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RAZORS EDGE 6th Album [RAW CARD] JKT画像

RAZORS EDGE 6th Album [RAW CARD] Release: 2015.10.07  / Code: PZCA-75 / Price: 2,190yen(without tax)

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Track // 01. A.P.T.N / 02. RAW CARD / 03. BLURRED ZEAL / 04. AMERICAN DOG / 05. WE UNITE / 06. CRAZY CONFUSE / 07. START TODAY / 08. FAITH / 09. CREATE ONE / 10. GET THE PUNK OUT / 11. KILLED BY MOSH / 12. THARASH IT UP / 13. YELLOW MINORITY / 14. MACHINE / 15. NINJAH MOSH / 16. 素晴らしいPUNK / 17. WE ARE RAZORS

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RAZORS EDGE RAW CARD TOUR 2015-2016

ツアーファイナル 2016.02.28(日)心斎橋BIGCAT

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RAZORS EDGE 6th Album [RAW CARD] ALBUM REVIEW

Review.02 石井恵梨子

スラッシュ・ハードコアの快感を、ものすごいアドレナリンが猛スビードで押し寄せて日常の景色など何もかも吹っ飛んでいくような興奮、と定義すれば、まさしくレイザーズ・エッジはそのド真ん中を走り続けているバンドである。この音楽を浴びている間だけは無敵になれる、最強になれると考えるファンは多いだろうし、今や不動となったメンバー4人が誰よりその自負を持っているはずだ。

ただ、それぞれに仕事を持ち、父親の顔さえ持っているメンバーたちは、みんなと同じような日常を生きる常識人である。面白くないことも、我慢や苦悩もあって当然。では、そんな日常をブッ壊すためにバンドをやっているのか、レイザーズは憂さ晴らしなのかというと、これもまた違う気がする。

現体制なって10年、バンド自体は19年。もうみんないいオトナで、十分わかっているのだと思う。日常=つまんない、では決してないことを。仕事は考え方次第で面白くなるし、生活には喜びも愛情もたっぷりある。世の中を見れば腹の立つことは多いが、知らねえと背を向けていては何も変わらない。体力も気力も知力も充実している今、彼らの日常はとても「詰まった」ものになっているのだろう。知らないくせにこれだけ書けるのは、『RAW CARD』の音が、そういった感覚とぴったりイコールになっているからだ。

前作までのレイザーズ作品は、いかにライヴハウスで一体になれるか、全員で楽しめるかというポジティヴな面が強調されていたが、今回はもっとパーソナルだ。閉じているという意味ではない(僕の根っこが明るいから曲が明るいんです、と笑うKENJIは今まで閉じた作品など作ったことがない)。ただ、みんなのためでなく、あくまで自分たちの足元から発信しようという前提があったのではないか。自分たちの好み、自分たちの見た景色、自分なりの意思表示と音楽観。5年7ヶ月ぶりというスパンも関係しているのか、改めてレイザーズ・エッジの根幹に立ち返ったような激しさと楽しさと放埒さが溢れかえっている。最も明るく響き渡る16曲目が「素晴らしいPUNK」というロックンロール・ナンバーで、続くラストが「WE ARE RAZORS」というのも、ラモーンズばりの威風堂々。小賢しい変化球アピールなど今さら不要、ただ自分たちの今の姿を出せばよいという自信を感じさせる。

そして歌詞。日本語が多く、政治的な主張も増えているのは大きなトピックだが、それは驚くべき変化というより、今この日本で生きている人間なら当然感じていること、ましてやパンクスを自負するなら叫ばずにいられないことだろう。次のテーマは反戦・反核にしましょう、ではない。ニュースを見ていて口をつく言葉が「アンポンタン!」で「嘘つき!アチョー!」なのだ。可笑しさと鋭さのギリギリを突く言葉選びはもちろんのこと、普通の会話と英単語を音にどう乗せていくかというセンスも秀逸。もう、これはKENJI RAZORSの人柄だろう。

そう、改めて感じるのはKENJI RAZORSという人間の面白さなのだ。くそったれ、ボケ、こざかしいわ、と連発しながらこんなに楽しそうに見えるシンガーは他にいない。また考えてみれば、信じられない猛スピードの中に身を置く興奮が、彼にとってはもう人生の半分以上を占める「日常」なのだ。それでいて、会ってみれば常識人。なんかこれってすっごく変なことじゃないだろうか。20年目を目前に届いた『RAW CARD』。これぞレーザーズ節といえる楽曲が満載のアルバムを前にして、なぜか急に背筋が寒くなった私である。

Review By 石井 恵梨子

Review.01 阿刀“DA”大志

RAZORS EDGEというバンドはスラッシュ・ハードコアシーンにおいて、非常に稀有な存在である。サウンド同様に短命なバンドが多い中、彼らはコンスタントに活動を続け、なんと来年結成20周年を迎える。世界中のどのスラッシュバンドも恐らく到達していないであろう、未知の領域に彼らは突入しているのだ。

ここまで息の長い活動を続けられている大きな要因のひとつは、ほぼ全曲の作詞作曲とサウンドプロデュースを手掛けるヴォーカルKENJI RAZORSの存在。ハードコアに限らず、様々な音楽から影響を受けている彼のクリエイターとしての手腕は過去の作品(オルタナティヴ色の強い「MAGICAL JET LIGHT」(05年)等)でも明らか。そして、元々メンバーの出入りが激しいバンドだったが、ここ10年はメンバーが固定していることも大きい。

