-- KEN BANDは横山さんからファミレスに呼び出されたとか。
Minami そう、初めてだったねえ、ああいうミーティングみたいなことをしたのは。
SAMBU ファミレスで?
Matchan そう、メンバー同士でミーティングというか、話し合いというか。
K5 いつもはそういうことないんですか?
Minami ないないないない。
Jun Gray 軽い話し合いはリハのあととかにやるけど、がっつりっていうのはないよね。
Minami どんな流れだったんだっけ?
Jun Gray ハイスタがひと段落ついて、うちらの次の展開とかを見据えて気合い入れ直す、じゃないけど。
-- 横山さんから相当注文があったようで。
Minami 注文っていうか、難波くんがNAMBA69のメンバーに「同一線上に並んでほしい」って言ってたのに対して、「俺もそう思ってる」ってそこで初めて聞かされたの。
ko-hey あ、そんな最近の話なんですか。
Minami そう。ケンさんがいて、それを俺たちがサポートするっていう……中途半端っていうのは悪い言い方だけど、そういう微妙なバランスでやるのがベストなのかなってずっと考えていたのが結果的に正解じゃなかったっていうことをそこで初めて聞かされて。
-- 4分の1を担ってほしい、と。
Minami そうそう、まさにその言葉を使ってた。
Jun Gray それはあいつがハイスタをやってなおさら思ったことでもあったりするんだよ。ハイスタをがっつりやらなければ、あいつもそこまで思わなかったかもしれない。でも、やってみたら「これこれ!」っていう思いが芽生えたんじゃないかな。
ko-hey 完全に3分の1ですもんね、ハイスタは。
-- その話を受けてMatchanはどう思ったんですか?
Matchan ケンさんはすごい人だと思ってますけど、JunさんやMinamiさんも「この人たち、半端じゃねえなあ」と自分がKEN BAND入る前から思ってた人たちなんで、こんな人たちと横一線にっていうのは相当大変だろうなって思いましたね。「そんなこと俺にできるのかな」とも思っちゃったし。でも、後ろからみんなが押してくれてるのは感じてたんで、「頑張んなきゃなあ」って。
-- それはKEN BANDにとって新鮮な出来事でしたね。
Minami まあ、どうしていいのかわからないっていうのが常にずっとあったから、そう言ってもらえてこっちも動きやすいっていうか。
-- NAMBA69はそういうミーティングはあるんですか?
ko-hey わりとしょっちゅうやってますね。簡単に言うと、曲作り担当、運営担当、グッズ担当みたいな感じで役割分担があるんですけど、各々が「これ、どう思いますか?」っていうのをメンバーに投げて、みんなで最終的に決めてます。
SAMBU むしろ“話さないといけない”ぐらいなんですよ。そうしないと話が進まないから。スタジオに入ったらリハーサルとか曲作りもするけど、それ以外に話さないといけないことが少なくとも個人的には毎回あるんで、しょっちゅう話しますね。足りなかったら難波さん直に連絡することもあるし。
ko-hey 難波さん自身が何か思ったらすぐに連絡してくる人なんで、サンちゃんが気を使って「明日はリハやし、そこで話せばいいか」って難波さんに敢えて話さない間に、WAKAさん(マネージャー)とかからその話を聞いちゃうと、「なんでサンちゃん連絡してこないの!」って怒られるっていう(笑)。
SAMBU 「いや、明日のリハで話そうと思ってたんですけど……」って言うと、「ああ、そっかそっか」って(笑)。
-- 難波さんは何か思いついたら夜中でも電話かけてくる人だもんね。
ko-hey そうですね。曲作りに入ると、そういう連絡が俺のところに来るんですよ。で、「こんな曲思いついたんだけど聴いてくんない?」って電話越しに聞かされるんだけど、電話だから何弾いてんだかこっちはわからないんですよ。しかも、「あ、間違えた!」とか言うし、俺は正解を知らないから間違ってるかどうかなんてそもそもわかんない!
一同 (爆笑)
ko-hey だけど、なんとなく空気を察して、「あ、なるほど。じゃあ、そことそこがつながったらいいんですね」っていう話をして、曲の雰囲気をなんとなーく覚えて、キーだけ教えてもらって、それを俺が(PCの音楽ソフトを使って)打ち直して、「こんな感じですか?」って送り返すっていう。
Minami そうなんだぁ!
Jun Gray データのやり取りをするの?
ko-hey 基本的にパソコンで曲を作れるのが俺だけなんで、それをメンバーに聴かせてます。
Jun Gray それ、うちらはできないからね。
Minami そうなのよ。
Jun Gray だから結局、曲のネタを持ってきた人がスタジオでそれを弾くところから曲作りが始まるっていう。
K5 俺らもko-heyが入ってくる前はそうで。だけどそれだとすげえ時間がかかるし、違う方向に行きまくって結局最初に戻る、なんてことが何回もあって。
ko-hey 曲作りのときってアイデアが全く降りてこないことがあるじゃないですか。俺、あの時間が耐えられなくて。で、このバンドの前にやってたバンドに宅録が得意なヤツが揃ってたんで、そこで俺も使い方を覚えました。
Minami なるほどね。
ko-hey もちろん、スタジオでバッと合わせて作ることもあるんですよ。スタジオでジャムって、「今の、なんか雰囲気よかったね」っていうのを録って、俺が家で作り直して、それをみんなに聴かせるっていう。でも、なんも出てこないときの無言の5時間ってすっげえ辛くないですか?
Minami ……その前に、うちら5時間も練習したことないからね。
一同 (爆笑)
ko-hey そうか(笑)。何も生み出せないとみんなのモチベーションも下がるから、曲作りでスタジオに入るときはみんなに何かしらネタがある状態で入りたいなとは思ってるんですよね。
Minami それはそうだよね。
SAMBU そのほうが自分の意志を提示しやすいってことですね。……ま、俺は全然曲作り頑張ってないッスけど、今ちょっと口挟んじゃいました。
一同 (爆笑)
-- KEN BANDはそういうやり方はできなさそうですか?
Minami できないね。
ko-hey まあ、バンドのスタンスによりますからね。俺はそれがいいと思ってやってるだけだし、難波さんが曲作りしようって言うときは「じゃあ、一日スタジオ入ろう!」みたいな感じになるんで。
-- KEN BANDはそれで不便を感じてないってことですもんね。
SAMBU うん……って俺はKEN BANDじゃないわ。
一同 (爆笑)
Matchan すげえな、SAMBUちゃん!(笑)
SAMBU 今、3人の気持ちを勝手に考えてもうた!
-- まあ、サンちゃんが答えたとおりということで(笑)。で、実際できあがった今回の音源ですが、お互いの曲を聴いてみての感想は?
一同 (長い沈黙)
Minami ……じゃあ、Matchan喋っていいよ。
Matchan あ、はい。NAMBA69らしさがちゃんとあるなと思った、かなあ?
Minami なんだよそれ!
ko-hey 薄みしかないコメントですね!
Jun Gray マスタリングのスタジオで初めて聴かせてもらって、「ああ、やっぱこう来るよね」っていうのは思ったよ。あと、音圧すげぇなとかさ(笑)。家帰って、まずうちらでいうチューニングのLOWの部分をどこまで落としてんのか自分で確認してみて、「ああ、一音落としてんだ!」とかさ。「うちらにはこの低音出ないな」って。
SAMBU へぇぇぇ。
Minami 最初の話と似ちゃうんだけど、うちらと全然違うジャンルって感じだよね。カバー曲も何でくるのかと思ったらblurで、俺はblur通ってないからさ、そういう部分でも世代の違いを感じた。
Jun Gray いい具合にニュースクールとオールドスクールって感じになったよね。
-- NAMBA69の3人はどう思いましたか?
Minami 「古臭ぇなあ」と思った?
K5 いやいや(笑)。
Minami 「こいつら終わったな」と思った?
K5 思ってない思ってない(笑)。
ko-hey どういう追い込み方ですか!(笑)。
K5 やっぱ、俺も90年代のパンクを聴いて育ってるから、古き良き……。
Minami やっぱ古いんだ(笑)。
K5 いやいや(笑)。まあ、そういうブレないスタイルを感じました。俺が一番引っかかったのは3曲目(「Pogo」)のMinamiさんのカッティングで、聴いててドキドキしました。
ko-hey すげえ正直な話なんですけど、俺、KEN BANDってフェスでよくやってる曲しか知らないんですよ。だから、今回トライしたっていう曲の振り幅は正直感じられなかったんですけど、「ああ、等身大だな」っていう印象を受けました。直しも少なくて、変な話、キックが多少ズレてようが……。
Minami&Jun Gray あっはっはっはっ!
ko-hey Matchanさん! 本当に申し訳ないんですけど、俺、すげぇドラムが気になって! 「KEN BAND、これでOK出したんだ!?」って。
Matchan それはねえ、正直言うとね、そうなの。
SAMBU 「そうなの」(笑)。
ko-hey 今はそういうズレをよしとしないのが主流で、キックなんていくらでも差し替えちゃいますよね。だけど、録った音そのままを敢えて出していくところにストロングさを感じたんですよ。音もアンプから出てる感じがするし、3曲目(「Pogo」)も一回曲を終わらせて、また“テンテンテンテケテンテン”って始まるところなんて、あのナマ感があるからこそグルーヴを感じられるんだと思うし、縦の音をばっちり揃えたらあの感じはきっと出ないからそれがすごいなあと思って。俺らも直しは少なくしてるんですよ。さっき言ったように、今はきれいに整えるのが主流だからこそ、俺らは生々しく残せるところは残そうって。だけど、KEN BANDはそれ以上に生々しくてパンクを感じたし、音楽のジャンル的にはメロコアからは外れてるんでしょうけど、大きく言えばすごくパンクだなと思いました。
-- サンちゃんは?
Minami Matchanに勝った?
SAMBU そこに関しては、さっき「勝つつもりで」って話はしましたけど、できたものを聴くと勝ち負けがどうしたっていう感覚にはならないですね。
Minami 要は勝ったんでしょ? だって、負けを感じたら言うもん、「負けました!」って。……勝ったんでしょ?
