――『AIR JAM 2011』当日の緊張感/高揚感というものは、やはり経験したことのないものでした?

難波 正味の話、当日はめっちゃ緊張したよ。俺、震えたもん、人生で初めて! 今までライヴ前に震えたことなんてないよ。

横山 ははははは。

難波 俺からしたら11年ぶりの大ブランクなわけよ。身体鍛えたり、ヴォイトレ(ヴォイス・トレーニング)して自分なりに頑張ったんだけど、もう震えちゃって。でも健くんが冷静でいてくれたから、「イエー!」って出ていけたんだけどね。

横山 俺も、ステージ登る前はリラックスしてたはずなんだけど、バンドが揃って「STAY GOLD」のリフ弾き始めたら「あれ~!?」って(笑)。自分のギター・プレイで言ったら、あの数ヵ月の中でいちばんヒドかった。ホントに。

――それぐらい半端じゃない重圧だったと。でも、あのステージを通じて「届いた!」っていう確かな実感はあったと思うんですけど。(↗)

難波 あったね。ツイッターでさ、『AIR JAM』があるってことで死ぬの思いとどまったってメッセージも来たよ。それくらい落ち込んでたヤツいっぱいいるのよ。だから、ちょっとした生き甲斐になれればいいんだよね。

横山 そうね。ちょっとネガティヴな思考になってたところを、なんか生きててよかったぞって思ってくれれば。ちゃんとした行政やデモやることも必要だけれど、俺たちはこういった手法で、届く人たちに届けようってことで。

難波 ライヴだけをやるのがハイスタじゃなくて、このインタヴューもメッセージになるわけだし。だから、前の時代とは変わってるよね。

横山 曲は10年以上前の曲だし、演奏ヘタだし、ハイスタって全然大したことないのよ(笑)。でも、なんでこれができたかっていう気持ちとか、そういったことを汲んでもらえると思って俺らはやったから。

――なるほど。アンコールを終えた直後、難波さんは感極まってるように見えたんですが。

難波 そうだね。声がね、もうパワーが限界だったのよ。2日寝れない状態だったから。

横山 自分で歌うようになってわかったけど、歌うと自分に戻ってくるんだよね。

難波 そうそう!

横山 だから、すごい感情的になっちゃうの。

――以前、Ken Bandで号泣されたっておっしゃってましたよね。

横山 号泣した(笑)。あれはやっぱり歌ってるからで、その状況を通して自分に返ってきちゃって。


――自分自身に響いてしまうと。

難波 俺は泣かないって決めてたのよ、ホントは。でも、キュンキュンきちゃったんだよね。健くんのフレーズがヤバい、ツネちゃんの笑顔がヤバいってなって。(ファット)マイクが飛び出て来たり、笑顔で対応してたけど実はキュンキュンしまくって大変で。

横山 お客さんにとっても「えらいこっちゃ!」だったかもしれないけど、俺たち3人にとっても「えらいこっちゃ!」だったんだよね(笑)。

難波 軽~くやってるように見えるけど。

横山 でも、意外とツネはしっかりやってたよね。

難波 そう!(笑) 1曲目「STAY GOLD」はテンパってリズムが前に来なかったけど、後半もうドコドコドコドコ!って。

横山 タム回しとか、すごいハマっちゃったりしてて。

難波 健くんのコーラスもハンパなかったのよ。

横山 あっ、俺、コーラス出た!(笑)

難波 それは健くんが11年間やってきたことだから。そこは本当にパワーアップしてる。だから今回なんとか見せられたんだよね。

――DVD化にあたっては、ご自身でも何度か見直されて?

横山 うん、何度も。編集したものを送ってもらったりして。(↗)

難波 このDVDを出すって決まってたわけじゃなかったんだけど、なぜ出そうとしたかってところがポイントで。要するに、入れなかった人がいっぱいいたんだよ。ハイスタ見たくても見れなかった人がこんなにいると思わなかったから。

横山 やる前は、「5,000人しか応募なかったらどうする?」なんて言ってたんだけど、20万来ちゃったわけで。

難波 いや、ホントに5,000人かもしれなかったのよ。11年も経ってんだから。

横山 そう。で、応募を締め切った時点で20万だったから、その後もっと伸びたかもしれないしね。当時、ライヴなんてとてもじゃないけど行けないってキッズもいたりしたでしょ? 生活が変わっちゃったりして。そういう人たちにも見てもらって、元気になってもらいたいなって。


――そうですね。現在は、昨年の『AIR JAM』より何倍も困難かと思われる東北での『AIR JAM』の開催準備に取りかかっているわけですが。

横山 そう。今は場所決めをしてる最中で。着々と進んでるよ。

難波 どういったイベントが素晴らしいもので、どういったものにすればいいのかっていうのは、まだあんまりイメージ湧かなくて。ぶっちゃけまだなんにも決まってないけど、とにかくやる!