今作『RAW CARD』は、オリジナルアルバムとしては実に5年7ヶ月ぶりのリリース。この間、この4人組は復興支援や主催フェスの開催などで全国を駆けまわっていた。例えば、東日本大震災の復興支援のための無料野外フェス“YOUR FESTIVAL”の主催、KENJI RAZORSの地元・広島で起こった土砂災害の復興支援にまつわる様々な活動、さらにバンド主催のサーキットフェス“STORMY DUDES FESTA”を2013年に立ち上げ、ソールドアウトを記録するまでのイベントへと成長させた。この約5年半の間に4人が見て、考え、行動に移してきた全てを集約し、20周年を目前に控えた今、「RAZORS EDGEとは一体何なのか」という問いに対して改めて答えを出したのがこの作品なのである。

これまで様々なサウンドを柔軟に採り入れてきたバンドだが、最終的に彼らが今作で提示したサウンドはファストでポップでキャッチーで、なおかつヘヴィ。オルタナティヴでトリッキーなサウンドも得意とする彼らだが、今作では「これぞレイザーズ!」と胸を張れる一撃必殺の技のみをグッと詰め込んだ。

1曲目「A.P.T.N.」から怒涛のスラッシュサウンドで鋭く切り込み、間髪入れずに超高速の表題曲へと雪崩れ込む展開は最早レイザーズのお家芸。ただ速いだけでなく、曲中にグッとテンポを落とすことでヘヴィなグルーヴを生み出すテクニックは、長年のライヴ活動で得たものに他ならない。そう、どの曲もライヴでプレイすることをこれまで以上に意識したものになっているのだ。スクリームを多用した力強いヴォーカルもその現れと言える。

サウンドだけでなく、これまでで最もメッセージ色の強い歌詞にも注目。震災以降に感じた様々な思いが強烈なメッセージとなり、作品の中核を担っている。「FUCK OFF NUKES ! 汚すな!」(「CREATE ONE」より)、「オマエの 無関心 ファック!」(「BLURRED ZEAL」より)といったストレートな怒りを表現した言葉が並ぶ。それと同時に、団結をテーマにした曲もある。Oi! Punkの要素が強い「WE UNITE」は、広島土砂災害の復興支援ライヴ用に用意した曲がモチーフになっているという。どの曲にも強いメッセージが込められており、これが今作をより力強いものにしている。

結成20周年に向けた第一歩として、これ以上ない強力な作品がここに誕生した。

Review By 阿刀 “DA” 大志

RAZORS EDGE 6th Album [RAW CARD] RELEASE INTERVIEW


-- ところで、20年もリーダーとしてバンドを引っ張ってきて疲れることはなかったの?

いやぁ、もう疲れたよ(笑)! 2008年から2009年辺り、割りとバンドの調子が良かった時期があったじゃない? CDも売れて、グッズもたくさん売れて。でも、その後急にグッズの売り上げが落ちて「デザインが良くないのかな?」とか、「バンドが良くないからだ」とか、「年取ってきたからだ」とか(笑)、そういうことを考えるのが一時期すごく嫌になって、レイザーズのTシャツをデザインしたくなくなったんだよね。だって、一週間ぐらい頑張って描いた絵のTシャツが全然売れないんだよ? ……でも、調子いい時はツアー中にホテルでちょちょっと書いたやつを入稿してそれがすげぇ売れたりして、まあ、そういう手抜きをしてたから売れなくなったんだと思うけど(苦笑)。でも、あの頃はあの頃でバンドの事務仕事から曲作りから、デザインまで忙しくて。自分一人で全部やるのはいかんなと。事務関係は今は分担でやるようにしたんだけど結局、未だにデザインだけは一人でやってるんだけどね(笑)。

-- でも、一時期ケンジコは大阪を離れて東京に住んでる時もあったけど、一人でやってるのと周りにメンバーがいるのとでは違うんじゃない?

うん、今は全然違う。前はメンバーが何考えてんのか分からない時もあったからね。メールとか電話だけじゃ分からないし。

-- ケンジコって「俺についてこい!」って感じのリーダーではないじゃない? それでこれだけ長くバンドが続いてるのは面白いよね。

俺は本当に良い曲を書いて、「この人と一緒に音楽やりてぇ!」って思わせなくちゃダメだっていう強迫観念をもってバンドをしてるから。俺は別に人間的に大したヤツでもないし、そうするとバンドとして物を創るのが楽しくないと一緒にバンドをやってる意味はないわけじゃない? ミサイルなんか、前は一緒に酒飲んでるだけですげぇ楽しかったけど今は全く一緒に飲まないし(笑)、あいつと俺が今、何でつながってるかって言ったら、俺が書く曲だからね。それがないといつまでもつながってくれないだろうから、そういう恐怖感はある。

-- へー! その恐怖感がこれまでケンジコを駆り立ててきたの?

バンドを結成した時からそういう思いはずっとあるかも。もし俺が自分で曲を書かないメンバーだとしたら、曲を書くやつがどんなに良い奴でも、どんなにいいMCしてても、書く曲がダサくなったら絶対に一緒にいるの嫌だもんね(笑)。自分でもそう思うからこそ、そんな気持ちでバンドをやってるのかも。

-- だとすると、リリースがなかった期間のストレスは大きかったんじゃない?