SAMBU いやいや! 何を言わせたいんですか!(笑)。
ko-hey サンちゃん、これね、俺がケンさんから「“ズラ”って言ってみ? なあ、言ってみ?」って言われるのと同じだよ(笑)。
SAMBU いやいや(笑)。……俺、KEN BANDのファンなんで3曲とも最高でした。
一同 (笑)
ko-hey きれいにまとめた(笑)。
SAMBU さっきJunさんが言ってたように、いつもの感じからは大きく逸れてくるだろうと思ってたんですけど、聴いてみたらやっぱりパンクなんやなと。だけど、勝った負けたはなんも思わなかったですね(笑)。
Minami くっくっくっくっ(笑)。
-- 話は変わりますけど、横山さんと難波さん、それぞれどういうリーダーなんですか?
Matchan ケンさんは“theリーダー”っていう感じがありますね。みんなの意見も聞いてくれるし、その上でケンさん自身が「こういうのをやりたい」っていう気持ちを持っていて、僕らを導いてくれる感があります。
ko-hey 難波さんは、「これぞ!」って感じのカリスマですね。ぶっ飛んでるんで、本当に。
Minami まあ、そうだねえ。
ko-hey ハイスタのツアーでケンさんがMCで「(難波の)通訳として俺がいる」みたいなことを言ってましたけど、俺でもわからないことが多々ありますもん。
Jun Gray あっはっはっはっ!
ko-hey でも、俺のなかのカリスマ像に難波さんってピッタリなんですよ! もちろん、見えないところで俺らのことを考えていろいろ動いてくれてるのはわかってるんですけど、メンバーとして考えると“theカリスマ”ですね。例えば、俺とサンちゃんでセットリストとかバンドのブッキングのたたき台を作るんですけど、俺らが真っ当な組み方をするのに対して、難波さんが斜め上からの視点で「それ、めっちゃいい!」ってアイデアをくれることが多々あるんですよ。
SAMBU 曲作りもそうやし。
-- あの人は閃きがすごいですよね。
ko-hey そうです。そういうのがすごいなあと思います。
-- Junさんは横山さんというリーダーに対してどう考えてますか?
Jun Gray Matchanが言ってるのに近いというか、多少、「うーん」って思っても、ケンに従って動いてみて間違えることって結果的にないんだよね。
-- これまでの活動のなかで、2人の人間性の変化は感じますか?
Minami そんなにないかなあ。だから説得力があるんだと思う。根っこの部分がブレないっていうか。
SAMBU 僕から見ると、難波さんは一時期どん底まで落ちてたんですよ。Hi-STANDARDというバンドをやっていたボーカル難波章浩がソロで動くことになって、ツアーを回ったりするなかで、動員とかいろんな面で耐え難い状況に直面しているのを俺は目の当たりにしたし、「これ、俺やったら耐えられるんやろうか……」って何度も思ったことがあるんですよ。その頃の自分は今ほどバンドに対して意識が高くなくて、どっちかと言えば難波さんに全て任せてた。難波さんがGOと言えばそれに従うっていう。そういうことを経て、ハイスタがまた動くことになったときに、僕が見えないところでもいろいろあったと思うんですね。自信を取り戻していくことだったり、歌うことに対して戦ってたと思うし、ベースを弾くことに対しても戦ってたと思うし、ステージに上ることに対してすらあの人は戦ってたと思うんですね。
-- うんうん。
SAMBU ko-heyが入る前に一度、「うちのバンド、どうしようか」っていうところまでいったことがあって、ツアー先で難波さんと2人でメシ行ったときに、「どう?」って聞かれて、「俺はちょっとキツいかな」って言ってたんですよ。だけど、難波さんはキーボードを入れたりして新しい風を吹かせたらどうにかなるんじゃないかって言ってて、でも俺はそれをやってどうにかなる状況じゃないって思ってた。そこで結局、ギターをもう一人増やすかってことになったけどやっぱりピンとこなくて、人の紹介でko-heyと一緒にスタジオに入ることになって。で、ko-heyといろいろ話をして、自分のなかで「これはイケるな」っていう気持ちになれたんですよ。そこから難波さんに対して、俺はちゃんと物を言うようになりましたね。
-- そうだったのか。
SAMBU それまではずっと難波さんが何か言うのを待ってたし、難波さんが言うことにはイエスで答えてたけど、ノーって言うべきときは言うようにしたし、自分がこうしたいってこともちゃんと伝えるようにしました。そうやって、バンドを動かす上でもメンバー全員の意見を尊重した上で自分が引っ張っていこうって覚悟を決めてから難波さんは変わったと思いますね。俺が変わったから、難波さんも俺に対して変わってくれたというか。
Minami (Matchanに対して)……これはSAMBUちゃんの勝ちだな。
一同 (笑)
K5 俺もサンちゃんと同じように「もう無理だ」って思ってたけど、そこにko-heyが入ってから変わりましたね。でも、俺はサンちゃんよりもエンジンがかかるのがもっと遅かったし、今もまだやらなきゃいけないことはたくさんあるんですよね。
-- 熱いなぁ。
Minami NAMBA69にMatchanを修行に出したほうがいいなあ。
Matchan そしたらもっと本音が言えるようになるかな(笑)。
Jun Gray こういう話を聞いてると、やっぱりNAMBA69はいい意味でフレッシュだよね。そういう動きができるようになったからこその今の勢いがあるっていうかさ。元々、ko-heyが入ってから雰囲気が変わったなっていう感覚はあったしね。ライブを見なくても、音源とかミュージックビデオからそういうのはわかるよ。ko-hey色が強く出てきてるなって。そのko-hey色っていうのは、3人でやってた頃からバンドとしてきっと求めてたところでさ。
SAMBU&K5 そうです。
Jun Gray そこをko-heyがグッと補ってんだなって感じた。
-- こんな2バンドでツアーを回るわけですね。
Minami ko-heyくんとMatchanで同じ部屋に泊まればいいんじゃない?
一同 (笑)
K5 それが修行だ。
ko-hey それ、俺の修行じゃないですか?
SAMBU 実はko-heyはそこが弱いんですよ。プライベート厳守だから(笑)。
ko-hey 間違いない! 「プライベートは一人にして」ってタイプですからね(笑)。
SAMBU みんなでいるときはワ~って一緒に騒げるいい感じのヤツなんですけど、プライベートになると急にスーンって(笑)。
一同 (笑)
Minami や、メリハリは大切よ! わかるわかる。
ko-hey 難波さんからも「ko-heyっていつも何やってんの?」って聞かれますもん。それぐらい俺って謎みたいですね。
-- じゃあ、ツアーは2人を同室にして。
ko-hey いや、それは本当にごめんなさい!
Matchan ……俺もそれはちょっと……。
ko-hey えっ!?
Matchan 俺、ko-heyくんと一緒にいたらすごく疲れちゃうと思うから。
K5 フラれた!!
一同 (笑)
Interview By 阿刀大志
-- 皆さん、仲はいいんですよね?
Jun Gray これで仲が悪かったら座談会なんてできないだろ(笑)。
Minami でも、何をもって仲良いって言うかだよね。
K5 まあ、たしかに!
SAMBU 俺とMatchanはよくメシ行きますけど。
Matchan よく行くよね。
-- ドラム同士は普段から交流があると。
Minami ドラムってそういう習性あるよね。
Matchan “習性”って俺ら動物!?(笑)。
SAMBU ギターとかボーカルの人ってよく言うじゃないですか。「まーたドラムが集まって……」って。でも、こっちからすると「お前ら、混じられへんだけやろ」っていう。
Minami 違うよ、自立してんだよ。
SAMBU ……オトナっすね!
一同 (爆笑)
-- 2組はけっこう対バンもしてますが、お互いに対する印象から聞かせてください。
ko-hey はいはーい! 俺が入ってからまだ対バンしてないッス! フェスでしか一緒にやってないッス。フェスは対バンではないし、まだハコでKEN BANDのライブを観たことはないんですよ。
-- そんな立場から見たKEN BANDってどうですか?
ko-hey やっぱり、ケンさんのカリスマ性はすごかったですね。圧倒的感がある。知名度も高いし、曲もNAMBA69より知られてるし、その時点で単純にうらやましいなっていうのはありますね。
-- 対バンしたことのある残りの5人はどうですか?
SAMBU バンド内でのケンさんと難波さんの立ち位置がそれぞれ違うと思っていて。KEN BANDにはケンさんという絶対的な人がいて、それを絶対的な安定感でほかの3人が支えるっていう形。うちらはKEN BANDと対バンした当時はまだ3人だったんですけど、難波さんは俺とK5にも自分と同じ位置まで来ることを求めるんですよ。だから、そういうバランスの違いを感じてましたね。KEN BANDの今がどんな感じかわからないので、今度のツアーでわかるんだと思います。
K5 Hi-STANDARDのメンバーがやってるバンドということで、似てるは似てると思うんですよ。だけど、KEN BANDは絶対的な王者なんですよ。昔からずっと王者。俺らがKEN BANDと一緒にライブをやっても、KEN BANDのファンは一切俺たちのことは見てくれない。「なんでだよ……」っていうあの悔しさ。チャレンジャーっていう気持ちはもちろんあったんですけど、俺にとっては「KEN BANDに勝つなんてムリムリ」っていう世界だったんですよね。だから、今回一緒にできるなんて夢のようです。
-- KEN BANDはどうでしょう?
Jun Gray 今、SAMBUはナンちゃん(難波)から自分と同じ立ち位置にいることを求められてるって言ってたけど、うちらもケンにはそれを求められてるの。たしかに、ケンという圧倒的な存在がいるっていう気持ちでバンドをやってた部分はあるんだけど、それだとあいつが納得いかない部分があって、「俺と同じとこまで来い」って言うのよ。
Minami NAMBA69はうちらと音楽的に似てるようでいて全く違うことをやってるから、難波くんの存在を抜かせば“今どきの若いバンド”っていうフレッシュ感があるよね。自分たちにはない新しい音楽っていうか。
Jun Gray Ken Yokoyamaっていうのは俺らが入るずっと前からあるわけじゃない? でも、NAMBA69はそれに比べたら歴史は浅いし年齢的にも若いから、そういうフレッシュ感は余計にあるよね。
Minami ああ、そうね。ko-heyくんが入ってさらにそういう感じになってる。
-- 最初にスプリットの話を聞いたときの感想は?
