「Punk Rock の果てに於けるロマン」

 翌日、オレは中野の Moon Step というライブハウスにいた。Toy Dolls の来日直前に Duncan がアコースティック・ライブをやりたがって、CR Japan によって急遽組まれたライブに、オレもアコースティックで参加するためだ。
 ちなみにオレは一人で演奏するのだが、Duncan は何と Olga と二人で演るのだ。…夢の競演ではないか。

 会場入りすると、もう Duncan と Olga がリハーサルを始めている。しかし…何やら二人とも要領を得ず、難航している様子だ。随分いろんな曲を試している。「コレ、ホントに本番、大丈夫か?」という感じのまま、何となく彼らはリハを終えてしまった。

 オレもリハを終えて楽屋に戻ると、Olga が一生懸命ノートに歌詞を書いて、本番に備えている。オレも一緒に紙を広げ、歌詞カードを書いたり曲順を練ったりした。…おかしな光景だっただろう。大の大人が二人して宿題を課されているかの様な図だ。
 その合間にもオレと Olga はいろいろな話をした。シリアスな話をしたり、冗談を言って笑ったり。人からみたらおかしいだろうけど、オレにとっては、とても良い時間だった。

 本番が始まり、オレが一番手として出て行った。…何やら会場の雰囲気がかたい。いつもの自分のライブのアコースティック・コーナーとのあまりの雰囲気の違いに、多少戸惑う。しかし人前で演る以上、オロオロしてもいられない。いつも通りメチャメチャ話をしながら、ドンドン曲を進めていった。途中 Duncan を招きいれ、「Lucky」のアコギ・バージョンを披露した。初めての試みだったけど、上手く行った。後日談だが、Duncan はどうやらこれで緊張と二日酔いの呪縛から解き放たれたらしい…。多く話した分(演奏5割、トーク5割)、持ち時間を大幅にオーバーして、オレは出番を終えた。

 次は Duncan & Olga、オレはステージ脇に陣取った。しかし二人ともなかなか登場しない。随分時間をかけて登場したかと思えば、二人とも白いシャツに蝶ネクタイをしてるではないか。ズルい。オレは仲間に誘ってもらえなかった。
 肝心のプレイの方だが、さすがに二人ともリハーサルとは全然違う。特に Olga、プロだ。観客への接し方、ステージの進行の仕方、ギタープレイ、どれをとっても初挑戦とは思えない滑らかさだ。特にギタープレイは、アコギでエレキでのプレイをそのままやってる。ちゃんと音を鳴らし、かなりシュアなプレイだ。コレはなかなか出来るモンじゃない。あのリハからは想像も出来ない素晴らしいショウを進めていく。
 Toy Dolls、Snuff、そして Billy No Mates の曲を次々に演奏していく。お客さんも楽しんでいる様子だ。大喝采の中、二人は一旦セットを終えた。

 アンコールなのだが、オレも参加した。この時「白シャツと蝶ネクタイを用意しろって、前もって言ってくれてれば…」と激しく Duncan を恨めしく思った…。
 Snuff の「Whatever Happened To The Likely Lads」、Toy Dolls の「Glenda And The Test Tube Baby」、最後は Billy No Mates の「058」でしめた。
 Duncan、Olga とギターをかきならし、声を重ねる…こんな幸せ者、そうはいない。

 コレが一生のうちでたった一度の出来事でも、もう二度と起こらないコトだとしても、オレは構わない。この日一緒にプレイできた、それがオレの一生の財産だ。

 しかし、オレと Duncan はもう次なる作戦を練り始めているのだが…。

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