THE INRUN PUBLICS / PUBLIC CORE / 発売日: 2012.12.05 / 品番: PZCA-60 / 価格: 2,300円(税込)

PUBLIC CORE

//曲目 1.リアルワールドコンプレックス / 2.踊るメディア / 3.プレイステーション / 4.ビューティフルドリーマー / 5.enn / 6.ロザリーロザリー / 7.ハイウェイガール / 8.JET LOVE DOLL / 9.未完了パラサイト / 10.ダンスオンリアシート / 11.お前の部屋 / 12.カルチャー / 13.心の解放

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THE INRUN PUBLICS コウキョウノカク TOUR

  • 1/5(sat)長野CLUB JUNK BOX
    "THE INRUNPUBLICS presents 新春フラストレーションGIG"
  • 1/6(sun)新潟 WOODY
  • 1/12(sat)初台 WALL
  • 1/13(sun)和歌山 GATE
  • 1/14(mon)心斎橋 火影
  • 1/20(sun)浜松 G-SIDE
  • 1/27(sun)福井 VELVET
  • 2/3(sun)仙台 BIRD LAND
  • 2/9(sat)四日市 VORTEX
  • 2/10(sun)名古屋 Tiny7
  • 2/11(mon)神戸 BLUEPORT
  • 2/16(sat)北浦和 KYARA
  • 2/17(sun)中野 MOON STEP
  • - Final -
    2/24(sun)横須賀かぼちゃ屋
    "THE INRUN PUBLICS presents 絶倫フラストレーションGIG vol.23"

trailer

cd-jkt

  • 01.リアルワールド
  • 02.踊るメディア
  • 03.プレイステーション
  • 04.ビューティフルドリーマー
  • 05.enn
  • 06.ロザリーロザリー
  • 07.ハイウェイガール
  • 08.JET LOVE DOLL
  • 09.未完了パラサイト
  • 10.ダンス
  • 11.お前
  • 12.カルチャー
  • 13.心の解放

THE INRUN PUBLICS REVIEW

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THE INRUN PUBLICSのインランって、淫乱だと思うでしょ? アルバム冒頭で歌ってる通り実際そうなんだろうけど、でもこの言葉自体にはもうひとつ意味がある。スキーのシャンプ台の、あの長ーい助走路のことをINRUNって言うのだ(本人達が知ってるかどうかはわかんないけど)。ギャグみたいな急坂を狂気の沙汰みたいなスピードで突っ込んで、足にくっ付けた2枚の細長い板だけでイカロスの時代から人類の夢であり続ける「空を飛びたい」ってヤツを叶えちゃう、アレ。誰もが「空なんて飛べるわけねーじゃん」ってわかってるのに、少しでも長く、少しでも遠くまで飛ぶために大の大人が必死になって「板をもう少し細く」とか「もう少し体を傾けて」とか考えて、しかもオリンピックの花形にまでなってるあのくだらない競技が大好きなんだけど、このTHE INRUN PUBLICSの音楽は、まさにアレみたいだなと思う。

「孤独 空腹 疎外感」で窒息しそうなリアルワールドから飛び出すために、ロックンロールをひたすら加速させる。「空なんて飛べねーよ、何も変わらねーよ」と諦め顔して淡々と日々を消費する奴らを横目に、その目を爛々とギラつかせながらバカみたいな猛スピードで突っ込む。で、挙げ句に実際に飛んじまう。それは一瞬かもしれないし、着地も失敗して地面に転がるかもしれない。でも、曲がクライマックスを迎えるその瞬間、確かにTHE INRUN PUBLICSは空を飛ぶ。誰よりも高く、誰よりも勢いよく、誰よりも堂々と、くだらない世界を飛び越える。私達がロックンロールなんていう腹の足しにもならないものを焦がれるほど求めるのは、こういうバンドがいるからだ。

一聴した瞬間に全身の血液が沸騰するような、衝動をエッジに変えて爆走するストレートなビートパンク/ガレージロックだが、実は虎視眈々と磨き抜かれたモノであることが楽曲の随所から伝わってくる。メロディにしてもリフにしてもリズムにしても、粗野なようでいてひとつひとつがめちゃくちゃ洗練されているし、マシンガンのようにガナり立てる歌も、直接的かつ大胆な物言いでありながらその裏に繊細な詩情を感じさせる、文学性の高い秀逸なリリックが並ぶ。タガが外れたような獰猛な衝動性を振り回しながらも、頭の芯の部分は常に覚醒し、鋭く冴えている。つまり、一番ヤバいタイプ。