Jun Gray 去年のHi-STANDARDの活動は12月にツアーファイナルがあってひと段落したけど、ナンちゃんとケンのつながりは続いていくんだと思って、「そう来たか。いいねいいね」って。
Minami KEN BAND的にもずっと音源を出してなかったから、これを機会にやっと何かを出せるって気持ちもあったかな。
-- KEN BANDは『Sentimental Trash』(2015年9月)からリリースが空いてましたが。
Minami 去年はケンさんがハイスタに時間を持っていかれてて、KEN BAND的に曲を作る時間があんまなかったから、俺らも「どうなっていくんだろう?」っていう、不安……ではないけど、見えてなかったところがあったかな。
Jun Gray そこがNAMBA69とKEN BANDの違いで、ナンちゃんはハイスタと両立させなきゃっていうことを考えてたから、NAMBA69としても精力的に動いてたじゃん? でも、ケンは一度あっちに取り掛かっちゃうとかかりっきりになるからさ。そのことはうちらにも伝えられてて、「俺、ハイスタモードになっちゃうから」って。
SAMBU そういうとき、「KEN BANDやりたいな」みたいな気持ちにはならないんですか?
Jun Gray こっちにその気持ちがあってもね、あっちが「ごめん、やるってなったらそっちに行かなきゃいけないんだ」ってなるから。
SAMBU ああ、頭の切り替えがね。
ko-hey 逆に俺らは、「うちらは今のいい流れを止めたくないんで」って先に難波さんに言ってました。難波さん曰く、ハイスタのツアーが決まって一番イライラしてたのが俺らしくて(笑)。「あ、そうなんスね-。その間ライブできねぇじゃん。まあ、頑張ってください」みたいな感じだったって(笑)。だから気を使ってくれたのか、ハイスタのツアーの合間に10日以上空く期間を教えてくれたので、そこに自分らの企画をブチ込むっていう。
Jun Gray へぇ~。
ko-hey 俺、このバンドに入ってすぐの頃から難波さんに対して自分の考えを伝えてて。「俺はNAMBA69の他にバンドはやってないし、だからハイスタが忙しいとか俺には関係ない。俺はこのバンドが格好いいと思って、もっとよくしたいと思ったから入ったんです」って。だから、難波さんからは末っ子のワガママだと思われてるかもしれないですけど、そこは貫いていこうと。ただ、ハイスタのツアーの合間に無理やり自分たちの企画を組んで、それらを全部こなしたあとの難波さんを見たときは、「次からはちょっと気を使ってあげよう……」と思いましたね。難波さん、疲弊し狂ってたんで。
SAMBU あれはどう考えても大変やったもんな。でも、うちのバンド的にあのタイミングで止まるっていうのはちょっとあり得なかったし、むしろガンガンいかなあかん時期やったんで。
-- バンドに勢いが付いてきたタイミングでもあったし。
SAMBU そう。だからどうしても止められなかった。難波さんもそれを感じてくれたんやと思いますけど。
ko-hey Hi-STANDARDが動くことの大きさは俺らも分かってますけど、それに全部持っていかれちゃうとこれまで積み上げたものが崩れちゃうので。「またスタートか」ってなるのはね。まあ、何回でもスタートすればいいんですけど、少なくとも去年のタイミングで止まるの得策ではなかったなっていう。
-- こういうNAMBA69の状況はKEN BANDとしてはうらやましかったりするんですか?
Minami そこはわりとデリケートというか……難波くんももちろんそうだと思うけど、うちはケンさんの精神状態がすごく大切になっていて。今、どうしたいのかっていうのをケンさんから言ってくれるときもあれば、こっちが感じ取らなきゃいけないときもあって、しかもそれが間違えてるときもあるし、いろいろあるんだよね。でも、NAMBA69みたいに勢いを止めちゃいけないような状態でもなかったし、どっちかと言うと、ケンさんにはハイスタをちょっとやってもらって、KEN BANDは今年から再スタート、みたいなつもりで俺はいたんだよね。だけど、実際にケンさんから話を聞いてみると、ko-heyくん的な「もっとKEN BANDやろうよ」っていう声がほしかった、みたいなことを言ってたりして……。
-- 「そんなの知るかよ」っていう。
ko-hey 口が悪い!(笑)
Minami 「そんなこと言われても!」っていうね(笑)。でも、俺らは違う気を使っちゃったんだよね。
-- 難しいですよね。
Minami そう、難しいの。
-- 話を戻しますけど、今回のリリースに関してNAMBA69側はどう受け止めたんでしょう?
ko-hey 俺は単純にうれしかったですし、これまでの経緯をメンバーから聞いてたんで、自分のことよりもむしろ、他の2人に対して「やりましたね!」って、特にK5くんに対してすごく思ったんですよ。
K5 そう言ってくれてたよね。
ko-hey だって、ギターを始めるきっかけがケンさんで、難波さんのソロ時代(2011年~)からサポートをやってきて、今、こんな機会に恵まれるなんて奇跡みたいなもんじゃないですか。
SAMBU ホンマや。
ko-hey だから、「K5くんやったッスね!」ってそっちでうれしくなっちゃいました。俺がK5くんだったら泣いて喜ぶような話だなと思って。
SAMBU 僕もホンマにうれしかったです。でも、難波さんから「ケンくんがこうやって言ってくれてるんだよね」って話を聞いたときに、「これ、どうなってまうんやろう……?」って思っちゃって。本当なら「よし、やろうやろう!」で済む話なのに、ホンマにいい話すぎて「これ、ホンマにやっていいんか……?」っていう。
ko-hey 石橋叩きすぎて割るところですよね(笑)。
SAMBU そう! 考えすぎちゃって。でも、もちろん「やりたい」って気持ちのほうが強かった。俺、ハイスタに憧れてバンドを始めて、20代前半の頃とかピザオブデスからリリースすることが夢やったんですよ。あと、もうひとつの夢が、こないだ撮影した「NO MUSIC, NO LIFE」のポスタ-に出ることで、若干俺の力じゃないところで2つの夢が同時に叶うっていう(笑)。
一同 (爆笑)
SAMBU 「先輩方には申し訳ないけど、ラッキー!」みたいな。すげえうれしかった。その撮影でこの事務所に初めて来たときも、「おお~、これがピザオブデスなんか……」って内心思ってましたもん。ホンマにうれしかったッス。しかもツアーもやるって言うんだからなおさら。自分ら的にはこんなチャンスはなかなかないと思うし。
-- なるほど。で、そこから両バンドともに曲作りに入っていったと。こないだ難波さんから聞きましたが、NAMBA69は「KEN BANDに負けねえぞ」っていう気持ちギンギンで臨んだそうで。
SAMBU ケンさんっていうギターヒーローが相手ってことで、うちのギター2人はいろいろ思うところはあったと思うし、俺はMatchanに体の厚みとかキャリアとかいろんなところで負けてるから……。
Matchan ああ、そういうふうに見てたんだねえ。
ko-hey このほんわかした感じとかもね!
SAMBU Matchanって俺にはないモノを持ってるんですよ。俺よりも大きなグルーヴで叩けることだったりいろいろ。そういうことをメンバーそれぞれ感じてたと思います。
-- KEN BANDの前にまずMatchanに負けたくないと。
SAMBU せっかくスプリットを出せるんだから、そういうふうに思っておいたほうがいいと思ったんですよ。
ko-hey 俺に関して言うと、俺が前にやってたバンドのときから自分たちが作ってる曲が世界で一番格好いいと思ってやってるから今回も変な意気込みはなかったんですけど、単純に自分たちの曲を聴いてもらえるチャンスが増えると思ったんで、メンバー内で「こういう曲で攻めたほうが刺さるんじゃないか」みたいに狙って曲作りをした部分はあります。K5くんなんて俺と難波さんから相当追い込まれましたからね。
K5 そうだね。
ko-hey 「おめえ、そんなんでケンのギターに勝てると思ってんのかよ!」って。
SAMBU これ、マジです(笑)。
ko-hey 難波さんは「お前、俺がこの曲をこのバンドでやる意味わかって弾いてんの?」って。
K5 そういうふうに全プレッシャーが俺にのしかかってきて。本当にうれしいし、チャンスなのはわかってるんですよ。でも、ちょっとビビったりもするじゃないですか。「けっこういいフレーズができたな」と思っても2人からそんなこと言われるし、「これだけ考えたのにこれ以上どうしたらいいんだ。でも、まだ足りねえんだな……」って、毎日お風呂で考えてましたね。レコーディングに入ってもまだ、ko-heyとああでもないこうでもないってやってたし。
ko-hey K5くんが持ってきたフレーズに対して、「おめえ、曲の雰囲気をよくしようしてるだけだろ」とか言って(笑)。
一同 (爆笑)
K5 「雰囲気よくしちゃダメなのかなあ……?」って。
ko-hey 「飛んでこねえんだよ、K5のギターは!」って。
SAMBU それは、難波さんがHi-STANDARDというバンドでのケンさんのすごさをわかってるからやと思うんですよ。「ケンくんはそんなんじゃないよ!」みたいな。
ko-hey 俺のギターは意志の塊っていうか、「俺はこれなんで!」みたいな感じでいくから難波さんからはあまり言われないんですけど、K5くんは雰囲気をよくするだけなんで(笑)。
一同 (笑)
Minami “雰囲気をよくするだけ”って、それはそれでいいんじゃないの?
ko-hey でもやっぱり、難波さんは自分と同等の「俺はこれだ!」っていうものを求めてるんですよ。だから、フレーズそのものというよりも気持ちの部分が大事なんだっていう思いも込めて、「K5、もっと出せよ!」っていうのはけっこうありましたね。
K5 それだけ言われて言われて言われ続けて、最終的に「キターッ!」っていうフレーズができて、メンバーも「キターッ!」ってなったときはレコーディング史上最高にうれしかったですね。
ko-hey レコーディングが終わったあとに難波さんがスタジオに来て、「K5くんのソロ、どう?」っつって、「いやぁ、めっちゃいいの録れましたよ」「マジで!? K5、どう?」「やりましたっ!」とか言って、そのあとみんなで一緒に聴いてみたら難波さんのリアクションがめちゃくちゃよかったんですよ。「うわっ! K5、ついにきたな~!」って。そしたらもう、K5くんの表情が自信に満ち溢れちゃって!(笑)。
一同 (笑)
ko-hey もう、なんなら軽く泣いてんじゃないかぐらい喜んでて。
K5 泣いてたよ、泣いてた。すげえよかった。
ko-hey 難波さんと一番付き合いが長いからこそ、K5くんもそういう言葉がほしいってずっと思ってたと思うんですよね。
K5 そうだね。
ko-hey そこに対してやっとアンサーを出せたから、難波さんもあのリアクションだったんだと思う。だって、すげえ喜んでたもん、難波さん。
K5 そうだね。俺もすげえうれしかった。
Minami (Matchanに対して)……うらやましいでしょ?(笑)。
Matchan うらやましいなあ! 僕はまだそこまで到達できてないんで。だから、そこ(横山にほめられること)は僕の一生の目標っていうぐらいデカい話になっちゃってますね。
-- 普段はどういう反応なの?