でも、「俺はこれで鍛えられてるな」って思いながら続けてた。「音源を出せないなら何をしなきゃいけないのか」とか考えてさ。たぶん、「SONIC」を出してから2年、後の2012年とかにレーベルから「アルバム出せ!」って言われてたら出せたとは思うけど、そんなに良い作品にはならなかったと思う。

-- それはなんで?

今回のアルバムのクオリティが高いっていうのもあるんだけど、何がしたいのか分からないようなものができてた気がする。

-- その感覚ってなんだろう。当時は自信を失ってた?

曲はずっと作ってたんだけど、さっきも話したように震災後はそれを出せるほど自分の中で整理がついてなかった。歌詞が全く書けなかった。どんな歌詞を書いても誰かがいい感じにツイートしたような歌詞になりそうだったし、自分でもしょうもないと思うような歌詞になりそうな感じもあったし。でも、今はそんな風に思わないんだよね。自分が作った歌詞にストレスがない。

-- 震災後の状態からどうやって「よしやるか!」っていうモードに切り替わったの?

伝えたいことが出てきたことと、今回のアルバムの1曲目と2曲目が出来たことが大きいかな。メンバーからも「キタんちゃいます? この2曲を推していくしかないでしょ!」って言われて、曲に押されていった感じはあった。そこから、これまでにプリプロしてきた曲の中からどれを入れて何曲のアルバムにしようかっていう風に組み立てていったんだよね。

-- 起爆剤になったのはあの2曲だったんだね。

そんなにめちゃくちゃ良い曲ってわけじゃないんだけどね(笑)! でも、誰が聴いても「クソレイザーズじゃん!」って言わせる自信はあった。

-- 「レイザーズを取り戻した!」って感じ?

あ~、その感じはあったね。「GLOW IN THE DARK」とか昔みたいなテンションの曲をずっと作りたいと思ってたんだけど、そのレベルにポンと到達できたのが「RAW CARD」。でも、もうちょい良い曲書かなあかんなとは思うけどね。

-- 正直だなぁ(笑)。まあ、たしかに今作にずば抜けた曲があるかって言われたらそうではないと思う。だけど、作品としての全体的なクオリティはすごく高い。

うん。本当にムダがなくて、「この曲なければいいのに」っていうのもない。最初から最後まで楽しく聴けて、「もう1回聴こう」って気持ちになれる。「THRASH'EM ALL!!」(1stアルバム)って全曲一緒みたいな潔さがあったじゃん? あれに近い空気感が今回もあるよね。

-- ああ、それは思った。あのアルバムと似たような尖り方をしてるよね。

今回は1stとピザデビューの2nd(「RAZORS RISING!!!!」)の間だと思ってる。ピザから初めてリリースする時にこのアルバムを出せてたらもっと売れてたよ(笑)。

-- あっはっはっ! ところで、今回はきっちゃんと一緒に作った曲がチラホラあるみたいだけど。

ここ何作かは、自分で打ち込みとギターで作ったデモ音源を元にスタジオでみんなと合わせるやり方をしてたんだけど、今回は弾き語りで出来たものからドラムと2人で何曲か作ってみたんだよね。今までは時間がかかるからそういうやり方は嫌だったんだけど、宅録のデモから作るのにも時間がかかるようになってきてさ。それだったらスタジオでパッと合わせた時のいい感じを拾って作ったほうが曲自体も良くなりそうだなと思って。そういう作り方をしたのが、「WE UNITE」と「素晴らしいパンク」と「START TODAY」。

-- どれもメロディが強い曲っていうのが面白いよね。きっちゃんと一緒に作ったって聞くとチョッパヤな曲になりそうなイメージだけど。

そうそう。「WE UNITE」は、広島土砂災害のチャリティライブで初めて弾き語りをやったんだけど、その練習をしてるときにできた曲なんだよね。それで、「この曲はすげぇ良いからバンドでも使おう」と思ってきっちゃんを呼んで作った。

-- 1、2曲目もそうだけど、今回はキーになる曲が多いよね。

うん、今回はけっこう多いかも。だから逆に飛び抜けた曲がないって印象になるのかも。

-- ああ、どれも平均点が高過ぎて。

頭から8曲目ぐらいまでの曲順なんて特に自信満々だからね。「良い曲から順番に入れてけ!」みたいな(笑)。

-- 後半も好きだけどな。

実は後半の方がレイザーズらしいんだよね。今までやってきたことの集大成みたいな。

-- ひとつ気付いたのは、「いかにもレイザーズだな」って感じる曲ほど、タイトルに“NINJAH” とか“PUNK”とか“THRASH”っていう、レイザーズっぽいワードが入ってるという。

あはは! そういう言葉って何回も使わない方がいいんだけどね(笑)。

-- でも、それもレイザーズらしさだと思う。あと、リフでいうと、「THRASH IT UP」が好き。

このリフは独特ないなたさがあるよね。

-- ケンジコ自身も「まだこんなリフが出てくるか」って言ってたけど。

この5年7ヶ月の間に4、50曲は作ってると思うんだけど、その中から勝ち残ったリフとメロディだから。アンガス・ヤング(AC/DCのギタリスト)も俺のリフの作り方を見習って欲しいよね! あっはっは!

-- (笑)あとは、ケンジコのボーカリストとしての存在がより前に出てきたと思った。

「SONIC」のツアーからがなって歌うようになって、それから5年以上ライブで培ったものを今回はそのまま出せたかな。

-- なんでライブでの歌い方を変えたの?