結成9年目にして初のフルアルバム? アンダーグラウンド・シーンでカルト的な人気? いやいや、アルバムのクオリティとバイオグラフィが全然合ってないんですけど。歴史を引っくり返すなんて大層なことは言えないけど、でも間違いなく君の世界は引っくり返す。引っくり返ったその先に広がる景色を、観に行こう。

推し曲 M⑪「お前の部屋」
MUSICA編集長 有泉 智子

久々に脳天にビリビリ来た。

スピーカーから焦げ臭い匂いが漂ってくるような、抜き身のナイフが閃くようなヤバい空気がたまらない。ギリギリに切羽詰まったような緊張感、なにかに追い立てられるような焦燥感、すべてを巻き込んで燃え上がるような熱量の膨大さに圧倒されてしまう。

さらに、物凄い勢いで吐き出されるおびただしい歌詞が、いっそうスピードを加速する。譜割や言葉の選び方、リズムへの乗せ方が抜群に面白い。ひとつひとつニュアンスを持った言葉が、常軌を逸した勢いと情報量でぶちまけられると、表面的な意味とは別の風景が立ち上ってくる。言葉は平易だが、ルーティンな定型表現はひとつもない。すべてが生々しく響いてくる。よくあるオプティミスティックなロックンロール・アンセムではなく、息苦しくて息苦しくて耐え難いほどのかったるい日常と、そこからブレイクスルーしようとする意志のむやみやたらな爆発だ。エモーショナルだが感傷的ではなく、即物的だがイマジネイティヴで、べたついた共感も拒絶して乾いた叙情を漂わすセンスは、ある意味で日本語ロックがたどり着いたひとつの成果ではないかという気すらしている。

彼らの出身地である長野という土地については通り一遍以上の知識はないが、ここにギチギチに詰まっている焦燥感と、孤独と憎悪と狂気と苛立ちと暴力衝動と愛が織りなすカオスは、日本の均一的な都市化とスラム化という現象と無縁ではないだろう。「取れてしまった俺の心臓 取れてしまった俺の脳味噌 取れてしまった俺の心臓と胃袋と脳の中身 頭が痛い 中身空っぽ 頭を撃ってブッ殺してやる もうここにはいたくない」(「ビューティフルドリーマー」)という言葉のはらむ空恐ろしいほどの孤独と喪失と絶望の念は、日本という国をべったりと覆い尽くす影なのだろう。

今回のアルバムを聴くまで、彼らのことは知らなかったし、残念ながらまだライヴを見たこともないが、ライヴでのエネルギーが容易に想像できる音でもある。こういうバンドを聴いていると、ロックンロールの可能性というやつを大まじめに論じたくなってくる。速度、強度、そして「気合」が大切なのだ。ロックンロールの神様は、時々こんな放蕩息子を生み落とす。彼らのロックが若気の至りではなく、結成して9年というキャリアの過程で完成され研ぎ澄まされていったことがなにより素晴らしい。さらに10年先もこのテンションで加速し続けてくれれば、間違いなく歴史に残るバンドになるはず。

推し曲 M④「ビューティフル・ドリーマー」
フリーライター 小野島 大

インラン・パブリックス。まず名前がいいじゃないですか。公にインランなんですよ。人呼んで「淫乱公共地帯」ですって。そんでルックス確認。なんてIQの低そうな4人組でしょうか。はい、馬鹿はっけーん。すでに表情はニヤニヤ崩れかけております。

で、音を聴いてバチコーンと笑いが弾けます。一曲目“ノー・モア・ファッキン・リアル・ワールド!”の大合唱は、そのまま大爆笑と換言してもいい。エレキのド真ん中にちんぽこ突っ込むようなロックンロール。全身を麻痺させ、感電したケツに火がついたまま、曲がるカーブも曲がりきれず、ひたすらトップスピードで走っていく狂気のビートパンク。一発でわかります。こいつらマジで馬鹿。最高にイカれた馬鹿野郎どもでしょう。よーいドンで死ぬまで大暴走。ワハハそのまま地球の果てまで行ってこーい! ってな気分。

印象が変わったのは6曲目「ロザリーロザリー」でした。妙にロマンチックな歌詞から始まるこの曲の、孤独と悲しみが祈りとなって夜空に放たれていくような、マイナーコードのサビの切なさたるや! ふいに息苦しさを覚え、胸の奥の繊細なところがキュッとしてしまう。なに、この、札付きの不良少年が雨の日の公園で仔猫拾ってんの見かけちゃったみたいなドキドキ感。さらに後半「お前の部屋」で完全ノックアウトされました。なんて切なく狂おしいラブソングなのか。