Minami ふふっ。
Matchan いや、もう、ここでは言えないぐらいの……っていうのは冗談ですけど、「もっと頑張れ頑張れ! やればできるんだから!」ってずっと背中を押し続けてもらってる感じです。
Minami ……まあ、良く言えばね。
一同 (笑)
Matchan 良く言ってるんです!(笑)。
-- KEN BANDの今回の3曲はどういう流れで作られたんでしょう。
Jun Gray 今回の話が決まったときには1曲も新曲がなくて、「さあ、どうすんの?」って。
Matchan Minamiさんが持ってきた曲が最初で。
Jun Gray それが今年だもんね。
Minami 「Pogo」(Come On, Let's Do The Pogo)だね。でも、あれは元々ネタがあったんだよね。で、そのあとにすぐ今回の話があって、「じゃあ、これを使おう」って。
-- 特に相手を意識することはなかったんですか?
Minami 前のアルバムでいわゆるメロコアってところからだいぶ外れてきてたから、音楽的にも「KEN BAND、これからどうするんだろうね」っていうことで、実験ではないんだけど……。
Jun Gray ケンとも話したんだけど、多分、NAMBA69は相当気合いが入ってるし、直球でくるだろうっていう話をしてて、それに対して計算したわけじゃないけど、Minamiちゃんが言ったようにこっちは実験つうか、うちらのお客さんが考えるKEN BANDサウンドからはちょっと外れたとこにいったかなって感じはある。直球に対する変化球じゃないけど。
Matchan そこまで意識はしてなかったけど、結果的にそうなりましたよね。
Minami 難波くんたちを意識するというよりは、自分たちが面白いと思えることをやりたかったのかもしれない。
SAMBU ……オトナっすね!
Minami 年寄りだからね、もう(笑)。
ko-hey でも、それもバンドのカラーですよね。
SAMBU それが自然なんやと思う。俺らがKEN BANDと同じ感じで行くのも違うし。
K5 違うね(笑)。
ko-hey 俺たちはセットリストの組み方もそうなんですけど、常に直球で相手を倒していくスタイルが向いてると思うんで、今の話を聞いて「バンドのカラーなんだな」って思いました。
SAMBU KEN BANDって曲作りはがっつり4人でやるんですか?
Minami いや、3人。
Matchan ……いやいやいや(笑)。
一同 (爆笑)
SAMBU Matchanもいるよね? いるよね?(笑)。
Matchan いるはいる。
ko-hey 「いるはいる」、ヤバいっすね。
SAMBU Matchanはいます!(笑)。
Matchan SAMBUちゃんだけだよ~、そんなこと言ってくれるのは~(笑)。
座談会 Vol.02に続く
Interview By 阿刀大志
-- NAMBA69にはどういう意識改革があったんですか?
難波 俺らの改革はko-heyがはじめたの。あいつは2016年6月に新しくメンバーになったんだけど、打ち上げでK5とかに号泣しながら言うわけよ。K5は年上だし、普段は敬語なのに、「もっとやろうぜ!」みたいなことを言いまくるわけ。そんなことが何回もあった。それで、エイベックスから離れて、マネージメントを自分たちでやるようになって、さんちゃん(SAMBU)がブッキングをやるようになって、K5が物販やって、そうやって「4人で行くぞ!」ってなってった。
横山 良い話だなぁ。でも、俺らもそれをやらないとNAMBA69に勝ち目はないと思ってたよ。まだ時間がかかることだとは思ってるけど、それは練習のたびに言ってる。
難波 KEN BANDが成長したってことか。
横山 でもさ、“難波”って名前を冠したバンド、“横山”って名前を冠したバンド、どちらもハイスタの影響下にあるように見えるけど、それぞれ4人のメンバーがマジで取り組めばカッコよくなるよね。
難波 そう。バンド名を変えようかってなったときもあったけど、そこに“難波”って付いてるのにもかかわらず、4人がイーブンで物事に立ち向かうからこそ、そのバンド名の価値がでるんじゃないかなと思う。
横山 そうなんだよ。それは俺もまったく同じ考えで。俺たち2人以外の6人のメンバーには難しいことだとは思うけど、こうやって一緒にバンドを組んでる以上はそうやってもらいたいよね。
難波 まぁ、ぶっちゃけ言うと、バンド名なんてどうでもいいんだけどね。もはや、ただの名前でしかなくてさ。“NAMBA”っていうのがなくなったら検索しようがないし。
横山 そしたらただの“69”だからね(笑)。
難波 そう(笑)。だから自分らでZeppクラスのライブをやれるようになったら改名しようかなと思って……ウソウソ(笑)。……でもさ、Zeppツアーってすごくない? 自分らの作品でそんなことやったことないからさ、楽しみだよ。
横山 ツアー、めっちゃ楽しみだわ。作品のタイトルには“VS”ってつけて、それは俺が考えたんだけど、単に分かりやすいからそうしただけで、バチバチ感は――ナンちゃんを含めた俺以外の7人がどう思ってるかわからないけど、俺はまるでバチバチ感がないのね。楽しみしかない。当然、ステージに上ったら、嫌でもバチバチ感は出てくる。男だからさ、負けたくないっていうか。でも、楽しみのほうが強いんだよね。
-- NAMBA69は最近上り調子じゃないですか。難波さんは横山さんのサウンドのことをフレッシュと言ってましたけど、NAMBA69もすごくフレッシュで若々しいと思うんです。その若々しさってKEN BANDにはないもので。
横山 お前、なんてこと言うんだよ!
一同 (爆笑)
横山 ……まぁね、うん。年齢的にはね。
難波 そりゃ、平均年齢で言えばそうなのかもしれないけど。
横山 あとはやっぱり、バンドのキャリアかもしれないよね。
-- そうそう。一方、KEN BANDのライブからは“ホーム感”みたいなものが強くにじみ出てる気がして。お客さんとの信頼関係が強固になってると思うし、“いつでもここに帰って来いよ”という温かさがある。けど、NAMBA69はまだそこまでには達してない。そういう違いが面白いなと。
横山 うん。
難波 だってさ、KEN BANDのファンには、Hi-STANDARDよりKEN BANDが好きって人がめちゃくちゃいっぱいいてさ、むしろ「ハイスタなんて動かさないで、常にKEN BANDだけをやっててよ」って人がたくさんいるわけよ。その感じがすごいよね。そこが違うなと思う。
横山 作品作りでこれだけお互いに学ぶことがあったんだから、ツアーなんてやったらさらに色々なことを吸収しあえると思うな。だってお互いにないものを持ってるんだもん。めちゃ楽しみだよ。
-- 打ち上げはちゃんとやるんですか?
横山 ううん、それはやらない(笑)。だから、ko-heyとJunちゃんで飲みに行ってもらえばいいんじゃない?
一同 (爆笑)
-- 横山さんはNAMBA69の曲を聴いてどう感じましたか。
横山 さっき話したことと重なっちゃうけど、KEN BANDにはない整合性と“ナウさ”があるし、サウンドに関しても、ナンちゃんは「軽くない?」って言ってたけど、俺からしたらものすごい音圧だし……まいったね。
難波 俺も、初期パンクからいろいろなパンクを聴いて育ってきてるけど、KEN BANDにはマジでビビったな。アレンジ力とかの技術的なことだけじゃなくて、アティテュードも。俺らにはない、俺らには出せない、ケンくん特有の危険な香りがある。ヒステリックな部分っていうか。
横山 (笑)
難波 分かる? KEN BANDってケンくんがそれを持ってるじゃない? それってすごく強烈だよね。
横山 俺はナンちゃんのバンドを聴いて、俺にはないピュアさを感じたよ。
難波 KEN BANDのメンバーみんなそうなんだけど、ミュージシャンとしてのキャリアがすごい分、自由度が高いよね。音で遊んでる感じ。
-- 難波さんの歌詞はエモいですよね。
横山 そうだね。あれはもうまさに“ナンちゃん”だよね。ハイスタでもいっつも思うんだけど、ナンちゃんってピュアで不器用で、NAMBA69になるとそれを顕著に感じる。歌詞を読むと何を考えてるのかすぐに分かっちゃう。
難波 (笑)
横山 あとはバンドの感じね。NAMBA69をどうにかしたいってナンちゃんに遠慮せずに物を言うヤツが入ったのが大きいよね。まあ、ko-heyのミュージシャンとしての実力はそこまで把握してないんだけどさ。でも、ギターが巧いのは分かるし、その熱量がもたらすものはすごくデカいなって感じる。
難波 そうなんだよね。俺もハッとしたもん。まずアイツ、「売れたいんですよ!」って言ってきたからね。「そこの気持ちがなきゃダメじゃないですか」「何のためにやってるんですか」って。俺、“売れる”なんて考えてなかったから、ko-heyからそう言われて目が覚めた。
横山 あいつ、草食系みたいなツラしてガッツあるよね。
難波 そうだよね(笑)。
横山 あいつ、いくつ?