喉が枯れないように歌うのが嫌になって。ちゃんとケアしても枯れるときは枯れるし、シャウトしなきゃいけない時にシャウトしてないハードコアの曲なんて生きてないからさ。たとえ明日歌えなくなったとしても、元々自分がやりたかったスタイルを無理してでもやってみようって。それで毎回叫んでたらだんだん枯れないようになってきた。だから、自信満々に歌えてる感じが違いを生んでるのかもしれないね。

-- ここにきて進化を遂げたと。あと、今回は日本語の曲が増えました。

増えたねぇ。さっきも少し話したけど、言いたいことが固まってきたことで「英語じゃ伝わらねぇや」と思って。

-- 詩の内容も「THRASH'EM ALL!!」ではただの悪口だったけど、今は深みが全然違う。

ああ、自分ではそういう自覚はないかも。今も昔も文句だけ言ってる気分。

-- 人間として成長してるってことだよね。

あはは! まあね。前だったら「ボケ!」だけだったものが、そこにちゃんと理由をつけて言えるようになったし。

-- 話を聞いてると今回は本当に自信作なんだね。

そうだね。ウソがないというか、等身大の作品になってると思う。オーバープロデュース感がないんだよね。

-- うんうん、そう思う。そして、その感じはお客さんにも伝わると思う。しかも、今後の展開を期待させる内容にもなってると思う。

ああ、それは間違ってないよ! 今回外した曲をもう一回突き詰めたらこれぐらいの作品は作れそうな気はしてる。

-- ここにきてバンドのモチベーションの高さを感じます。じゃあ、せっかくケンジコ1人に話を聞いてるので、他の3人について解説してもらおうかな。まずはミサイルから。

ミサイルはレイザーズの屋台骨。ベースがめちゃくちゃ上手いのよ。レコーディングで録った音を聴いても、全くと言っていいほど波形がドラムに対してズレてない。こんなに速い音楽をやってるのに大きい会場でも観衆に伝わるのはミサイルがいるからなんだよね。ミサイルに合わせてギターを弾いたり、ドラムのテンポを整えたり、歌を乗せていけば、必然的に聴きやすいサウンドになるっていう。バンドの精神的な部分を担うような頭を使うことは全く出来ないんだけど、あいつがいるからレイザーズが続いてるっていうのはある。

-- なるほど。じゃあ、きっちゃん。

きっちゃんは今、レイザーズで一番クレバーなんじゃないかな。悩んだ時にはまずきっちゃんとタカくんに相談するんだけど、きっちゃんは冷静にビシっと物を言ってくれることが多い。音楽をやることに対してすごく前向きだから、すごく話がしやすいんだよね。

-- タカくんは?

いつ寝てるのか分からないぐらい努力家だから、最近はちょっと疲れてそう。ちゃんと寝て欲しいなと思う。あと、ライブのスケジュールとか移動に関してマネージャー的な動きをしてくれるし、RAZORS EDGEが一番変わったのはタカくんのギターが入ってから。そのお陰で俺が作りたい曲が作れるようになって、どっしりしたサウンドを出せるようになった。しかも、俺が難しいことをやらせようとしても嫌な顔せずに真面目に取り組んで、ものにしてるからね。見習うべきところが多いよ。

-- 今のレイザーズは本当にいいバランスで成り立ってるんだね! 一時期は「この先どうなっちゃうんだろう?」って不安に思うこともあったけど、こうやって話を聞くとこれからもしっかり活動が続いていくんだなってますます思える。

年はとるし、パンクとかハードコアをやってる人たちは「あと何年出来るんだろう?」って思いながらみんなやってると思うんだけど、俺は逆に燃えてくるんだよね。「55歳になってもあんなダイブがやれたらすごいよな」って思ったらやりたくなっちゃう。

-- このインタビューを経て、今までで一番「RAZORS EDGEって良いバンドなんだな」って思ってるかもしれない。

周りの人からしたら、俺のワンマンバンドみたいな感じのイメージだもんね。「なんで3人はあのちんちくりんに付いていってるんだろう?」って(笑)。

Interview By 阿刀大志

-- 今回、ケンジコ(KENJI RAZORS)と他のメンバー3人とで分かれてインタビューすることになったんだけど、これはナタリーはやってたKEN BANDのインタビューがきっかけなんだよね? なんでこの形でやってみたいと思ったの?

バンドってリーダーがいてその人が曲や詩を作ってる以上はさ、話を聞くのはその人だけでいいわけじゃん? 横山さんもそういう類の人だと思うんだけど、横山さんの急病で急遽他のメンバーのインタビューになってしまいましたっていうのを読んだ時に、「これ、面白そう!」と思ったんだよね。実際に読んだら面白かったし、横山さんが受けてる他のインタビューを読むと話がさらに立体的になって興味深いなって。レイザーズも今までのインタビューは俺が話してるのを他のメンバーが横で聞いてることがほとんどだったけど、「本当はどんなこと思ってるんだろう?」って(笑)。それで、「俺が思ってもないことを話してくれたら面白そうだな」と思ったんだよね。

-- 3人のインタビューは既に終わってるけど、どんなこと話してると思う?

「あの人、A型って言ってるけど絶対A型じゃねーよ」みたいな感じじゃないの(笑)?「言ってることコロコロ変わりすぎやん」とか。

-- いやいや! むしろ、いい話をしてるよ。じゃあ、それは読んでからのお楽しみということで。では、本題に。レイザーズは来年結成20周年で、今のメンバーになってから今年で10周年です。今のレイザーズってケンジコから見てどういう状態だと思う?