イカれた馬鹿野郎であることと、せつないロマンチストであることは、この音楽において決して矛盾していません。純粋であるがゆえに傷つくのなら、誰にも触れられないスピードで走り続けるしかない。だるい世の中に窒息しそうだから、いっそ息を止めたまま踊り狂っていよう。それがインラン・パブリックスなのだと思います。コロシテシマエと悪態をつく叫びがアイ・ラブ・ユーに聴こえた瞬間、つまり最低の馬鹿どもが最高のロックスターにひっくり返った瞬間、私は恋に落ちていました。

恥ずかしいけど本当のことを書きます。ロックンロールって人を馬鹿みたいにときめかせてくれるもの。年甲斐もなく性別も超えて、人を簡単に恋に落とすもの。なぜならそれはあまりに純粋なラヴソングだから。退屈で窮屈で毎日死にそうだ、おまえなんか知らない寄るな触るなと尖ったカッティングを張り巡らせて、そのくせ彼らは震えながら「おまえ」の存在を求めて泣き叫んでいる。これは、「おまえ」さえ居てくれればこの世界はひっくり返ると信じる者にしか歌えない音楽です。「おまえ」以外はすべて敵に回してかまわないと覚悟した連中の音。もちろん、ここで言う「おまえ」とは「ロックンロール」だと換言してもいい。魂を売り渡たすってそういうことですよ。

己の魂を賭けた強烈なロマンと覚悟、代わりに引き受けた孤独とやるせなさ。それらを爆発させてロックンロールするインラン・パブリックス。久々にドキドキしながらヤられてしまいました。低能パンクスにして優れたロック詩人でもあるヴォーカリスト・清水には、モジモジしながらこう伝えたい。

ねぇ、地球の果てまで連れてって。

推し曲 M⑥「ロザリーロザリー」
フリーライター 石井恵梨子

痛烈にして、目の覚めるような一撃だ。

PIZZA OF DEATH RECORDSが送る新たなる刺客、THE INRUN PUBLICS(インラン パブリックス)の1stアルバム『PUBLIC CORE』――この熱病に浮かされたようなビート・パンク集には、例えばThe RoostersやTHE BACILLUS BRAINS (THE 日本脳炎)、THE MICHELLE GUN ELEPHANTなどこの国のロック史に名を刻んだ偉大な先人に通ずる苛烈さがあり、また、Rocket from the CryptやThe Bronxなど海外の尖った連中ともシンクロする狂気とダイナミズムを感じさせる。未曾有の危機に見舞われてなお平和ボケと思考停止状態に陥っている世の中を覚醒するに余りある、まさに劇薬としてのロックンロール。無性に魂が熱くなる。

このTHE INRUN PUBLICS、結成は2003年というから、既に10年近いキャリアの持ち主で、地元・長野のアンダーグラウンド・シーンにおいては一目置かれる存在となっている。これまでにKen YokoyamaやBBQ CHICKENSとライブ共演を果たし、その縁で2011年末の「PIZZA OF DEATH暴年会」@新宿LOFTへ出演。そういった経緯から晴れてPIZZA OF DEATHからデビュー作をリリースすることとなった。これまでのレーベル・カラーとは少々異なれど、腹の決まった4人の“PUNK”なアティテュードが、PIZZA OF DEATHの連中にある種のシンパシーを呼び起こしたことは想像に難くない。実際、M②「踊るメディア」の、狂犬のようなギター・ストロークとビートは衝動性に満ちているし、ライブではフロアに壮絶なデッドヒートを生むM③「プレイステーション」の荒ぶる4つ打ちも鮮烈。無上にスリリングかつ無心に踊り狂えるロックンロール・ナンバーM⑩「ダンスオンリアシート」などは、このバンドの真骨頂だろう(個人的にはM⑤「enn」の、螺旋を描いて絶頂へと上り詰めるカタルシスに昇天!)。もう一点特筆すべきは、批評性とロマンチシズムに溢れた、極めてロックンロールな詞世界。<嘘で固めた答えなんて俺はいらない / 孤独 空腹 疎外感 睨まれて睨まれて>(M①「リアルワールドコンプレックス」)、<見えないモノはいらない 触れられる不安が欲しい 現実全て握られて 脳味噌インチキマスターベーション 平気な顔してんな 近未来はグダグダ>(M⑧「JET LOVE DOLL」)といった具合に、ストリートと若者のリアルを描くコトバたちは文学的とも言えるほどで、多くのリスナーの共感を呼ぶに違いない。

いささか近寄りがたい強面ルックスの4人だが、騙されたと思ってその胸ぐらに飛び込んでみてほしい。くすぶった鬱憤と引き換えに、煮え滾るようなビートを注入してくれるはずだから。

推し曲 M⑤「enn」
フリーライター 奥村明裕