「がんばれ がんばれ」
別のアコースティック・ショウの話なのだが、新宿
Loft の移転8周年記念ライブの一環で、またアコギを持ってステージに上がった。
この日の競演は sion さん。オレとは活動の範囲が随分違う人だが、オレは
sion さんの歌が大好きで、憧れの人だ。また憧れの人と同じステージに上がれるなんて、オレは本当に引きが強い…、麻雀では全然引いてこないのだが。
sion さんは、恐らくオレのコトなど良く知らないだろう。言われた時間より早く会場入りすると
sion さんとギタリストの松田文さんがリハーサルをしていた。そして音が止んだ一瞬の隙をついてオレはステージに飛び乗り、挨拶と自己紹介をした。活動の範囲は違うが、オレは後輩だ。リハが終わってから悠然と挨拶、なんてしたくなかった。そんなガキの暴走を、二人とも気持ちよく受け止めてくれた。
オレもリハをして、改めて sion さんの楽屋に挨拶に行った。それを終えてしばらくしてから、今度はギターを持って楽屋を再び訪れ、松田文さんにコードの教えを乞うた。
折角一緒に演るのだし、こちらは大ファンなのだから、許されるところまで入り込んで行きたい。図々しいが、こんなチャンスは滅多にない。
縁なのだ。
本番を向かえた。オレがステージに出て行くと、また何やら雰囲気がかたい。「お客さんもオレのアコギのライブで、観に来たはイイけど、どうすればいいのか分かんないんだろうなぁ。」…そんなコトを考えて、ライブを進めていった。中野のライブよりも、更に喋った(演奏3割、トーク7割)。持ち時間が1時間もあったから、タイトに曲順も決めていなかったオレも手持ち無沙汰になった。楽しかったが、相当ダラダラしたライブだったと思う。まぁオレ自身は楽しいポイントを見つけられたから良かったのだが…いろんな意味で困ったお客さんも多かったことだろう。
sion さんのライブが始まった。一曲目はオレも大好きな曲「午前3時の街角で」だ。思わずオレもステージ脇で、大声で歌った。
そしてライブを観ているうちに、さっきオレが演奏しながら感じていたコトは間違いだったコトに気付いた。平たい言葉で恐縮だが…何か「貫禄が違う」のだ。sion
さんはバンド形態でも演るが、アコースティック・ライブも随分演っている。アコースティック・ライブに対する日頃からの肝の据わり方が、オレなんかと全然違うのだ。
オレだってそれなりの想いがあってアコギでステージに上がるわけだから、「どっちがどう」というのはないと信じたいところだが、貫禄の違いは自分で贔屓目に見ても歴然としていた。
…「負けた気分」(決して敗北感ではない)、それと同時に「ワケの分からない嬉しさ」もこみ上げて来た。
アンコールで2曲一緒に、セッションさせてもらった。1曲目は、オレも時々口ずさむ「がんばれ、がんばれ」。sion
さんの曲の中で、一番好きな曲だ。オレは「がんばれ」という言葉が大嫌いだが、この曲の「がんばれ」はオレが忌み嫌う「がんばれ」とは、同じ音でも全く意味が違う。本来「がんばれ」という言葉が持っている愛情が、言葉となって空気を揺らす。
オレは2番を歌い、リードを弾いた。まさかこの曲を本人と一緒にプレイできるとは…こんな幸せ者、そうはいない。
もう1曲、「このままが」をプレイして、3人で一緒にステージを降りた。嬉しかった。単純に嬉しかった。オレは楽屋に戻って、誰も見ていないところで、嬌声をあげてソファーにダイブした。
打ち上げで、sion さんと松田文さんと、何時間かシッポリお話が出来た。いろんな話を聞かせてくれたし、オレもいろんなコトを話した。酔っ払っていい感じになった
sion さんは、帰り際にピザ・オブ・デスのみんなに向かって、「今日は健と会えて嬉しかったよ」と言って去っていった。
嬉しい。…ただ嬉しい。
オレはこの出会いを長いものにしたいと思っている。別にしょっちゅう一緒にライブを演るとか、そんなんじゃない。
お互い、生きている間、お互いのコトを考える瞬間があり、話したい時に話したいコトを話せれば、それだけでいい。それが5年に1度だって、10年に一度だっていい。
また、出会わせてもらった。
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