難波 32か33かなぁ。
横山 俺らよりいくつも下なわけじゃん。いつの世代にもああいうハングリー精神とかガッツを持った人って絶対いるんだよね。今ってゆとり世代とか揶揄されてるわけじゃない? もう、蔑称じゃん。でも、やってるヤツは絶対やってるし、燃えてるヤツは絶対燃えてる。ko-heyを見てるとそんなふうに思う。だって、あいつはハイスタをリスペクトしてくれてるけど、心の底では「ハイスタがなんぼのもんじゃい!」って思ってるからね、絶対に。そこに痺れる。
難波 でも、ハイスタのライブ観て毎回泣いてるけどね(笑)。あいつはピュアだなぁ。俺は大人になって忘れちゃってる部分だけど、あいつにはハッとさせられることが多いよ。
横山 俺、もしかしたらアイツと似てるところあるかも。
難波 あるよ、ある。すごくある。
横山 俺はハイスタのメンバーだけど、KEN BANDにいるときは「ハイスタがなんぼのもんじゃい」って思ってるし、そういう貪欲さ、ハングリーさっていうのが似てるかもね。
難波 俺ってハイスタの、あくまでもベーシストとして始まって、本当はボーカリストではなかったんだよね。ベーシストってさ、どちらかというと“脇役として底辺を支える”みたいな、KEN BANDで言うところのJunさんみたいなイメージで、そういう人に憧れてたし、ハイスタでもそういう人になりたいと思ってたの。その頃から自分のキャラがわかってたんだよね。でも、ボーカルがいなくなって、その流れで俺が代わりのボーカルになって、フロントマンになっちゃった。本当はそういうタイプじゃないのに。
-- はい。
難波 俺は、ケンくんみたいにとことん突き進む人と一緒にいることで輝けるタイプで、自分がリーダーシップをとっちゃうとダメなんだよね。それに見事に当てはまるのが3ピースのときのNAMBA69。俺が1人でガムシャラになっちゃって、一生懸命すぎちゃって、わけがわからなくなるっていう。で、俺は自分の性格がわかってたから、自分の横で輝いてくれる人が誰かいないかずっと探してたんだけど、そんなのいるわけがない。俺と対等で一緒にいてくれるような、ケンくんを超える存在はいない。だからそこは諦めてたのよ。だけど、そこにko-heyっていう存在が現れた。ギタリストで、俺の上ハモ(主旋律より上でコーラスをする)もやってくれて、しかもキラキラキャラで飛び出してくる人。ko-heyが来たことで、俺もやっと始まった。でもko-hey1人では足りなくて、K5と2人で立ち向かっていく感じ。
横山 実は俺もHi-STANDARDの前に4人組のバンドをやってて、俺はギタリストだったんだけど、ベースが抜けちゃったの。で、ボーカルがベースも兼任することになったのね。だけど、「ベースを弾きながら歌えない」ってことになって、一瞬だけ俺がギターボーカルになったことがあったの。でも、あんまりにもみっともなくて、「俺はフロントマンになっちゃいけないんだ」ってそのときに思った。でも、何の運命のいたずらか、今KEN BANDでフロントマンをやってるわけ……この話、どこにもしたことないわ。
-- それは知らなかったですね。
横山 1、2本ライブをやって……下北沢の屋根裏だったな。で、500円ぐらい払ってビデオを撮ってもらったんだけど、それを見て家で落ち込んだよ。そのうちそのバンドがダメになって、そのあとに組んだのがHi-STANDARD。だから俺たちは2人とも天性のフロントマンではなかったんだね。面白いね。
難波 でもさ、ギターだけだったとしてもケンくんはやっぱりフロントマンだよね。ギタリストでこんなに飛び出してくる人なんている? いないよね。
横山 それは多分、俺がギターヒーローに憧れてたから。ヴァン・ヘイレンのエディ・ヴァン・ヘイレンみたいな人に憧れてギターの世界に入ったから、自分の根底にそういうものがあるのかもしれない。ただ、自分では歌は歌っちゃいけないんだって思ってたよ(笑)。
難波 でもケンくんの歌、いいよねえ。今回、改めて思った。
-- でも、横山さんもボーカルに関しては試行錯誤でしたよね。
横山 うん、そう。KEN BANDを始めたときは自分でも恥ずかしかったし、人にガッカリされてることも伝わってきたし。でも、「恥をかくしかねぇ」って思いだけでなんとか続けてきて、そのうちになんとか歌えるようになってきたかなって感じ。
難波 上手いとか下手とかじゃないからね、本当に。
横山 そうなんだよね!
難波 今は上手いのがいいっていうふうになってきてるけど、俺らはそうはなれない。
横山 いやぁ、それでいいんだよね。街中にそういう音楽が流れて、「これが音楽なんだ」ってみんなが思い込んでしまったとしても、俺たちには俺たちが思い描いてる音楽像、ロック像があるわけだから、それでいいんだと思うな。現に俺、ヘロヘロの演奏のバンドの音源を聴くのが最近好きなの。「なんでこれ録り直さなかったの?」みたいな音源って意外とあるじゃない? そういうのってドラムとギターがズレまくっててダサいんだけど、それがカッコよく聴こえちゃう瞬間があって。リアルなんだよね。
難波 リアルだね。
横山 ピッチをキレイに整えてやってる音楽がリアルじゃないからよくないとは言わないし、言いたくもないけど……生身の人間がやってるズレを感じる音源が俺は好きだな。
難波 それが俺の言う「飛び出す」ってことなのかな。
横山 うん、そうかもね。レコーディングでギターを弾いてるときも、ちゃんとドラムに合わせると面白くないんだよ。これは技術的な話だけど、ちゃんとドラムに合わせるべきなのに、それよりもちょっと前にいないと嫌で、身体がどうしても動いちゃうんだよね(笑)。これはKEN BANDでもハイスタでもそう。
難波 それは面白いな。
横山 自分が聴いてきた音楽とか性格が出ちゃうんだろうね。わかってるんだけど止められない。
難波 でも、それがパンクっつーか、ハードコアっつーかね。
-- 面白いなぁ。
横山 面白いよね。俺ね、今回のオファーを受けてくれたNAMBA69にはすっごく感謝してるよ。
難波 いやいや、そんな……俺はオファーしてくれたケンくんにも、それを受け入れてくれたPIZZA OF DEATHにも感謝しかないな。
-- 美しいですね。
難波 うん。これがスタートって感じがするんだよなぁ。
横山 最初にも話したけど、こんなことって前例がないよね。時々考えるんだけど、すっごいビッグなバンドがいたとして、メンバーそれぞれが別でやってるバンド同士が一緒になってツアーやったり、スプリット出したりなんてするかなぁって。ミック・ジャガーとキース・リチャードがスプリット出すのかなぁとかさ。
難波 そうだよねぇ。
横山 そんなことやる必要がないからやらないことはわかってるんだけどさ。俺らだって必要はなかったかもしれないよね。でも「必要がないからやらない」ってもったいないと思う。
-- 一般的には、それぞれが自分のやりたい表現をするためにソロを始めますよね。
横山 俺らの場合はそこが違って、お互いHi-STANDARDがないからしょうがなく始めたんだよね。だからそれぞれのバンドをやるにあたって、Hi-STANDARDっていうファクターは避けては通れないわけ。公言してる通り、俺たちは仲が悪くなった時期があった。しかも、ものすっごく。で、2011年をキッカケに、何年もかけて少しずつバンドに戻っていった。その間にも衝突をしながら、『The Gift』ってアルバムを作って、あれだけ素晴らしいツアーをやった。今の俺たちは、みんなが愛している90年代のハイスタ以上に絆が深まってて、そのことを自分でも素晴らしいって思うんだよ。ほかにこんなことって起こりえないだろうね。
-- しかも、そんなツアーの前にスプリットの話をしてるっていうのがまたすごい。
横山 ふふふふ。
難波 とんでもないよね。
-- だって、ハイスタのツアーがどうなるかも分からない状態だったのに。大成功を収めたあとだから普通に受け止められてるけど。
横山 横山からしたらそんなの凡人の思考ズラよ。
一同 (笑)
難波 ぶっ飛んでるよね。
横山 頭のおかしい人間はいろいろなことを同時に考えちゃうズラ。順番なんか関係ないズラ。
-- ハイスタのツアーが上手くいかないなんてことは想像していなかったと。
横山 ううん。上手くいくも、いかないもない。
難波 だって、上手くいくって何が上手くいくんだって話じゃない? 動員とかの問題じゃないし、ヘボかったらヘボいし、実際、何本か落ち込んだライブもあったし。
横山 上手くいく、いかないの答えは3人の気持ちのなかにしかない。そこを納得させるだけの作業なんだよ。
難波 みんな「なんで今、ハイスタをやるんだ」とか、そういう理由を考えてるかもしれないけど、理由なんて3人が今やりたいからやるってだけであって、それ以外何もないもんね。
横山 それに関して、ハイスタを好きな人たちのことをいろいろ心配させてしまったことは、今となっては申し訳ないって思うけど、突き詰めて考えると今ナンちゃんが言ってた通りでさ。ハイスタと同じような温度でKEN BANDのこの先を考えたときに、一緒にやる相手はNAMBA69しかなかった。
難波 「THE GIFT TOUR」のさいたまスーパーアリーナが終わったときに、俺、ケンくんとツネちゃんの前で号泣しちゃったのね。いろいろな思いが高まってきちゃって。で、そのあと、心にぽっかり穴が空いちゃった。でも、ツネちゃんには申し訳ないけど、そのときにはこのスプリットが決まってたからそこまで寂しくはなかった。もしこの話がなくて時間が空いちゃってたらどうだったかなぁ。ただライブをやってるだけだったのかも。
-- あれだけのツアーを終えたあとに、よくすぐに気持ちを切り替えてそれぞれのバンドに向かえたなと感心してましたけど、むしろ今回のスプリットが2人をそうさせてたんですね。
横山 そう。だってあそこで止まっちゃったらただの仕事しないおじさんじゃん(笑)。まあ、仕事とは思ってないけどさ。でも俺も、ツアーが終わったあと、地元の友達から「お前、ちょっと燃え尽き症候群だな」って言われたよ。ちょっと様子がおかしかったみたい。ツアーが12月14日に終わって、年内は気を休めようって思ってたんだけど、思いのほかぽかーんとしちゃってたみたい。まあ、燃え尽き症候群って言うと語弊があるかもしれないけど、「気が抜けてるな」って。でもそれぐらい、今思い返してもいいツアーだったよね。
難波 うん。さっきツネちゃんには申し訳ないって言ったけど、ケンくんがこのスプリットの電話をくれたとき、「ツネちゃんにはもう話を通してるんだよね」って言っててさ、それが渋いし、優しいなって。
-- それは本当に渋いっすね!
難波 でしょ~?