今はねぇ、一番悪い時期を越えて良くなりつつある感じ。一緒に過ごしている時間が長いから、そういう人間関係的なものが最終的にバンドの力を産むと思うんやけど、「雨降って地固まる」って感じかなと。

-- 悪かった時期って?

震災後、モヤモヤしてたことが全然解消されないままバンドをやってた時期があったんだよね。今はそこからやっと抜けてきたかなと。あの頃はガムシャラにやりすぎて、「バンドすんのってこんなにしんどいんや」って思った。

-- でも、がむしゃらにやってきたことが今、ちゃんと結果につながってきてると思うけど。

そうだね。バンドをやることってライフワークでもあるんだけど、これまで自分の中では趣味のように楽しんでた部分があって。でも、震災以降はそれだけじゃ済まなくなったじゃない? そのせいで苦しんだし、悩んだりもしたんだけど、そのお蔭でやりたいことがちゃんと見つかった。だから、今回のアルバムを出すまで5年7ヶ月もかかったけど、それはやりたいことを見つけるために必要な時間だったのかなって気はしてる。だから、前作のSONIC(「SONIC!FAST!LIFE!」2010年3月リリース)からガラッと変わった精神性を今回はスッと出せた。

-- 無理をしなくても楽に。

そうそう。「俺は俺らしくいればいいんだ」って開き直れた気がする。「盛り上がる曲を書こう」とか、「お客さんが喜ぶMCをしよう」って頭で考えたものは、まあ、ダメなのよ。その場で思いついたMCほど自分の本当に言いたいことが言えてるんだよね。曲も同じで、素直に出てきたものをやるのが一番レイザーズらしいなと思って。今までも好きな曲を書いてきたつもりなんだけど、今回はそれがより強くなってる気がする。

-- 今までの作品って、よくも悪くもケンジコの中で設定したコンセプトが強すぎたと思うんだよね。極端に歌モノに寄ってた時もあれば、オルタナティブ魂が爆発してた時もあったり。だけど今回はそういうものを一切感じなくて、作りたいものを素直に作ってる感じがした。

そうだね。ずっと一緒にやってきたメンバーが得意なことをやってもらった部分はある。今まではオルタナティブなものでも歌モノでも、メンバーに出来ないことがあると「チャレンジしようぜ!」ってケツを叩かなあかんかった部分もあんねんけど、そのためにはまず音楽性を理解してもらうところから始まるから大変じゃん? だから、今回はそういうストレスが無いようにしたところはある。

-- ケンジコのそういう狙いは全部音に現れてると思う。こういう作品になったのは、きっちゃん(KRASH)がPANGEA(大阪アメ村にあるライブハウス。2011年4月オープン)を始めたり、ストーミー(STORMY DUDES FESTA。レイザーズが2013年から始めたサーキットイベント。大阪アメ村にある複数のライブハウスで行われる)を始めたりしたことによって、バンドの土台がレイザーズ史上最も強固になってることも影響してるのかなって思ったんだけど。

影響がないってことは絶対ないよね。きっちゃんは今までレイザーズの一番後ろにいる隠れキャラみたいな存在だったけど、今ではライブハウスの店長として最前線でいろんなバンドと話をしてるっていう。そういうメンタルな部分で強さは出てきてるのかもね。

-- ストーミーを始めたこともバンドのモチベーションを保つのに一役買ったよね。

今回の作品はストーミーを3年やってきたことがものすごく反映されてる。あのイベントに誘ったバンドのエッセンスが曲の中にもちょこちょこあると思うのよ。Slight Slappersとか、Slangとか、Edge of Spiritとか、自分達が持ってない要素を持ったいろんなハードコアバンドの面白さや楽しさに負けちゃいらんねぇっていう感じを出せたと思う。あとはTHRASH ON LIFE(KENJI RAZORSの主宰レーベル)から出してるバンドの連中がありがたいことに俺のことを慕ってくれて、格好良い作品を出してくれて。そうなると「この子らに面白くないと思われるような作品は出されへんやないか!」と。そういういろんな思いをストーミーを始めた3年で整理できて、それによって新たな目標ができたし、バンドの血となり肉となった部分はあったかな。でも、こんなにストーミーが自分たちを助けてくれるとは思わなかったけどね。これがあるかないかで今回の作品は全く違ってたと思う。

KENJI RAZORS Interview Part.02 へ続く
Interview By 阿刀大志

-- では、せっかくこの場にケンジコがいないことだし、KENJI RAZORSという男について話を聞かせてください。

MISSILE 「この人、計算してないな」って思う部分もあれば、「そんなことまで考えてるんや」っていうところもあったり、何も気にしていないようでものすごく気にしてたりもする。

-- これまでの長い付き合いで変わったなと思うところはある?

MISSILE 変わったところはいっぱいあるんですけど、最近の活動を振り返ると根本的には変わってないのかなっていうのが僕なりの見方ですね。

-- TAKAくんは?

