ボディーはその方向で行くコトにした。もう一つ、肝になるポイントがある。
 ヘッドだ。
 普通、ヘッドはユニークに、そして豪華にしたがるモノだ。オレは豪華さは全く求めていなかった。むしろ、逆だった。こだわったポイントは…とにかくデカいコト。デカくてシンプルなモノにしたかった。

 ある日、オレと Tan‐Shot は、二人で悩んでた。ESP の一室で、どんなヘッドにしようか、あーでもないこーでもないと話しちゃ、ため息をついてタバコを吸って…漫然と時間は過ぎて行った。
 そんな時、オレは思いついた。

 「デカくて大きいっていやぁ、『羽子板』じゃない?」

 オレ達二人は爆笑して興奮しながら、資料になりそうなものを探した。羽子板の写真を発見し、パソコンに取り込んだ。少し調整したりしつつ、パソコン上でボディーにくっ付けてみた。

 「イイじゃん!」

 あっさりと決まってしまった。資料にした羽子板が「助六」という名称だったために、オレ達は「助六ヘッド」と名付けた。そして、それがそのまま、オリジナル・ギターの呼び名そのものになっていった。
 ちなみに大きさについては、当初の予定ほどバカみたいに大きくはならなかった。理由は…良く分からない。いつの間にかそうなってて、オレも何の不思議も持たなかった。…名ばかりのこだわりだった様だ。

 Ken Band 最初のライブを間近に控えたある日、Tan‐Shot が助六のサンプルを持ってスタジオに現われた。そのサンプルは組まれてはあるが、まだ塗装前、生地の段階だった。弾き心地の確認と塗装の相談をしに来たのだった。
 オレは塗装前のギターをアンプに繋げて鳴らした。

 「すごいじゃん!いい音すんじゃん!」

 ビックリするほど良い音だった。オレは Tan‐Shot に言った。「このまま塗装しなくてもいいんじゃない?」、ギターは「塗装で音が変わる」と言われるほど、デリケートなものだ。もうこのままでいい、と思った。塗装してこの音が変わるのはイヤだ、と思った。…しかし Tan‐Shot は良い顔をしない。何故ならギターにとって塗装とは、ダメージから守る意味合いもある。ツアーなどで頻繁に使うなら、尚更塗装は必要だ。Tan‐Shot にとって「塗装無し」はあり得ないコトだった。
 オレも大人なので、百歩譲って、「一番音質に変化を及ぼさない様な塗装」にしてもらう様にお願いした。

 しばらくして、塗装が終わったとの連絡を受け、実物と対面するコトとなった。見てビックリ、見たことがないようなボディーの質感なのだ。明らかに普通の塗装と違う。ギターの塗装独特のツヤがなく、シブい。思わず「ヒーッ!」っと叫んで後ろに尻モチをついた程、シブい。
 どうやら、この塗装は「オイル・フィニッシュ」という塗装で、塗料を吹き付けるのではなく、オイル状の塗料の中にボディーを漬けて染み込ませる、というモノだった。
 アンプに繋ぎ音を確かめると、なるほど、塗装前とさほど変わらない(正直言ってそんなモン分かりゃしないのだが)。フレットには、オレの刺青から取った不動明王の梵字が、12フレットには陰陽のマークが刻印されていた。

 2004年3月、Ken Band の最初のライブに、オレはこいつを抱えて出て行った。別に「ソロになったから心機一転」とかそんな代物じゃない。たまたまタイミングが良かったのだ。練習で「Honey」も試したのだが、歌いながら弾くことに慣れてなかったオレには、こいつの方が心地良かったのだ。
 ギターを持ち変えるタイミングなんて、そんなモンだ。
 そしてこの助六1号機は、その塗装により、「オイル」と呼ぶようになっていった。

 オレは現在7本の助六を所有している。1号機は通称「オイル」。そのまんまで申し訳ない。
 2号機は「オイル」と同じスペックを持つが、オイル塗料に黒を混ぜて着色されたモノだ。
 現物を見た時、思った。「ウーン、これはメタルだね…見た目はメタルっちゅー感じだね。っちゅーワケで!」、っちゅーワケで「メタリカ」と命名された。練習では頻繁に使うしツアーにも持って周るのだが、ライブでは2007年8月の BBQ CHICKENS の渋谷 Quattro での「One Night BODO」でしか使用していない。
 余談ではあるが、練習にもオレはハード・ケースに入れて持っていく。ツアーの時などの管理用に、それぞれのハード・ケースにガムテが貼られ、そこにそれぞれの名称が書いてある。「メタリカ」のハード・ケースには「KEN Metallica」と貼ってあるのだが…これで外に出るのはなかなか恥ずかしい。まるでただの大ファンではないか。確かに Metallica は好きだが、コリンにスタジオで「何だそりゃ、お前のサイド・バンドの名前か?」と皮肉を言われた時は、子供に「悪魔」と名付けようとしてニュースにもなり、世の中の嘲笑を受けた親の気分が、少しだけ分かった…気がした。

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