横山 俺たちにとって、Hi-STANDARDは避けては通れないじゃない。Hi-STANDARDっていうのは、マジで日本一のバンドだと思うし、KEN BANDもNAMBA69もどうしたってそこの影響からは逃れられない。でも、ポジティブに考えるとでっかいファミリーでもあるわけ。親分集が集まるだけじゃなく、みんなで集まるところでもあるっていうか。今回ツネちゃんはいないけどさ。でも、今日も昼にツネと電話して、「今日、ナンちゃんと取材受けてくるんだよね」って話したら、「いいね!」って言ってもらえたよ。
-- いい話です。
横山 「じゃあ、ツネちゃんもドラム叩いてよ!」とかお客さんはリクエストするかもね。「1曲でもハイスタやってくれないかなぁ」とか。絶対にしません!(笑)でも、ツネちゃんもその場にいてくれたらうれしいよね。
難波 うれしい。ライブに来て欲しい。
横山 ステージ脇でも、会場の一番後ろでもいいからさ、見ててくれたらうれしいね。
-- エモいわぁ。
横山&難波 エモいねぇ。
横山 みんな苦しい思いをして、みんな困って、みんなケンカして、みんなわけ分かんなくなって。でもさ………こうなると全部オッケーだよね。
-- そうなんですよねぇ。
難波 18年。
-- ハイスタが止まってから18年。
難波 あのとき、俺たちの心のどこかで何かが壊れて、めちゃくちゃ大変な目にあって。そんな様子を見てた人たちが俺たちの動きを知っていい感じになってくれたらなってどこかで思ってるところもあるけど……それはもう、自然に届けばいいかな。活動休止中は各々大変だったけど、楽しいこともあったわけじゃん。ものすごく色々なことがあったわけじゃん。それも含めて、まだ何かが起ころうとしてるわけじゃん。その感じってすごいなって思うよ。
-- うんうん。
横山 俺とナンちゃんの関係ってもう、30年弱だからね。
難波 そうだよねぇ。
横山 ……あ、よし分かった! 思い付きだから、みんなへのメッセージとは言えないけど……俺たちみたいな経験を踏まえた上で、「みんな、ケンカするなよ」とは言いたくない。むしろ、すりゃいいじゃんって思う。でも、「人生何があるか分からないぜ」とは言いたい。
難波 ホントだね。バンドマンでもいっぱいいるじゃん。仲違いとかで解散しちゃって、別々になって。そういう人たちに「あんなふうにもなれるのか」って思ってもらってもいいし。
横山 憎み合いたければ憎み合えばいいし、刺し合いたければ刺せばいい。やれよって感じ。俺たちはお互い距離を取って、ちょっと悪口言い合うぐらいで済んだぜっていう(笑)。
難波 でも、タイトルの通り、これが本当のところの一番のバトルなわけでさ。お互いの道を歩んできた同士の勝負なわけじゃない。こんなにいい勝負はないよね。
横山 俺、ナンちゃんにそんなプレッシャーかけられたら、ギター空振りするぜ?(笑)
難波 いやぁ、でも、本当にそういう作品になってると思うし、ライブもそうなると思う。こんなに楽しい勝負ってないよ。音楽っていいねって思った。マジですごいなって。
横山 ね、うん。
-- みんな、音楽を諦めなかった。
難波 そうだね。音楽をやってたもん、ツネちゃんも。やっぱり好きなんだね。
-- これは誰か1人の思いだけでは起こらないことですし。
横山 みんな諦めなかった。で、今思うんだけど……3人ともお互いのせいにしてない。それはすごく感じる。活動停止したことに対しても「アイツがああしたからだ」「アイツがああだったからだ」みたいなことは言わない。去年1年を通して分かったけど、誰のせいにもしてない。「あれはしょうがなかったんだ」ってみんな普通に思えてるし、お互いその時期のことを憎んでない。
難波 もう「人」の問題じゃないんだろうね。そういう流れっていうか、運命っていうか。そして今、ここからまた何かが生まれて。
横山 想像もしないことが……とか言ってるけど、これで打ち止めだったりして(笑)。逆さに振っても何も出てこなくて、「ハイスタでアルバム出すしかないかなぁ、あと5年後かなぁ」みたいな(笑)。
-- まぁ、そうなったらそれはそれでいいですけどね。
横山 まぁね! そうだね。なんでもいいね!(笑)
難波 うん(笑)。ウケるな~!
-- 俺、この作品を語る上での言葉がちゃんと浮かんでこない。「エモい」「渋い」「熱い」しか出てこない。
横山 もしかしたら言語化できない感情なのかもしれないね。
-- こんな経験を今までにしたことがないから。
難波 そうかぁ。人生ってすごいよね。
-- みんな健康で、みんな同じようなテンションで音楽活動を頑張っているっていうのもなかなか難しいことだと思います。メンバーによっては活動のペースを落とすパターンだってあり得たわけじゃないですか。
横山 うんうん。あと、KEN BANDを大事にしたいっていう俺の気持ちを2人が理解してくれたこともデカいかな。
難波 そうだねぇ。Hi-STANDARDがちゃんと活動していくムードになったとき、そのことが大前提としてあったもんね。
横山 うん。俺は「KEN BANDがやりたい」ってことを2人にしっかり打ち出した。でも、それを受け止めるのは大変だったと思うんだよね。「なんでお前のペースに合わせなきゃいけないんだよ」ってなってもおかしくない。でも、ナンちゃんとツネちゃんは受け止めてくれた。
難波 じゃないと成り立たないっていうことをわかってたから。みんなの活動があってのHi-STANDARD。そこはよく話したよね。KEN BANDの活動がスローダウンしないようにHi-STANDARDをやっていくって。
-- メンバーそれぞれがいまだに成長できるってすごいことですよね。
横山 感覚的にいつもあるのは、前に進むことだけが全てではないってこと。斜めでも上でも下でも、とにかく進むっていうことが大事な気がする。
難波 なるほど。
横山 とにかく諦めず、休まないっていうさ。それを一番わかりやすく表現する言葉が「成長」ってことになるのかもしれないけど、成長なんていうのは後から実感できることでさ、もうね、とにかく掘り続けること。どこに向かってるかはわからねぇけど、「行くぞー!」っていう。疲れたら休むのもいいけどさ、それは掘り続けるために休むんであって、そうじゃないとエネルギッシュに生きられないよね。
座談会 Vol.01に続く
Interview By 阿刀大志
-- 今回のリリースに対する第一声としては、「まさかこんなことが起きるとは」って感じなんですけど。
難波 そうだよね、うん。
-- 2人の率直な感想は?
難波 そうねぇ、ケンくんから「スプリットやらないか」って連絡がきたのがハイスタの去年のツアー(「THE GIFT TOUR」10月26日~)の前だったんだけど、ビックリした。ビビったよ。
横山 うん。
難波 ケンくんなりのビジョンがあってのことだろうけど……話が壮大すぎちゃって、最初はイメージが湧かなかった。「ハイスタがこれからツアーをやろうとしてるっていうのに、なぜこのタイミングで……!?」って。でも、理解しなきゃと思った。
-- そりゃあ、ハイスタのことで頭がいっぱいの状況ですもんね。
難波 そう。音源出すにしてもまず曲がないし。でも「やるっしょ! やりますよ!」ってすぐに言ったよ。
-- 横山さんは、ハイスタのツアー前によくそんなアイデアを思いつきましたね。
横山 う~ん……ね! それは俺も不思議なんだけど……ハイスタはもちろん一生懸命やる。みんなで知恵と力を出し合って全力で作品を作って、全力でツアーをブチかます。それは当たり前なんだけど、自分のバンドのこと、KEN BANDのことを考えるのも当たり前で。どっちも120パーセントの気持ちでやってるし、120パーセントを要求されるなら150パーセントでやるのが当たり前だと俺は思うの。他の人にとってはどうか分からないけど、俺にとってはそうなのね。だから、ハイスタだってもちろんやる。KEN BANDだってもちろんやる。今の「もちろん」ってところ、太字で書いといてっ!
-- (笑)。
横山 だから、「THE GIFT TOUR」が終わったら、2018年からはまたKEN BANDをやるわけで、それにあたって「何が刺激的かなぁ」って考えたの。そのときに思ったのは、これは俺の話だけど、ただ曲を作って、次のアルバムを出そうって感じではなかったのね。そうじゃなくて、もっと刺激的なことをやりたいと思った。でもそれが何かまでは分からなくて、いろいろ考えてるときに、ふと「ナンちゃんはどうするんだろう……ん? ナンちゃん!?」って。そこで浮かんだのが今回のスプリット。これは絶対面白いと思った……っていうことがひとつ。
-- おお、唐突に“ひとつさん”が(笑)。
横山 (笑)だからね、これははっきり言っておきたいんだけど、「どっかのバンドとスプリットをやりたい」って発想から思いついたことじゃないんだよ。「ナンちゃんのバンドと何かをやる」ってことに意義を見出したの。
-- なるほど。「手始めにスプリットから動いてみよう」っていうことではなかった。
横山 全く違う。全然違う。ナンちゃんの、NAMBA69以外だったら意味がない。ナンちゃんとやるから面白い。そんなことを去年ハイスタのツアーの練習をしながら思いついて。
-- そんなタイミングでそんなアイデアが浮かぶのが異常なんですよ。
横山 ……ハイ!
-- 難波さんからはどんな返事がくると思ってましたか?
横山 う~ん、分からなかった。予想はつかなかったけど、とりあえず思ったことはぶつけてみるしかないと思って。そしたら、さっきナンちゃんは「えっ」って思ったって言ってたけど、実際には快諾してくれて。……話は飛んじゃうけど、今回出来上がったモノとか、俺たちのここまでのストーリーとか、全部のことに満足してるよ。
-- これ、10年前だったらまずありえない出来事ですよね。ある意味、ハイスタが復活するよりもすごいことだと俺は思っていて。
横山 おお、そんなこと言っちゃう?