TAKA ケンジさんはプレイヤーとしてもクリエイターとしても今でも格好良い。バンドのことをすげえ考えてるところもあったり、「ほんまに考えてるんかな?」って思うところもあったり、そういうところが魅力的なのかもしれん。支えてあげたいってわけじゃないけど、ほったらかしてたら死んでしまうやろなって。

KRASH こないだ実際にほったらかしにしてたら、酔っぱらって道ばたで寝て財布パクられてたからな(笑)。

-- マジで(笑)? でも、TAKAくんの表情を見てると、10年ずっと一緒にいてもTAKAくんにとってケンジコはヒーローなんだなって感じる。

TAKA うん、ヒーローヒーロー。

-- それはずっと変わらないんだね。

TAKA 俺が一番RAZORS EDGEの音楽を好きなんやと思う。成長させてくれたなとも思うし。でも、ケンジさんが5年前に東京にいた頃は、一人にさせてしまってたんかなって。バンドとして大きくなってきた時期にリーダーのケンジさん一人にいろんな仕事を背負い込ませちゃって、結局コントロールできへんくなってしまって。あの時は「あ、しまったな」って思った。そこから俺もバンドの活動に対して積極的に突っ込むようになった。

KRASH 西川くんには「自分でやらなあかん」みたいな部分が強くあったから、あんまし他のメンバーにやらせたがらへんかったのよ。こっちから意見を言っても通らない状況が続いたり。それで半ば諦めてたところもあったけど、今TAKAくんが言ったように、ちょっと体制を変えないとあかんなってことで、今は前とは変わったけど。

-- 今後のレイザーズはどうなっていきそう?

KRASH 俺的にはバンドの運営に関してメンバーそれぞれの役割分担が上手くハマれば今よりいい状態に持っていけると思うし、そこがハマらなければ厳しくなっていくんじゃないかなと。

-- じゃあ、今が重要なポイントだったりするんだ。

KRASH うん、そう思ってる。

-- レイザーズってファストな音を鳴らしてるバンドの中では世界的に例を見ない存在になってると思うのね。19年も休むことなく活動を続けてきてて、コンスタントに作品を続けてるバンドって他にないでしょ?

TAKA まあ、短命なバンドが多いもんね。

-- それで結成以降、ばりばりライブを続けた結果、今のレイザーズって速い上にサウンドの重量感が半端じゃないじゃん。こんなバンド、いないと思うんだよね。

TAKA ラッシュボールに出させてもらったり、いろんなフェスで何千人何万人って人たちの前でライブをやらせてもらった経験が生きてるのかもしれん。「この熱量を後ろの人にまで届けるためにはどうしたらいいのか」って。

KRASH 元々、オーバーグラウンドで戦いたいみたいな意識を西川くんは持ってたし、ピザに入って最初のレコーディングの時も、「単純に良い音で聴きやすいものにしたい」っていう、ハードコアとかファストコアの美学とは真逆なスタイルを採ったことが今につながってるのかな。常に上を見てるからこそここまで続けられてるというか。

-- 一時期、「レイザーズ、大丈夫かな?」って思う時があったけど、そこを乗り越えた今は逆に「レイザーズ強ぇな」って。

KRASH 実際、LOVELY以降お客さんが入れ替わったもんな。

-- でも、そこで止まらずにいろんなことを経てきたからこそ今の強さにつながってるんだと思う。みんな、当たり前のようにレイザーズが存在してると思ってるかもしれないけど、今も前線でファストな音を鳴らし続けてるRAZORS EDGEという存在を改めて評価すべきなんじゃないって思うんだよね。

3人 あざす!

MISSILE じゃあ、それを各方面に発信していただければ(笑)。

-- じゃあ、最後の締めとして、3人からケンジコへメッセージをお願いします。じゃあ、MISSILEから。

MISSILE 僕らはお互い人生で一番長い時間一緒にバンドをやっていて、いろんな変化があったと思うし、これからも何年活動が続くかは分かりませんが、もう身体を壊さずに、時々美味しいお酒を飲んで、家族のために自分のために、そしてライブハウスに来てくれるお客さんのために高く跳び続けてください。

-- 意外とエモいのきたな。

3人 (笑)

TAKA ロマンチストやからね(笑)。

MISSILE 足腰のトレーニングだけは怠らないように。今後ともよろしくおねがいしまーす。

-- じゃあ、きっちゃん。

KRASH お互い素直じゃないんでぶつかることも多いけど、基本的には信頼してるんで、これからもよろしくお願いします。

-- じゃあ、最後TAKAくん。

TAKA さっきも言ったけど、ミュージシャンとしてもクリエイターとしても格好良いし、俺のヒーローなんで、そろそろ大阪でも重鎮クラスに入ってくると思うし、ハードコアやパンクのベテランとしてしっかりやってほしいなと思います。

-- レイザーズってこんなに真面目なバンドだったんだね!

TAKA 真面目よ! すっごい真面目(笑)!

KENJI RAZORS Interview Part.01 へ続く
Interview By 阿刀大志

-- 今のメンバーになってから今年でちょうど10年が経ちました。

TAKA あ、そうなんや。

-- 10年前の8月にTAKAくんが入ったからね。振り返ってみてどう?

TAKA 全くそんな感じはないね。振り返ってる余裕もないぐらい必死なのかも。

MISSILE まだそんなもんなんかっていう感じもあれば、もうそんなにって感じもある。この10年で各自の生活が変わってきて、バンドに対するスタンスとか考え方とか使える時間が変わってきたから、今はその中でどうやって折り合いを付けるのかっていうところに重きを置いてる感じがする。

KRASH 時間の流れは昔と比べると早く感じるかな。10年っていう数字を聞くと、この先あと何年ぐらいバンドをやれるのかなって思うけど、やってる分には気にはならないかな。

-- いい意味で、バンドとしては今が一番落ち着いてるのかなっていう気がしていて。焦ってもいないし、だらけているようにも見えない。

KRASH そういう風に見える部分があるのは分かる。

MISSILE 一生懸命走りまくって、結果的にいいペースを見つけられたのかもしれないですね。

-- 周りの動きを気にせずに「このやり方でいいんだ」って吹っ切れるようになったのかな?

