いします」って。なるべく分離しててなるべく大迫力、「矛盾してると思い ますけど、そんなイメージでお願いします」って。
——つまり、ちゃんと聴かせたい意識があったわけですよね。ライヴ感があって生々しい爆音ならいい、というわけじゃなく。
KO そうそう。前まではそれでいいやって思ってたの。『IMMORTAL SIN』の頃はライヴハウスの生々しさ、もうPAのデカいやつから出てくる音の生々しさを目指してて、「Life Made Me Hardcore」の時はもっともっと生々しくって感じでやってたんだけど。でもなんか……それはそれでいいんだけど、結局自分であんま聴かなくて(笑)。特にツアーの移動中とか、高速なんか乗るとハードコアかけてもわかんないんですよ。
KIYO エンジン音とローが被るよね(笑)。
SAKUMA 特にスラング号は(笑)。
KOHEY ウチの機材車、それだけローが出てる(笑)。
KO だからね、もうちょいバランス的には聴きやすいほうがいいのかなぁって。1つ1つはひずんでるしボリュームは上げればいいわけだから。
——グシャーッとした爆音って、乱暴な言い方だけどライヴハウス行けば味わえますよね。別にそのバンドじゃなくてもいいかもしれない。
KO そうそう。
——でも今回は4人の音がまさに耳元で鳴ってる気がします。それだけ自分たちの音、スラング4人の音を届けたいって気持ちがあったのかなと。
KO あれだよね。「北風と太陽」。デカい音でバーン!とやると、鼓膜って実際に収縮するんだよね。聴く人もうわって思っちゃうし。で、もっと聴いてもらうためには、スッと入ってきてザクッ!と行くみたいなイメージ。うわーって行くのも好きだったんだけど自分のイメージってそっちのほうがいいと思って。音だけじゃなくて歌詞もそうなんだけど、そういうのは考えたかもしれない。
Vol.02に続く
インタビュー@石井恵梨子