難波 なるほど。
-- Hi-STANDARDって誰のものでもないというか、ひとつの大きな山じゃないですか。自分の意志とは別のところで動くというか。
横山&難波 確かに。
-- だけど、KEN BAND、NAMBA69っていうのは横山さん、難波さんそれぞれの核じゃないですか。他のメンバーやそれ以外の誰かが何を言おうが、自分自身が100パーセント納得しないと動かない。そんな2組が、あれだけバチバチしていた2人が、ここでがっちり組むというのはとてつもないことだと思うんです。そのことをお客さんには知ってもらいたいですね。
横山 うん、そうだね。そういう意味でも前例がないと思う……(ちょっと考えて)うん、だからみんなにもそういうことを知ってもらいたいって気持ちはもちろんある。誰もやらなさそうなことを俺たちはやり遂げそうだぜって。
難波 うん。
-- 難波さんとしても思うところはすごく大きかっただろうと思います。
難波 うん。大きかったね。だって、ケンくんと出会ってハイスタが始まって、そのハイスタの活動が止まって、そのあとにKEN BANDが始まって、いろいろな活動を経て今のNAMBA69があって……。形態は全然変わってるんだけど、そこも含めてひとつの……。
横山 うん、分かるよ。全部がひとつの流れだもんね。
難波 そうそう。そうやって流れてきてるんだよね。ケンくんもメンバーチェンジがあったり、いろいろあったわけじゃない? 俺とケンくんは2つの違った道を歩んできたんだよ。でも、最近対バンができたこともすごかったと思うけど、こんなにガッチリ何かをやるだなんてことは想像だにしなかったというか、本当に奇跡的なことだと思う。
-- 本当にそうですよね。
難波 そんなことをあのハイスタのツアー前にイメージできちゃう、ケンくんのその発想力ってすごいよ。……あと、ケンくんは俺らのことも考えてくれてるのかなって思った。NAMBA69にチャンスをくれたというか。今回のレコ発にしても、NAMBA69はこれまでZepp規模でツアーをやったことなんてなかったから、みんなに見てもらえるチャンスなわけで、そういうことも考えてくれたのかなと思う。
-- うんうん。
難波 ケンくんが最初の電話で言ってくれたのは、「ハイスタはこれからツアーもあるし、これまでもすごいことをやれてこれてる。だったら、今度はKEN BANDとNAMBA69っていうバンドもいるんだっていうことを世の中に見せつけようよ」って。「ハイスタのツアーが終わってからのことを考えると、別々に活動するよりも、一緒にやったほうが絶対に効力あるよ」って。そのイメージ力がすごいなと思った。
横山 これは俺がレーベルオーナーだから思うことなのかもしれないけど、CDや音源を作ることってすごく大変なことなのね。CDは売れないから作らないって人も今は増えてきたけど、やっぱりミュージシャンにとって作品は一番のステイトメントなんだよ。今回、こうやってスプリットを作るってことは、2バンドで47都道府県ツアーをすることよりも説得力があると思うんだよね。それをやれたのがうれしい。
難波 そう、一緒にツアーを回る可能性は今後もあるのかもしれないけど、やっぱり作品を持ってのツアーは次元が違うよね。しかもスプリットで。俺からしたら、それがピザからリリースされるわけじゃない? 復活したあとのHi-STANDARDの作品がPIZZA OF DEATHからリリースされたことももちろん感慨深かったけど、PIZZA OF DEATHのトップ・KEN BANDとのスプリットがピザからリリースされるっていうさ。これだけたくさんのバンドがいるのにNAMBA69が選ばれたんだよ。もちろん、ケンくんはハイスタ以降のストーリーを考慮して俺らを選んでくれたんだろうけど。KEN BANDはスプリットってこれまでやったことないでしょ?
横山 4 WAY SPLITはあるけど(2009年リリース『The Best New-Comer Of The Year』)。がっつり2バンドでっていうのはないね。ハイスタとWIZO以来かもね(笑)。
難波 そうだねぇ、本当に。
-- それは相当エモーショナルな気分になりますよね。
難波 うん。この気持ちをパッと言葉にするのは難しい。だってPIZZA OF DEATHも、ハイスタの活動休止と共にどうなっていたか分からなかったわけじゃない? でも俺が戻ってくるまでピザは守るからってケンくんは言ってくれたのよ。で、見事にその言葉を守ってくれた。ピザがなかったら、どこのレーベルがこんなことできるのよ。そういう意味ではピザが残っててよかったな。
横山 そうねぇ。
-- でも、一度なくなりそうになったことはありましたよね、ピザ。
難波 そうなの?
横山 そうだったっけ。
-- そんな話が出たことはありました。「じゃあ、(ピザを)潰す?」みたいな。もしかしたら横山さんは覚えてないかもしれないですけど。
横山 マジで? 覚えてない。本当?
-- 2000年代初期ですね。
横山 あ……Hi-STANDARDのために作ったレーベルなのに、そのHi-STANDARDが活動休止になっちゃって、スタッフはHi-STANDARDのために働きたかったのに「じゃあ、どうするんだ」ってなったときはあったよね。
-- そこを乗り越えてKEN BANDとNAMBA69のスプリットがあるっていうのが面白いというかなんというか……。
横山 今のPIZZA OF DEATHは当時と人が入れ替わって、Hi-STANDARDの活動休止以降に入ってきた人間がほとんどなわけ。でも俺とは気持ちがすごく通ってるの。だから、「NAMBA69とスプリットやりたいんだよね」って話したら、みんな瞬時に理解してくれたよ。「素晴らしいと思います。もしかしたらそれしかないかもしれません」って。
難波 マジで? いやぁ、面白いね。
-- タイトルこそ『Ken Yokoyama VS NAMBA69』ですけど、ミュージシャン同士の究極の愛情表現としてスプリットという形態があるのは美しいですよね。スプリットってお互いに対する愛情がないとできないじゃないですか。
横山 うんうん。あとは意識もないとね。
-- だからこのスプリットが実現したことで既に大きな意味があるというか。「音楽っていいな」って思いますよ。
横山 それはまさしく俺も思うところで。いくら話題になろうが、いくら売り上げが立とうが、好きでもない売れてるバンドとやろうなんてこれっぽっちも思わない。これっぽっちの「っ」10個くらいつけて! これっぽっっっっっっっっっっちも思わない。そこは繰り返しになるけど、ナンちゃんのバンドだから意味があって、他のバンドとはやる必要がないわけ。
-- そこまで思われてることは分かってました?
難波 そうじゃないと誘われないのは分かるよ。俺はケンくんの性格をわかってるから、「これはただごとじゃない」っていうか、「選ばれたんだな」っていうか。もちろんプレッシャーはあったけど、ケンくんの期待に応えるにはいい作品を作るしかないからね。……今回、お互いの曲はマスタリングのときまで聴かなかったんだよ。
-- それはスリリングですね。
難波 だから、どれくらいの感じでKEN BANDを超えていかなければならないのか想定できないまま、自分らのことだけ考えていくしかなかった。もし先に聴いてたら「これくらいでいけばいいんだな」って見当をつけられたんだろうけど。
横山 俺らも一生懸命考えたよ。実は今回、KEN BANDもNAMBA69もレコーディングエンジニアが一緒で、俺たちはミックスをその人にやってもらったんだけど、ナンちゃんのとこは海外のエンジニアに任せたんだよ。つまり、録った人は一緒だけど、その先が変わってくるってわけ。だから俺らもミックスの時は、「ナンちゃんのとこが海外でミックスとマスタリングしてくるってことは、これぐらいぶっこんでおかないとダメかな」とか、そういう意識がすごくあった。
難波 レコーディングはケンくんが先だったんだよね。狛江にあるメガハイパースタジオの松金さんって人が録ってくれて。
横山 ハイスタの『The Gift』を録ってくれた人。
難波 俺らはそのあとに録ったから気になるわけじゃん? だから、松金さんに「KEN BANDはどんな感じの曲ですか?」って聞いたんだけど、絶対口を割らなかった。カバーがどの曲かも言わなかった。
-- それは熱い。
難波 KEN BANDの音像は分かっていたつもりだし、それをイメージしながらやったんだけど、結局「そんなのをイメージしたところで始まらないし、NAMBA69の今をとにかく全力で出そう」っていう話になった。そこで俺たちが意識したのは、ヘビーなメロディック――ハードコアバンドに負けないような、ストロングな要素があるものを打ち出すことがテーマになったんだよね。
-- なるほど。
難波 俺たちはKEN BANDみたいにみんなでジャムって曲を作っていけるようなバンドじゃなくて、その都度ガッチリ作らなきゃいけないんだけど、それはライブに関しても同じで、NAMBA69は決まったことしかできない……って言うと大げさかもしれないけど、KEN BANDのライブは決まりがなくて、すごく自由ですごくロックでしょ? でも俺は、キャリアは長いけど、そういうことがバンドとしてできないのよ。事前にセトリをしっかり組んで、リハをしてカッチリ作っていかないとライブができない。だから、音源もガチガチに作り込んでいくしかない。
-- それぞれの楽曲についてはどうですか?
難波 1曲目の「LIVE LIFE」では、今までの俺らの流れ、集大成を作ろうってことになったんだけど、「なるほど、こういうバンドもいるんだ」「このタイプは苦手だ」って思う人もいるかもしれないってことを想定しながら作ったんだよね。で、2曲目の「PROMISES」は、作ってるときにPIZZA OF DEATHのロゴがすごく浮かんできた。
横山 へぇ~。
難波 PIZZA OF DEATHのロゴ、イコールその背後にいるPIZZA OF DEATHファン、Ken Yokoyamaファンが、「げげっ!」ってなるようなものを作りたかった。PIZZA OF DEATHを好きな人たちをできるだけ納得させたかった。100%はムリかもしれないけど、少しでも納得させたかったんだよね。
-- うんうん。
難波 『HEROES』(2017年 4月5日発表のミニアルバム)と『DREAMIN』(2018年1月24日発表のシングル)もそうだったけど、最近はko-hey(G)が曲を作ってきて、そこに俺がメロを乗せるってパターンが多くなってきてて。もちろん俺もアレンジするんだけど、大元はko-heyが持ってくるパターンが多かったのよ。でも、「PROMISES」だけは俺が最初からアレンジもメロも持ってきた。そうやって勝負したかったんだよね。
横山 へぇぇぇぇ~!
-- 一方、KEN BANDの制作はどんな感じだったんですか?
横山 もう俺の話はよくない?
一同 (爆笑)
横山 もう、今の話だけで胸アツでしょ!(笑)
-- たしかに(笑)。
難波 でもやっぱり、PIZZA OF DEATHにチャレンジするってことは意識したよ。
横山 こういう話のひとつひとつが面白いよね。ゲタゲタ笑うってことじゃなくて、興味深いっていう意味の面白さ。エモいし、熱い。
難波 ケンくんの曲が先に収録されることは決まってて、俺らは4曲目からなわけじゃん? ということは、みんなKEN BANDの曲は絶対聴くわけで、そのあとに「PROMISES」を最初に持ってくるのか、それとも2曲目にするのかっていうのは悩んだね。でも「最初は“俺ら”を見せようよ」ってことで「LIVE LIFE」を先に持ってきた。
横山 ……なるほどね!