KRASH 個人的には昔よりは気にならなくなった。

TAKA たぶん、この3人は10年前からそんなに揺らいでないと思う。ケンジさん(KENJI RAZORS)は舵取りやから一番気にしてるかもしれないけど、俺らはそんなに気にしないタイプなのかも。

-- MISSILEも言ってたけど、環境が変わっていくと、自分の中で折り合いをつけるのは大変なわけじゃない? その結果バンドを続けられなくなってもおかしくなかったと思うんだけど、最近のレイザーズからはそんな感じがしなくて。

TAKA 震災があったり、一時期東京に住んでたケンジさんが大阪に帰ってきたり、リリースは空いたけどバンドとしては自然な流れだったのかも。

-- この5年7ヶ月、作品作りが止まってる間、3人はどう感じてたの?

TAKA 曲自体は作ってたよ。

MISSILE 会場限定盤を作ったし、プリプロもしてたし、今回の曲でもネタだけ生きてるのもあるし、ずっとサボってたわけではないんですよ。

-- でも、たまってた曲を世の中に発表できないフラストレーションみたいなものはなかった?

TAKA 俺はなかったわ。

KRASH 俺もリリースがないことに対する不満はなかったかな。

TAKA 焦ってもしゃあない、みたいな。

KRASH この5年の間に考え方がもう何周もしてるから、結果的にはこのタイミングで良かったと思う。今のみんなの生活からすると多分、活動のペースは落ちていってたと思うから、たとえ定期的にリリースしてたとしても結果的には現状維持かそれ以下になってたのかなって。

-- でも、震災を受けていろんなバンドが作品を通して自分たちの思いを表現していったわけじゃない? そんな中で自分たちが止まってたことに対して焦りがあったんじゃないかと思ったんだけど。

MISSILE スピーディに動けなかった分、自分らの足場を固めて動こうと思ったところはあったかも。間髪入れずに動けてたらまた違ってたのかもしれないけど。

KRASH バンドで生活してる人たちはクイックに動けると思うけど、仕事をしながらやってるバンドはそこに対して気持ちはあっても、なかなかすぐに動くっていうのは難しい。中途半端に動いてやりっぱなしみたいなことになるのも嫌やったし、復興支援してる人たちのサポートはしてたつもりだけど、自分たちが矢面に立ってやるテンションにはなれなかったかな。

-- 5年7ヶ月前を振り返ってみて、バンドとして何か変わったと思う? 逆に変わらない部分ってある?

TAKA 根本は変わってないかな。特にケンジさんとMISSILEは変わってない感じはする。きっちゃん(KRASH)はPANGEA(大阪アメ村にあるライブハウス。2011年4月オープン)を始めたことが大きかったと思う。

KRASH ちょっと話はズレるけど、個人的にはバンドのことを考えてドラムを叩こうと思うようになったかな。昔は自分の気持ちを見せることが大事だと思ってたし、今でもそう思ってるんだけど、もっとバンドとして総合的な聴こえ方を大事にしたいと思うようになった。さっき焦りの話がでたけど、体力的なこととかライブでのパフォーマンスを考えると、活動のピークはこの1、2年じゃないかなと思ってて。今はまだ衰えたとは言われへんように出来てると思ってんねんけど、あと何年上がり続けられるかって考えると、この1、2年がすごく大事だなって。

TAKA 5年前ぐらいまでは、自分が好きで入ってきたRAZORS EDGEをどうやって格好良く見せるかっていうことだけに必死に取り組んできたのが、だんだん自分の意志が芽生えてきて、バンドの運営にも首を突っ込むようになってきたかな。

MISSILE 僕個人は根本的には変わってないですね(笑)。小さな変化はたくさんしていると思うけど、そういう変化を受け入れたり楽しめてると思う。より自然体でできるようになったのかな。

-- なるほど。では、今回これだけ時間が空いて、どうやってアルバムを作るモードに切り替わったの?

TAKA 単純にケンジさんが曲を持ってくる機会が増えてきて、それでアルバムを作るイメージができるようになったかな。

-- そもそも、今のレイザーズの曲作りってどういう風に進むの?

KRASH 西川くんの打ち込みである程度完成してるのもあれば、スタジオで構築するのもあったり半々。ちょっと前まではデモ音源で完成されたものが7、8割って感じだったんやけど、西川くん(KENJI RAZORS)の意識が変わってきたのかな。

-- 今回はきっちゃんと一緒に作った曲が3曲あるよね。

KRASH そうだね。レコーディング直前に作った曲はそういうのが多いと思う。よりシンプルで分かりやすい突き抜けた曲を作りたいってなったときにパソコンに向かって一人で構築してると、曲をどんどんこねくり回して結果的にすごく複雑なものになったりするから、この作り方は向いてないなぁって西川くんが言ってた。だから、俺が単純にリズムを叩いて、それにギターと歌を乗せたらしっくりきたっていう曲が多かったんじゃないかな。

TAKA ケンジさんが打ち込みの技術を身につけすぎて、「これはドラム叩けんやろ」みたいになってたりしたもんな(笑)。

KRASH 手と足がもう1本ずつ必要なぐらい(笑)。

-- ギターに関してはどう?