横山 そう!

難波 もう、やる! 届ける!ってことだけは決まってるから。

横山 決まってるのは、俺たちが「やる!」って決めたことだけだよね(笑)。

――この物語がひとまず完結するのはそこなので、ぜひ成し遂げて、またみんなを勇気づけるストーリーを届けてほしいと思います。(↗)

難波 それがあって始まってるからね。今はまだ何も答えられないけど、とにかく秋に東北で『AIR JAM』をやる。で、みんなの目を東北に向ける。そしてエネルギーを持ってくる。念を送るっていうか、それくらいはやりたいなあと思う。

――横浜での収益を持っていくっていうお話でしたけど、物販も売れまくったし、ぶっちゃけ相当あがりは良かったんじゃないですか?

横山 いや、全然っ!

難波 めっちゃ経費かかるからね。

――資金面での心配はないのかと思ってましたけど。

横山 チケットが前回7,800円でやったんだけど、これが1万円だったら、それこそもっと利益出たと思うよ。でも、来てもらいやすい値段でやりたかったし。だから、そんな黒字は出なかったんだけど。

――まだ越えるべき壁はたくさんあると。

横山 そう。「この収益をもって東北でやる!」って高らかに言ったけど、思ったほど利益出なかったから(苦笑)。いくらかは充てられると思うけど、開催費用の何分のイチにしかならないだろうね。なかなかシビアだけど、やるよね。

難波 うん! これからまたみんなでアイデアを出しあって、新しいものも取り入れて、じっくり作りますよ。ハイスタが動いたら、何万って人が動くでしょ? それによって「東北がんばれ!」ってムードもまた高まるだろうし。

――秋には震災から1年半という時間が経つし、少し遠くの出来事になってしまっている可能性もありますよね。


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横山 そうそう。ちょっと風化しはじめるとこもあると思うの。そこでまた目を向けてもらうのは、いいことだと思う。

難波 復興は長いから、「まだ何も終わってないんだぜ!」って。

横山 できればね、秋までに全部が収束してくれればいいよ。仮設に入ってる人がみんな自宅に戻って、原発が全部止まって、「ここ一年半大変だったぁ」ってことになればいいけど、そうはならないだろうから。

――なるほど。ちなみに、秋の東北以降のことって何か考えがあったりします?

横山 具体的には考えてないけど、俺個人的には、Hi-STANDARDってものは何かの節目でできればいいかなって。『AIR JAM』はもちろん、もしかしたら新しい音源できるかもしれないし。なんかの節目で、ライフワークとして死ぬまでやってけたらと思うよ。

難波 いいね。

横山 あと、この場ではっきり言っておくけど、俺は自分のソロにいちばんプライオリティを置いてる。どっちがどっちって言うんじゃないけど、敢えて言うなら、そう。やっぱり、いちばん自分の気持ちをアップデートできるところだから。ハイスタの方がもっと動きが大きくなるし、もっとスローペースでやっていいと思うし。(↗)

難波 きっと、ハイスタなりの感じでやってくんだろうね。どうなっていくのか想像もつかないんだけど、やるって決めたからにはホントに続けていこうって思ってるよ。上にはどんどんジャブを突き上げていって、みんながいい感じになれるように。

横山 そういう気持ちでやるからね。新しいお客さんから、30~40代のハイスタ聴いて育ったっていう世代から、みんなにハッピーになってもらいたいし、みんなに疑問を投げ掛ける存在でありたいし。今までのバンド像にはなかった存在でありたいし。だって、俺たちどのバンドみたいくなりたいっていうの、ないもんね?

難波 そう、ないのよ。

横山 だから、俺たちはこれから手探りでHi-STANDARDの未来を作っていくんだよ。

――再び“メイキング・ザ・ロード”していくと。

横山 誰がうまいこと言えっつった!?(笑)

難波 はははは。でも、ホントに俺たち乗り越えてきたし、現に今も乗り越えてるし、そういう“乗り越えたパワー”をみんなに受け取ってもらいたいんだよね。それで勇気を持ってもらいたいんだよ。やるしかないよ!