難波 実は、マスタリングの前日まで「PROMISES」が1曲目だったのよ。で、俺はマスタリングの日に子供の入学式があって新潟にいたんだよね。だから、マスタリングの音も決まってたし、「もうこれで頼む」って他のメンバーに任せて。でも、前日になってko-heyに「やっぱり『PROMISES』は2曲目だ!」って。
横山 もう、熱い!
-- 横山さんも、難波さんのことをすごく意識してる感じがしました。
横山 それはね、実はほぼない。音楽的にも歌詞的にもNAMBA69とのスプリットということを意識したところはほぼない。ただ……いいものを作ってやるんだって意識はもちろんあったよ。ナンちゃんどうくるんだろう、俺たちもいいものを作らなきゃって。だけど曲作りに関しては、KEN BANDの『Sentimental Trash』(2015年9月2日発表のアルバム)から続く、次の道を探そうよっていうテンションではいたかな。
-- あくまでも今のKEN BANDのムードに従ったと。
横山 うん、そうそう。
難波 俺らは正反対にKEN BANDを意識しまくった。しまくらざるを得なかった。
横山 もちろん俺たちも意識はしたよ。「こんなことでNAMBA69に勝てると思う?」みたいな会話も出たし。でも、音楽的なところは意外とKEN BAND本位でやった。
-- 楽曲的にも歌詞的にもすごくオールドスクールじゃないですか。だから、それは難波さんを意識してのことだったのかなと。
横山 うん、ナンちゃんたちは今っぽいサウンドでくるだろうから、俺たちはこうしよう、みたいなそういう作戦はひとつもなかった。
難波 俺ね、今回のKEN BANDにめっちゃ新しさを感じたんだよね。一周回ってこれが一番新しいのかもってくらい。
-- それはどういうことですか?
難波 なんだろうなぁ……今、世の中が一周回って90年代リバイバルが起こってて……デザインとかサーフィンとかスケートとか、なんでもそうじゃない? アメリカはロックシーンもそういう感じになってて、10代の子がNOFXとかBad Religionみたいなバンドを始めてるんだって。だから、日本もそうなるんじゃないかなと思った。でね、マスタリング後の音源が上がってきて、データをもらって家で聴いたわけ。俺、ちょっと震えたもんね。ケンくんの曲が始まった瞬間から「ヤラれたな」って。ぶっちゃけ言うけど、俺らのテーマは「KEN BANDには負けない」なのよ。そこに負けなければ、誰にも負けないところにいけるっていう、そういうモチベーションがあった。ピザへのチャレンジも含めてね。
-- それはわかります。
難波 で、俺たちは『DREAMIN』を作り終えたところで、「さあ、こっからどうするか!」っていう最強のモチベーションになってたわけ。「ここに人生賭けなきゃどうするの!」ってくらいのさ。でも、KEN BANDのロックな感じを聴いて、もう軽く落ちながら「ああ、俺たちはまだイケないんだ……」って感じになっちゃってさ(笑)。で、4曲目の俺たちの曲がはじまって……「あれ? 音、ちいせぇ?」とか「俺たちのエネルギー、イケてる?」ってドキドキしちゃって。やっぱり、人のはすっげぇよく聞こえちゃうんだよね。「やっべぇ、これ、負けてねえ?」って。
-- “隣の芝生は青く見える”的な。
横山 俺らもさ……1、2、3曲目がKEN BANDなわけじゃない? で、自分たちのマスタリングを終えて、「さぁ、曲順と曲間を決めましょう!」っていう段階で初めてNAMBA69の曲を聴いたわけ。そのときはガビーンとなったよ。
難波 ホントに?
横山 「俺ら間違ってないよね?」ってナンちゃんと同じような心理になった。
難波 KEN BANDの曲にはズシンとしたところがあったの。それもサウンドの質感とかじゃなくて、エネルギー的なもの。物凄くフレッシュだった。「これ、本当に10年以上やってるバンドなの?」って思うくらい。アレンジも自由で、シュワーって音が飛んできたんだよね。ギターもすごく飛んでくるわけ。「やっぱりすげぇな」って思ったよ。
-- そうだったんですね。
難波 うちらだってK5(Gt/Chorus)とko-heyがすっげぇアレンジを頑張ってたの。だけど、「あれ? 俺、嫉妬しちゃってる?」って率直に思った。「大丈夫、これ?」って。でも、「PROMISES」まで聴いて、ようやく「キタキタ!」と。それで最後の「SONG 2」でハッピー感や自由な感じが出てきて、「大丈夫だよね」ってようやく思えた。で、そのあと何回も何回も繰り返し聴いてると、今度は作品自体の面白さにハマっていくわけ。しまいにはCDに焼いて自分の車で浜を走りながら聴いてさ、「この作品、やっべーぞ!」って。
横山 アハハハハハ!
難波 そのときにはもう、KEN BANDと比べるとかじゃなくなってて、客観的ないちパンクロックリスナーになっちゃった。ハイスタの作品を作ったときも面白かったけどさ、それとはまた違う、ものすごい感じのができちゃってるなって。自分がそこに関わってるとは思えないくらいヤバい作品だなって思っちゃった。
横山 今の話を聞いて率直に思うのが、ナンちゃんって面白いなってことだよね。
-- それはこの場にいる全員が思ってます(笑)。
横山 うん、ナンちゃんって面白いよね。
難波 うんうん……でさ、俺、ちょっと軽く落ちてたんだよね。まず、家のスピーカーで聴いて……。
横山 この話、まだ続いてるの!?(笑)
-- そうみたいですね(笑)。
難波 俺、しーんとしちゃって。みーとぅん(難波の奥さんの愛称)も「やっぱり、ケンさんのギターって飛んでくるんだよね。すごいねえ」っていうわけ。俺らはカッチリしすぎちゃってるかなと思ったけど、それしかできないし。
横山 お互い、それぞれにない味があるからさ。俺らは俺らでNAMBA69のサウンドが「整合性取れてるぞ」って思うし。俺らにない新しさ、“ナウさ”がある。うん、そうは思うんだけどさ……CDに焼いて浜を走っちゃうとか最高だよね(笑)。
難波 自分の車とかみさんの車で2台あるんだけど、車乗り換えて聴いちゃったもんね。
一同 (爆笑)
横山 もう、最っ高! 俺、今回の対談はナンちゃんにたくさん話してほしかったんだよね。今の話とか聴けてうれしいわ。
難波 だって、それくらい人生賭けてたから。ちょっとでも「やっぱり、あのときああしとけばよかった」って思うようなことはしたくなかったんだよね。
横山 今度は俺の話なんだけど、俺も俺で人生を賭けててさ。さっき話したことの繰り返しになるけど、音楽的には『Sentimental Trash』の次のKEN BANDをどうしようかってところから始まったんだけど、精神性の部分で「これでいいのか?」っていうところを夜中にメンバー3人を呼び出してミーティングしたもん。俺らも今年に入ってから曲作りを始めたんだけど、本格的に曲作りに入る前に「この話をしないと俺は先に進めない」っていう話をして。
-- 珍しいですね。
横山 去年の「THE GIFT TOUR」の間にNAMBA69はライブをやってたのよ。俺、それが異様に眩しく見えてたの、実は。
難波 NAMBA69は休める立場じゃないからさ。
横山 でも、メンバーからナンちゃんへの突き上げもあったと思うんだよね。ハイスタのツアーが2週間くらい空いてるときもあったし、「だったらちょっとやりたいっすよ」って話もあったんじゃない? 俺は、KEN BANDでそんなことを言われても絶対やらないの。メンバーもそれをわかってるから言ってもこない。つまり、気を使われてるわけ。それをナンちゃんのとこはやっちゃうわけよ。KEN BANDのメンバーを責めるつもりはないんだけど、端的な例としてうらやましく思えた。
-- そんなことを思っていたとは意外です。
横山 で、ナンちゃんは喉を壊してハイスタのツアーに戻ってくるわけ。でも、ひとっつもイヤな気分にはならなかった。ハイスタのツアー中、ナンちゃんの喉のことは一生懸命考えてたけど、NAMBA69に対して「もうライブやらないでよ」とはひとつも思わなかった。それを超えてナンちゃんはここに来てるわけだから。話は戻るけど、KEN BANDのメンバーが俺のことを尊重してくれてる、気を使ってくれてるっていうのはすごくうれしいんだけど、俺に対して甘えてるところもあるわけ。それが猛烈に気に入らなくて、3人を呼んで深夜のファミレスで大ミーティングですよ。
-- ファミレスで(笑)。
横山 で、俺は「Ken Yokoyamaなんてバンド名でやってることでこうなってるんだとしたら、バンド名変えよう」とまで言ったのね。でもそれはあまりにも大きすぎることだから、その代わりに、Ken Yokoyamaってバンドに対して「みんなが1/4ずつ関わってくれ」っていう要求をした。だってNAMBA69はそれをやってるんだもん。例えば、ライブのやり方にしてもそうなんだけど、俺は無茶苦茶やるから、横山健のワントップを他の3人が支えてくれている感じなんだけど、結果的にそれが変わらなかったとしても、精神的には1/4ずつでありたいっていうことを去年のハイスタのツアーを通して感じちゃったの。ハイスタってどんな時でも1/3ずつで、その素晴らしさを改めて体感しちゃった。体感してなかったらこんなことは思わなかったと思う。
-- 「THE GIFT TOUR」はそれだけ大きな影響を与えてたんですね。
横山 そう。あれを通過したから、ものすごくKEN BANDが物足りなく感じてしまった。でもKEN BANDはやりたい。だったら話すしかない、って。「THE GIFT TOUR」があって、自分でナンちゃんとのスプリットを決めて、自分で自分の首を絞めていきまして(笑)……だから俺も人生賭けたね。
難波 それ、半端ないねー。KEN BANDにそこまでの意識革命が起こってるとは思わなかったな。でも、それは音にも出てるよね。こう言っちゃなんだけど、前はケンくんのギターと声があまりにすごくて、他の3人はちょっと控えめにしてるのかなってところが表れちゃってたけど、今回はみんなで飛び出してきてるもんね。俺らは「4人の塊でいくしかない」っていう意識革命がずっと前にあったけど、なかなか上手くいかなくて。だから、KEN BANDが1回でそこまでなったのはすごいよ。
Vol.02に続く
Interview By 阿刀大志