TAKA ギターのリフはデモの時点でしっかり固まってて、ケンジさんのなかで揺るぎがない。ベースのラインは、ケンジさんのイメージを元にMISSILEが弾いてる。

MISSILE みんな、曲のやり取りをパソコンでやってるんですけど、僕はアナログ人間でパソコンを所有してないので、僕だけ後日、CD-Rで渡されるんですよ。だから、第一段階のスタートが遅い分、わりと曲が固まってから「ベースのラインはこういこうか」って言われるんですよ。僕はどこかからネタ探しをするよりも、自分の中でひらめいたフレーズを使いたいタイプなので、そこが今回はスピーディにはいかなかったですね。曲は昔と比べて凝ってるけどシンプルになってきてるから、それに対して自分はどうやるのがベストかなっていうせめぎあいがあって難しかった。でも、結果的には求められてるものができたのかな。

-- 曲作りの一番最後のピースを埋めるのはMISSILEってことなんだね。

TAKA 「こうじゃないああじゃない」ってケンジさんは最後まで良いのを作ろうとするんだけど、その最後がベースになるよな。たぶん、それはMISSILEを一番信頼してるからやと思うけどね。「MISSILEだったらやれるだろう」って。

-- 今回、日本語の曲が増えて、歌詞の雰囲気も変わったと思うのね。そういうケンジコの変化についてはどう思う?

TAKA 今回、レコーディングのラフミックスを聴いた時に、歌詞とボーカルがこのアルバムの売りやと思ったから、ケンジさんには「ボーカルをもっと出した方がいいじゃないですか?」とは言った。震災や安保についてケンジさんはこういうアプローチをしたかったんだなと思って、うれしかったというのはおかしいけど、格好良いなとは思ったな。

KRASH 俺は歌詞についてはぶっちゃけ気にしてないんだけど、今回日本語が増えてるのはうれしい。レイザーズとして日本語でやってる方が格好良いと思う。

TAKA ケンジさんの日本語は独特やしね。

MISSILE ケンジさんは俺がこれまで生きてきた中で一番長く一緒にバンドをやってる人なんですよ。昔から独特のぶっ飛んだセンスを持ってて、「いやいや、こんな歌詞はナシでしょ!」っていう内容でも、あの人がやるとアリになるというか。ファッションで例えると、「そんな格好して歩いてたら笑われんで!」みたいな服装でも、ケンジさんが着たら「大丈夫やん! いけてるやん!」っていう感じ。今までは英詞が中心になってたけど、今回は昔の「オイコラクソボケテメエ」って歌詞をアリにしてた感じが帰ってきたというか。しかも、あの頃とはまた違う形で。

-- 「THRASH'EM ALL!!」(1stアルバム)の頃とはまた違う、大人の尖り方をしてるよね。これまで政治的な歌詞なんて全くなかったし。では、作品が出来上がってみてどうですか?

TAKA 単純にいいのが出来たなと思った。普通に、「ヨシヨシ」って。

MISSILE 大志さんが言うように大人の尖り方というか、「狙いはこれだったんやな」って感じた。あと、尖りすぎて一般受けしなさそうだなと思いました(笑)。

-- 一般受けを狙いにいってた時期もありましたね!

3人 あっはっはっ!

-- あの時はむしろ無理をしてたから、これがあるべき姿なのかなって思うけどね。きっちゃんはどう?

KRASH いいのが出来たと思うけど、5年ぶりのレコーディングだったもんで個人的には力不足なところがあって、そういう意味では次の作品に活かしたいなって。作品自体はカラーが分かりやすいし、今までよりさらに研ぎ澄まされてると思う。

-- 俺は、激しい曲ばかりを集めてみたとか、メロディアスな曲を集めてみたっていうことじゃなく、今のレイザーズの全てを過不足なく詰め込んだ感じがして、その潔さがいいなと思ったよ。「THRASH'EM ALL!!」と同じように、何も狙ってない素のレイザーズを感じられた。

KRASH たしかにバランスだけ考えたら、もうちょっと明るい曲調の曲があった方がいいんかなぁとも作ってる途中に思ったりもしたけど、その辺ってどうなんだろう?

-- 全然気にならないよ。

KRASH じゃあ、よかった(笑)。

-- レイザーズってバランスとか考えたらダメなんじゃないの?

TAKA 結局、バランス取れてないしね! でも、それがレイザーズらしさだと思う。

-- 今までも、「こういう感じの曲を入れてバランスを取ろう」ってやってみても、そこまで器用じゃないから結局取れてなかったしね。だったら、今回みたいにやりたいものを詰め込んで、「はい、これでどうですか」っていう方がいいものになるんじゃないのかなって気がする。

TAKA 良い悪いっていう話じゃないけど、ラブリー(「THRASHING GOES LOVELY」2008年リリース)みたいに、音をこうしたいとか、アルバムとしてのコンセプトをどうっていうことを決めて向かっていくことが向いてないよね。

-- 今になって気づくという(笑)。

TAKA まあ、ああいう過程があって、今こういうアルバムができたことは面白いと思う。

-- しかも、作品の端々から今後の意気込みを感じるんだよね。こういう感じ方ってどう思う?

KRASH まさにその通りだと思う。来年は20周年やし、そこに向けて西川くんが曲を作っていくことになるはず。個人的には最近ドラムが楽しくて、また次の作品を早く作りたい。今回、プレイヤーとして力不足だったところを早くリベンジしたいな。

Member Interview Part.02 へ続く
Interview By 阿刀大志